山本周嗣
元リーマンブラザーズ証券株式トレーダー。現在は(株)文響社(株)ミズノオフィスの代表を務める。幼稚園の時最初のお漏らしを経験して以来、時間、場所を問わずいたるところでウ○コを拡散し続けている35歳。その潔い漏らしっぷりは有名で、時に「ウ○コマスター」「ブラウンの稲妻」などの異名で呼ばれることもある。最近漏らしたのは2011年、4月。
――今日はお忙しい中ありがとうございます。
「どうも」
――ところで早速ですが最近漏らされたときの話をお伺いしてもよろしいですか。
「いや、そんなたいしたことじゃないよ。漏らしたっていうよりどちらかというと『おねグソ』の方だから」
――おねグソ?
「うん。おねしょってあるでしょ。寝ているときにおしっこしちゃうっていう。あれの大きいバージョン」
――ええ!? そんなものが存在するんですか?
「あるある(笑)。だいたいいつも一緒の夢を見てなるんだけどね。すっごい我慢してて、やっとトイレに入れた~って安心してしちゃうんだけど」
――はい。
「『あ、やべ。これ夢だ』って気づいて起きるじゃない?するとそんなに大きくないのが2個か3個くらいかな?コロコロって出てきちゃったんだよね」
――な、なるほど。それでは山本さん、そろそろ例の「六本木ヒルズ」で漏らされた話して頂いてもよろしいですか?
「ああ、あれね。
当時僕はリーマンブラザーズ証券っていう会社で働いてたんだけど、仕事終わりに六本木ヒルズで、飲み会っていうか合コンみたいなことがあったんだよね」
――なるほど。
「それで開始1時間ぐらいしたときかなぁ。来ちゃったわけ」
――来た?何がですか?
「いやいや(笑)」
僕が「来た」って言ったら便意以外ないでしょう。
――これは失礼しました。
で、それからどうされたんですか?
「で、すぐにトイレに行ったんだけど使用中でね。しかも、そのときの便意は結構ヤバいやつで。一刻の猶予も許さない感じで。それで俺は女子の方に入ろうと思ったのよ」
――ええ!?
「いや、これは僕が前々から提唱してることなんだけども。『漏らすくらいなら女子の方に入れ』ってことなんだよね」
――でも、それって大丈夫なんですか? 犯罪とかにならないんですか?
「いや、詳しいことは分からないけどさ。何度も漏らしてきた人間から言わせてもらうとさ、ウ○コを漏らすのって人にすごい迷惑かけるのよ。だったら迷惑かける前に女子の方に入っちゃった方がいいってことなんだよ」
――で、女子の方に入ったんですか?
「いや、それがさ。それやったらマズいってことが分かったんだよ。だって今、合コンしてるわけだから。僕がトイレに入ってるところに女の子が来たら、恋なんて生まれようがないでしょう。それで女子トイレにも入れずにずっと待ってたんだけど、全然中に入ってる人が出てこないわけ」
――他のトイレには行かなかったんですか?
「うん、それも考えたんだけどね、六本木ヒルズの他のトイレってすごい遠い場所にあるんだよ。で、色々シュミレーションしたんだけど待つことにしたわけ。まあこれは一種の賭けだったよね。ただ自分は株式トレーダーとして日々秒単位の勝負してきたわけだから。この勝負もいけると思ったよね」
――で、どうなったんですか?
「待ってる時に、漏れちゃったんだよね」
――勝負に負けたわけですね。
「完敗だったね。でもさ、そのときの俺は『終わった』って感じじゃないわけ。むしろ『始まった』なんだよな」
――どういうことですか?
「うん。つまり、今もまだみんなは合コンしてるわけでしょ。だから会社の同僚がトイレに来るかもしれないわけで。僕がウ○コ漏らしたことバレたらやばいじゃないの」
――皆さんには言ってないわけですか? 自分がそういう人間であることを。
「言ってないよ。言えるか、ボケ。会社ではちゃんと社会人としてやってるわけだから。で、一刻も早くトイレに入りたいわけこっちとしては。色々処理しないといけないから。で、『神様!』って祈ってさ」
――祈るの遅くないですか?
「いや、僕も35年間生きてきて分かったんだけどさ、結局、人は漏らすんだよね。だから漏らすか漏らさないかが大事なんじゃない。漏らした後、どうするかが大事なんだ。……まあそんな僕の祈りが通じたみたいで、やっと扉が空いて中に入ったのよ。……あ、ここでみんなに言っておきたいのはさウ○コを実際に漏らしてしまった時はね、被害を最小限に抑えるために、技術が必要になってくるわけ」
――技術?
