昨日、松屋で牛丼を食べていたら僕の隣に座ろうとしている人の動きが少し変わっていたので

「なんだろう?」

と思って見たら、目の見えないおじさんだったんです。

目の見えない人が街を歩いているのは見かけたことがありますが

隣の席に座ってご飯を食べたことがなかったので(こう言ったら不謹慎かもしれませんが)かなり興味をそそられました。


そのおじさんは席に着くと、店員さんを呼び、直接お金を渡して牛丼を注文しました。


それから箸を取ろうとしたので、僕が代わりに取ってあげようと思ったのですが


「いや、そんなことをしたら同情しているみたいでこの人がイラッとするかもしれないぞ……」


としばらく様子を観察することにしたのですが


僕の目の前でかなり手をフラフラさせていたので


「これは、困っていると判断して良いだろう!」


と思い、箸箱を開いて箸を渡しました。すると


「ありがとうございますー」


と愛きょうのある声で言うので


(失礼かなぁ)と思いながらも、好奇心を抑えることができなくなり


「あの、ちょっと質問があるのですが……」


と聞くことにしました。


まず僕が聞きたかったのは、
「目が見えないのにどうやって松屋の空いている席を見つけることができたのか」
ということでした。


目の見えない人が街を歩いているときは棒のようなものを使ってピシピシと周りを叩いているのを見かけますが、あの棒は足元を叩いているので、松屋の「席の位置」は分かっても、「席に人が座っているかどうか」は分からないはずなのです。


しかもお昼時だったので松屋はほぼ満席であり、


僕の隣くらいしか席は空いていなかったのです。



そこで、「どうやって空いている席を見つけられたのか」という質問をしたところ



おじさんはこう言ったのです。




「いやあ、これは申し訳ない話なんですけどね……
 座っている人の背中を押して歩くんですわ。あはは!」




それを聞いて思わず笑ってしまった僕は


「いやあ、僕はてってきり座頭市的な能力で見分けていると思ってしまいました」


するとおじさんも笑って


「それはさすがに無理」


と言っていました。


こうしておじさんにますます興味がわいてきた僕は



「でも、やっぱり人の背中を押したりしてしまうのは大変だと思うんですけど、それでも松屋を選ぶ理由っていうのはあるんですか? 松屋の牛丼がすごく好きだとかそういうことなんですか?」


するとおじさんはいいました。



「いえいえ、松屋っていうのはね、食券買わなくても良いって言ってくれる店が多いんですよ。他の店だと断られたりすることもありますからね。だから私は松屋なんです」






どんな種類のバリアフリーですか。





過去色々なバリアフリー聞いてきたけど、このパターン一度も聞いたことがありませんでした。





さて、ここで突然クイズですが、

目の見えない人が日常生活で一番困ることは何でしょう?








答えは






「郵便物」





だそうです。



郵便物はすべて文字で書かれていて、しかも公共料金や税金など重要な書類が送られてくることもあるわけです。


おじさんは信頼できる人に来てもらって郵便物を見てもらうと言っていましたが確かに大変ですね。
色々な郵便物が簡単で安い料金で点字にできるようになったら素晴らしいですね。


さらに


「お金はどうしてるんですか?」


と聞いたら、それは



「完璧に見分けられる」



のだそうです。

紙幣の角に○やLのような手触りで分かる印があるみたいです。

おじさんは


「何年か前に偽札が出回ったとき、目の見えない人が手触りで偽札だと見破ってニュースになってましたよ」


と教えてくれました。


こうして好奇心の赴くまま質問し続けたのですが


隣の席の人たちもこちらに顔を向け興味を持って聞いている人もいたので


いつのまにかおじさんの私塾的な雰囲気になっており



松屋 → 松下村塾



的な変貌を遂げておりました。




しかも、




こんなに学べて240円(牛めし並盛)ですからね。





松屋のCP(コストパフォーマンス)はマジ異常です。