《第十二話 きみのぷろふぁいる》

(3)



いいんちょが田丸さんの方を見た。

「たまちゃん、一応確認しとくね。呪いとか、その系統
のものじゃないと思うんだけど、どう思う?」

困ったような顔で田丸さんが答える。

「うー。たぶんそういう振られ方すんだろなーと思って。
ずっと黙ってたんだけどさ。わたしは霊能力者じゃない
から、そんなことは分かんないよ」

いいんちょの突っ込み。

「使えんのぉ」

「放っといてんか」

ぷいっと横を向いて膨れる田丸さん。

「ただね。これ、たぶんわたしたちだけじゃ解決できな
い。まだ、カギになる人物が現れてないと思う」

「誰?」

「さあ、それはわたしには分かんないよ。みゆのことだ
もん」

田丸さんが、わたしを見た。

「前におまけの恋占いしたでしょ?」

「うん」

「恋を示唆するカードが出てた。それもすっごい強い引
き。でも、その兆しはまだ何もないでしょ?」

「うん、確かにそう」

田丸さんが、カードを一枚出してわたしたちに見せる。

「さっき、ちょっと占ってみたの。そしたらやっぱりね」

「カップのナイト。ただし逆位置」

いいんちょが聞きただす。

「どういうこと?」

「その人は、まだ着いてない」

カードをぴんと弾いて。
田丸さんがわたしを見ながら言った。

「……みゆのところにね」

あずさがわたしをつついた。

「ねえ、みゆー。なんか心当たりないのー」

うーん……。

「男の子にはじぇんじぇん心当たりなし。クリーンその
もんですな」

べしっ!
あずさにどたまを叩かれる。

「えばるなっ!」

「ちぇー」

でも。

「男の子はともかく、このしっぽについては一つ引っか
かることがあった。それを思い出した」

いいんちょが確認。

「なに?」

「兄貴のカノジョさんが、これを見て、なんか見覚えが
あるって反応してたんだよね」

「よし! じゃあ、それをまず攻めようか」

黒板を見てたにしやんが、ばんと机を叩いた。

「それとさ、みゆ。あんた、一つだけオトコの気配を忘
れてるよ」

ええー?

「誰? 思いつかーん」

「最初のいたずらにあった、メールのカレシ」

あっ!

「これだけ、小細工しながらみゆにしつこく絡むのは、
みゆの気を引きたいから。さっきしょーこが言ったみた
いに、同性じゃなくて異性。オトコでしょ」

「う……」

「そいで、みゆは肝心なことを見落としてる」

「何を?」

「このメールのカレだけが、しゃべってんだよ。コトバ
を使ってる」

「!!!」

「みゆがこのしっぽをなんとかしたいと思うなら、そこ
は避けて通れないね。たぶん、だけど」

はあっ。

大きく息を吐く。
そして、みんなに頭を下げる。

「みんな、ありがと。わたし一人で抱えちゃうには重す
ぎて、みんなを巻き込んじゃった。ごめんね」

あずさに肩を抱かれる。
みんなも寄ってきて、肩を叩いてくれる。

「なーに言ってんのよ。トモダチでしょ」

「そうそう」

うん。
今のわたしは、その言葉がどっこまでもうれしい。
うれしくて、涙が出るよ。

ぐうううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

でも、その前に。
わたしの腹時計が豪快に鳴りましてん。

いいんちょが笑いながら言った。

「けっけっけ。時計を全部止めても、みゆの腹時計だけ
はどうにもなんなかったみたいね」

は、恥ずぃ……。

でも、わたしの腹時計と一緒に、時間は一気に進んで。
正午からは普通に動き出したみたい。

コロッケパンが売り切れちゃう!

わたしは、あわてて売店に走った。





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