仕事関係者様各位には大変申し訳ないのですが


昨日は一切仕事をしておりません。


どうしても「孔雀」のことが気になってしまい一日中、孔雀のことを考えていたんですよね。

孔雀漬けの、孔雀一色の一日でした。


昔、ブログにも書きましたが


「孔雀のオスは、羽を広げたとき目の模様が130個以下だとメスから見向きもされない」


のですが、そのことを知ったときからときどき孔雀のことを考えるようになったのですが


今日、ふと、僕はある事実を見落としていたことに気づいたのです。



それは――目の模様が130個以下の孔雀のオスは、



羽を広げても、自分で見ることができない



ということなのです。



想像して欲しいのですが、

ここにヒナから孵った1匹の孔雀のオスがいます。

そして、たまたま落石があって、彼の羽は傷ついてしまった。

こうして彼の羽は130個以下になってしまうわけですが、


彼は、そのことを知らないのです。


つまり、


メスの孔雀が来たら、



「結婚してください!」



と必死に求愛するのですが、メスは自分を選ぶことは決してなく、



「え? なんでなんで!?」


と思いながら、メスの前で一生懸命羽を広げ続け、そして、一生メスから受け入れられず、死んでいくのです。



そのことを考えたら、この孔雀があまりに救われなさすぎて泣きそうになってきて



しかし、この世界というのはある種の完璧性を持っているはずなので



この孔雀が救えないということはあり得ないと思い



この孔雀を救う方法をずっと考えていたのですが、その結果、



「そもそも、この孔雀は自分の羽の目が130個以下であることに悩んでいるのだろうか」


という考えも生まれてきました。


これは、孔雀が人間に比べて頭が悪い、ということでは決してありません。


たとえばアリの個体は、人間からしたら想像もできないような自己犠牲の精神を発揮したりするわけですが、


それは、アリの目的は「種の保存」であり、個体の保存ではないからです。


つまり、アリは、自分という個体が死のうが、アリという種が存続していければいいわけであり、


すべての行動は「種の保存」に向けて行われているわけですが


孔雀も、もし「孔雀」という種を保存していくことが目的なのだとしたら、


不運にも羽を傷つけられてしまった130個以下の孔雀は遺伝子を残さず、見事な羽を作ることができた孔雀が子どもをたくさん産めば


それが種の保存という意味では正解になるのかもしれません。


ということは、


問題は、孔雀にあるのではなく、


この「130個以下の孔雀のオスに気持ちを持っていかれてしまう自分」にあるような気がしてきました。



どうして、僕はこれほどまでに、この孔雀のことを考えてしまったのでしょうか?



それはやはり人間だからなのでしょうか?


もちろんそれは理由の一つだと思いますが、でも、たとえば戦時中であれば、


「国」を保存するために、多くの人間が亡くなりましたし、それを受け入れてもいました。


その時代の人達にこの「孔雀」の話をしても、それほど感情移入しなかったかもしれません。



僕がこの孔雀が気になってしまう理由には「時代」というものもあると思います。



「種」はもちろんのこと自分の所属する「民族」が脅かされる危険性が極めて少なくなることで



現代は、人類史上、「個人」を最も強く意識している時代だと思います。


すべての幸せも不幸も「個人」によって完結する時代です。


ゆえに、羽が130個以下の、一生モテないままで終わる運命の「一匹」の孔雀にこれほどまでに感情移入してしまい


孔雀自身が悩んでいないのだとしても、その悩みに没頭してしまうのです。



だから、



孔雀を救うのではなく、自分自身を救うために――このことを考えざるを得ないのです。





「羽の目が130個以下のモテない孔雀が取るべき方法とは?」









メスの頭をブルブル振って揺らして「あ、160個くらいに見える!」ってする







エグザイルみたいにぐるぐる回る






他のオスに協力を持ちかけて後ろ側に立たせる。報酬としてピーナッツ的なものをあげる






孔雀は曇りの日しか羽を広げないので、あえてどりゃぶりの日に羽を広げて尾崎豊的な魅力をアピールする






「もう目は古い、これからは鳴き声の時代」と言って新しいジャンルを開拓する






「なぜ僕の目が少ないかって? それは君の美しさに目を奪われてしまったからさ」







思い切って残りの羽も全部むしり取り、他の孔雀に対して機動力で圧倒的に勝り、強引な感じでHする






※ 「ウケる日記」は毎週火曜日までに更新します。


水野敬也関連作品





電子書籍(iOS)