ハリルホジッチはクロスはニアに上げろと指示をしていたそうだ。
チーム作りのステップとしては古典で至極真っ当な指示と思われる。

しかし、酒井宏樹は指示に従わないで、自己判断でプレーしていたことを試合後に語ったとネットにあったので、見出しに惹かれて読んだ。

酒井の発言が書かれているのは「低いグラウンダーのボールでGKとDFの間に上げろと言われていました。でも、それはシチュエーションによりますし、深く入ったら絶対にニアのコースは空いていない」ということで、そういうことならなるほどとは思った。

ただ、そうやって選手が自己判断を表に出せば出すほどチームに形はできてこないわけで、ハリルホジッチも可哀想なことだ。

ことに試合中に自己判断をしたこと自体よりも、それを記者に語る浅はかさにがっかりした。

前から書いているように酒井のクロスはユースからトップに上がったときと比してほとんど進歩が見られない。
自己判断云々を語る以前にクロスがゴールラインを(ぎりぎりとか惜しくもとかではなくて)あっさり割るシーンを減らすことを考えるべきだ。

で、それだけではなく、そこに続くのが武藤の発言。

「チームで言っていましたけど、完全に引いてくる相手に対して高さは有効になる。自分のところのDFは小さかったので、圭佑くんや宏樹と話していて『自分に合わせてくれれば、しっかり折り返したり、上から叩くことができるから』と試合前に話していたので、そのとおりのよいゴールにつながるシーンになってよかったと思います」

ということはチームとしてのコンビネーション作りを目指す監督の発言「クロスはニア(GKとDFの間に)に上げろ」は試合中の自己判断で無視されたのではなくて、試合前の時点で選手の多くから無視されていたことになるわけで、まあ、ハリルホジッチのチームが進歩しないのは監督だけの責任ではなさそうだ。

一番の問題はそれを記者たちに語る選手のメンタリティ。

選手がその場の判断で監督の指示に従わないとか、無視するとかはサッカーなら当たり前のことで、そうしたからといって責められる筋合いは何もないし、むしろ誉める監督もいるのがサッカーというものだ。

ただ、自分なら監督の指示に従わず自己判断でしましたとか言わないだろうし、まして、監督の指示と違うことをしようと中心選手と試合前から話していましたとか記者に語ることはありえない。
そういう行為が何を招くか、普通なら分かりそうなものだ。

一方で本田はテレビインタビューで自分のプレーについて、『「全然良くなかった。内容は反省することばかりだった」と、不満の表情を浮かべた。』そうだ。

書いたように、この本田が交代する時に「持てる力を出し切った」と誉めた解説者(レポーター)がいるわけで、代表の試合ではテレビのボリュームは消して見ろは今も昔も変わらない。

酒井や武藤はこういうレベルの低いマスコミに餌を撒くような発言をしていることを自覚するべきだ。

ヨーロッパのタブロイドペーパーだったら監督と選手の対立の図式を翌日からバンバン書きたてるだろう。
ヨーロッパでプレーしているのにこんなことペラペラ喋るんとはひどいものだ。

この試合だけではないが、ハリルホジッチはチーム作りのテーマが乏しく弱い相手に勝つことに汲々としていると感じていたわけだが、汲々としていたのは選手たちだったわけで、チーム作りのための指示を無視して上げた結果を何かとても良いことをしたかのように記者に語っているようでは、このチームの熟成は簡単には進まないだろう。

「アウェイに簡単なゲームなどない」と語った本田の発言もむなしく聞こえる。