$いまじなりぃ*ふぁーむ-cctl


_+*+_ (14)説教 _+*+_



はあっ! はあっ! はあっ! はあっ!

なんで、こんな、余計な、もんまで、プレゼントに、混じっ
て、るのかなー。

ふーひー……。

全速力で走ったもんだから、さっき食べたものを上げそうに
なる。
ぐえー……。

店は零時まで開けてるって言ってたから、まだまだ余裕で開
いてるだろう。
それより、このメッセを書いたやつが誰で、今どうしてるの
か。そっちの方がはるかに心配だ。

くそっ!
こんなめでたい日に、自殺予告のカードなんか入れるなっ!
ばかやろーっ!!!

血相を変えて店に飛び込んだら、店員さんたちがぎょっとし
て俺のところに飛んできた。
もうバイトの子は全員帰ったんだろう。
店にいるのはオトナばっかだった。

「お客さん、どうされましたか?」

ぜいぜいぜい……。
ちょっと、一息、つかせてくれー。

膝に両手を当てて、息が整うのを待つ。

「こんな……物騒な……メッセが……ケーキの箱に……入っ
て……たんで……誰が……書いたんか……気になって……」

「物騒……ですか?」

僕が手渡したカードを開いた年配の女性の方が、それを見て
頭を抱えた。

「唯菜ちゃんの、大ちょんぼっ!!」

他の店員さんが、どれどれって覗き込んではやれやれって感
じで首を振った。

「あーあ……」

「まずいよー」

「ばっかやろ」

最初にカードを見た女性の人が、俺に深々と頭を下げて謝罪
した。

「あの……心配かけさせちゃって、ごめんなさいね。あの子
も、悪気があってそんなの書いたわけじゃないんだけど、
ちょっとどつぼでねえ……。確かにこれだけ見たら、自殺し
ますっていう風にも見えちゃうよね?」

「はい! ちょっとしゃれになんねーよって……」

「うん。分かるわ。ちょっと待っててくれる? 本人を呼ん
で直接謝らせるから」

「え? まだいるんですか?」

女の人は、ふっと寂しそうな笑いを浮かべた。

「今日は、家に帰りたくないって、ずっと店にいるのよ」

「……何か、家であったんですか?」

「いえ、しっかりしたお宅よ。でも、今日は家族の気遣いが
どこまでも重たいんでしょ。一人にしといて欲しいって。そ
ういうことだと思う」

「うーん……」

事情が分かんないからなんとも言えないけど、さすがにこう
いう人騒がせはまずいだろ。
まあ、無事ならいいんだけどさ。
一言だけ、文句は言わせてもらおう。

「じゃあ、ちょっと呼んできます。少々お待ち下さいね」

俺がぶりぶり怒ってるわけじゃないってのが分かったのか、
他の店員さんも、ほっとした表情で持ち場に戻っていった。

俺が店の隅っこでスマホをいじっていたら、サンタ服を着た
小柄な女の子が、さっきの女性に連れられて店舗に出てきた。

とぼとぼ。
完全に意気消沈してる。
きついこと言ったらほんとに首吊りそうな感じだ。
まあ、無事ならいい。あんま、突っ込まんとこう。

ずっと俯いてた女の子が、やっと顔を上げて。
小さな声で謝った。

「ご、ごめん……なさい」

「鈴野(すずの)ーーーーっ!!! おまえーっ!!」

俺の怒鳴り声でぺたんと腰を抜かした鈴野が、俺の顔を見て
ぎょっとした。

「な、なんで……三村くんが?」

こんちくしょー!
さっきは穏便に済ませるつもりだったけど、知り合いなら容
赦はしねえ。

「ちょい、面貸せっ! 説教だっ! こんバカがあっ!!」


(三村 悟)





The Everlasting by Manic Street Preachers