「そうそう。とくにやわらかいのが出た時は、歩くとき膝を曲げちゃだめ。ウ○コがズボンに付着するからね。ズボンを軽くつまんで、ロボットのような直立歩行をするのがコツだから」
――あ、ありがとうございます。
「それで、その歩行スタイルでトイレの中に入って、ズボンとパンツ脱いで。で、パンツは捨てることにしたんだけど、ズボンにも完全についちゃってるわけ。しかもそれが、めっちゃ臭いんだわ。やっばいくらいに臭いんだわ」
――ウ○コですからね。
「そうそう。でね、『もうこれは帰るしかない』と思って」
――え? 合コン中なのに?
「そりゃそうでしょう。ズボンにウ○コつけたまま合コン行けないでしょう。ていうか、合コンどころかどこにも行けないよ。だから家に帰ることにしたんだけど、どうやって家まで帰ろうかって悩んでさ。考えた挙句、そのとき着てたジャンパーを、こう、ファッション誌に載ってるみたいな感じで、お洒落に腰に巻くことにしたんだよね」
――なるほど。
まあ、世界広しと言えど俺くらいじゃないの? ウ○コ隠すためにジャンパー腰に巻いたのはさ。
――そうかもしれませんね。
まあ、確実に俺くらいだろうね。ウ○コ隠すためにジャンパー腰に巻いたのは
――ま、まあ、そうでしょうね。
いいかい?
俺は、ジャンパーを
腰に巻いたんだぜ
ウ○コを隠すためにね
――わ、分かりました。もう十分分かりましたから。
「分かってくれたらいいんだ。それで、ジャンパーでお尻を隠しながらけやき坂まで走ってさ。タクシー止めて。『タクシーの座席にウ○コつくなー』と思ったけど状況が状況だから、そこはもうタクシーに泣いてもらって。それでタクシーの中からメール打ってさ。『ルームメイトの水野がトラブルに巻き込まれて助けを必要としてるから帰ります』って」
――それ、僕じゃないですか。
「そうそう。もうそんときは必死だからさ。具体的な名前出した方が相手も信用するかなと思って。それでなんとか部屋について、ジーパンをトイレで洗ってたんだよね。そしたらちょうど君が帰ってきてさ」
――あ、そうでしたっけ?
「覚えてない?」
――覚えてないですね。
「俺は覚えてるよ。俺が『ウ○コ漏らしてまった~』って言ったら、君、『また?』って興味無さそうに言って自分の部屋に入って行ったんだよね。あのとき、俺的には結構ショックでさ。その合コン可愛い子結構いたわけなんだけど、ウ○コで台無しにしちゃったわけだからさ。慰めて欲しかった部分もあったわけ。あ、そういえばそのとき履いてたジーパンあるけど見る?」
――いや……まあ、一応お願いします。
「これなんだけど」
――なるほど。
「どう?」
――いや、「どう?」と言われましても……。
ただ……。
「ただ?」
――こう言ったらなんですけど、なんていうか、合コン行く格好にしては、あまりお洒落じゃないっていうか。
「……。」
――ウ○コ漏らそうが漏らすまいがあんまり関係なかったんじゃないかっていう……。
――え?
――ちょ、ちょっと山本さん!
――何してるんですか、山本さん!
「ウ○コだけど」
――だめですよ、こんなところでしたら!
「なんで?」
――なんで?って、ここ部屋の中じゃないですか!
「関係ねえだろ。赤ん坊なんてどこでもウ○コしてるじゃねえか」
――でも、あなた、もう大人でしょう!
「バカヤロウ!」
――――え?
「その『大人』って言葉がよぉ、人間の純粋な心を失わせていくんじゃねえのか!?」
――……。
「俺がリーマンブラザーズに勤めてた頃は、金なんてたくさんあった。どんな贅沢もできた。でも、そういう生活に慣れていくうちに、いつのまにか失っていったんだよ。赤ん坊みたいな純粋な心をな」
――山本さん……。
「ケイヤ、覚えときな。したい場所でするっていうのは、『やりたいことやる』ってことなんだぜ」
――や、山本さん!
山本さん―――
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※注 今回の記事における「山本周嗣」は水野の手によって若干の演出がされています。今回の記事も山本くんに「こんな感じで書きたいんだけど」とリクエストしたところ「いいね」と即答してくれ、部屋で写真を撮っているときも「もうすこしお尻そっちに向けた方がいい?」などと気遣ってくれたりするような温厚な人間なのでご安心ください。