押されっぱなしの試合。

TBSのアナウンサーと解説者は日本がポゼッションして攻め続けると想定していたようで、とんちんかんな発言の連発。
日本のサッカーマスコミ、ことに民放はひどいレベルだが、これはあまりにひどすぎる。


前半は絶対というピンチが2回ほどあったが神様が味方しているのかゴールにならずにハーフタイム。
こういうときはベンチにいると勝てるとかもと感じるのだが、関塚監督はどうだったのだろうね。イラン戦もそうだったが、強かろうが弱かろうがこういうツキがないと大会では勝てないもので、自分はこういうときは神様がついているねと笑ってみていることにしている。


後半に入ってUAEの運動量ががたっと落ちる。しかし、日本が良くなったというわけでもなく、たまにカウンターが出来るようになった程度。


74分、この試合で日本初めてのCKの流れから先制。
何ともラッキーな話だが、水沼の逆サイドへのクロス、実藤の落ち着いたトラップからの狙い澄ましたシュートは見事だった。こういう決定力が今までの日本にはなかったのだから、ここはおおいに褒め称えて良い。


まあ、相変わらずにミドルシュートをふかすようなことがこの試合でもやまむらに2回だから、どこまで良くなったかと言われればわからないわけだが、一昔前ならため息で終わっていたシーンで決める選手が出てきたことはめでたい。


79分、UAEが2枚交代。
85分、さっき替えた7番を交代。怪我のようだ。選手も可哀想だが、これは監督も可哀想。


準決勝と感じることは変わらない。

UAEの選手の方が数段巧い。イランの選手たち以上に彼らの巧さが目立つ。


27番は抜群。いずれアジア最優秀選手になると思うのだがどうだろう。
10番も巧い。8番、9番と多士済々。これらの選手が逆とり、裏とり、いなしができるから日本のプレッシングが馬鹿に見えてくる。
そのプレッシングをもっともっとと叫び続ける解説者は日本サッカーの象徴に思える。準決勝から中一日で疲れが残っているからと語るのだが、全くもって話にならない。サッカーの本質を分かっていないのだろう。

UAEはしばしば大きなキックモーションでためを作る選手がバックラインにもふたりいて、プレスの逆とりをすることができる。こういうのを良いサッカー選手、良いサッカーというのだと理解している。

もっとプレスをと語るひととの溝はあまりに大きくてため息が出る。
スピードと運動量で解決するのではまるで陸上選手だが、解説者はそうしろと叫び続けるからサッカー界はそうなるのだろう。


戦えて当たり前、走れて当たり前、蹴って止めるも当たり前、その先に進まないと思うのだがトップレベルをいつまで運動量と組織に押し込めるつもりなんだろうね。


左サイドバックのひがは明らかに劣る。解説はひがが裏を取られたシーンを見たことがないと発言したが、どこを見ているとそう言えるのか理解不能。
日本がポゼッションして攻め続けるだろうと思っていた前半の発言といい、何かの思い込みと勘違いで解説をしているとしか思えない。日本びいきの解説でも全く良いのだが、見る目が曇っていては何もならない。
ひがのスピード不足、読み不足、つまりはバックとしての対応能力の不足は明かでこのサイドばかりが食い破られているのがわからないのだろうか。普通に誰でも分かると思うのだが…


準決勝でも感じたが、日本の選手はパスが下手。
育成の段階で読みという概念が入っていないのではと感じる。読まれているパスはほとんど通らないから、何か他のことをしないとならないのだが、そこを感じていないように見える。読まれていても通るパスや、読まれていても出した方が良いパスもある、が、それはそれ。そういうこともまた分かっているとは思えないプレーが続く。


UAEは日本相手ならば勝てると思ってポゼッションしてきた。ただ、それだけの話と思える。あるいは日本と同じようにオーバーエイジを使っていないようだから、それなりの志があるのか。日本のカウンターに対する策はバックラインを下げることでできている。

UAEはマイボールになったところでストッパー2枚を大きく下げてラインキープする。日本がプレスをかけるためにはトップが長く走らなければならない。
それでもプレッシングに来ればロングを蹴る。そのロングがトップに収まるか、セカンドを拾われてしまうというのが、この前の試合との違いと見るのだが、解説者はいけいけどんどんプレスをかけろと叫び続ける。
しかし、トップにボールが収まって攻撃の起点を作られて攻め込まれるからハーフは70mのアップダウンを強いられているのだが、それでもプレスにいけと言うのであれば、おまえがグラウンドでやってみろと言いたい。
相手のロングを跳ね返すか、セカンドを拾うか、そうでなければ高い位置からのプレッシングは無意味になることぐらい戦術の初歩の初歩だろうに呆れるしかない。


攻撃は丸読まれ、守備も丸読まれ、勝てたのはついていたからだが、その敢闘精神は褒められる。そこがないとサッカーは始まらないから。しかし、解説者の言い分が通るとすれば、何もかも運動量任せでそこからの進歩は何もない。


勝てたことは偉大なことだ。
が、この戦いから何かを学ぶのか、日本サッカーを代表する解説がこの調子ではたぶん誰も何も学ばないのだろうと思うので、少々暗澹とした気分にはさせられた。


戦えること、走り続けることは当たり前。きちんと止めて蹴れるのも当然。しかし、サッカー選手であるからには個々の勝負でも試合の流れでも先読みができて、裏をとれるようでないと一人前とは言えない。

これが日本の若き代表だとすると数年経ってもA代表の持ち味は組織と運動量ということになるわけで、それは悪い話とは思わないが、良い話とも思えない。

そのなかでは、ながいのように抜けた個が出てきたり、決定力があったりということは大いに評価できる素晴らしいできごともあるのだが…


まあ、もっとも、自分が教えているチームなんかでも放っておくと、こういうわけのわからん試合をこの前やっていたから、批判ばかりしていて良いわけはないのだけれどね。