開始6分でFKのこぼれ球からあっさりとチェルシーが先制。


WBAは今年プレミアに昇格してきたチーム。開幕戦でチェルシー相手は辛い。
2008年の開幕戦ではアーセナルに大敗。その年に降格して1年での復帰のようだ。
2008年の時とは監督が違うはずだが、やっているサッカーは、曖昧な記憶をたどると、そのときと似ているような感じはある。スペイン代表風のショートパスをつなぐサッカー。

アーセナル相手に大敗したが、その記憶がないのだろうかチェルシー相手にも正々堂々と「良いサッカー」で戦うようだ。


チェルシーはトップにドログバ、中盤にエシエン、ミケル、ランパートと並んで、マルダ、アネルカが両サイドという感じで、4バックコール、テリー、アレックス、フェレイラ。

4バックの両サイドはこの相手なので非常に高い位置に上がり、中盤から前は極めて流動的にポジションチェンジをするので、ときに2トップ、3トップに見えるような戦い方。

それにしてもこの中盤の構成では力強さはあっても創造性は感じない。


前半終了間際のフリーキックでドログバが直接ゴールで2-0。WBAは壁の作り方がおかしい。簡単にシュートが抜けてきてしまう。


試合を左右するのはサッカーの中身よりもそういうディテールであることを選手に理解させるべきなのが監督だと思うのだが、この監督はどうよという感じ。


後半立ち上がりキックオフからWBAが突っかけて、速いパス回しをしようとする意図を見せるのだが、チェルシーの守備は厚みがあって崩れない。

54分にCKからドログバのゴールで3-0。このときにこぼれ球に反応したドログバの前にWBAの選手が3人とGK、チェルシーの選手がドログバともうふたりで3人。つまり、数的同数な訳で、これでは失点は仕方がない。

59分にパウロ・フェレイラとイバノビッチが交代。こういうときは交代枠は使い切るのがプロチームの監督としての定石。

62分、きれいなつなぎからチェルシーが4点目。パスパスパスパス、シュート。こういうゴールをWBAも狙っているのだろうにね。


ショートパスをつないで、それで良いサッカーをやっていると思っているチームの監督や選手はバルサやスペイン代表を褒めて、ああいうサッカーをやりたいという。

しかし、少しずれればそれはアーセナルになって、良いサッカーをやるのだけれど勝てないチームの代名詞になってしまう。

そして、そのことを尋ねると途端に言葉の歯切れは悪くなる。いや、いちはしにしてもアーセナルには勝って欲しいのだけれどね。

で、しかし、アーセナルだって世界のトップチームで引き合いに出すのがおこがましい話なのは言うまでもない。


今日のWBAはそういう意味で、バルサやスペインサッカーを目指しているひとたちにとって引き合いに出せる例になのではないだろうか。
つまり、選手補強が不十分なチームがバルサやスペインのサッカーを目指せば、たどり着くのはWBAなわけだ。


2008年にWBAはプレミアから降格したが、そのサッカーの内容が良かったのでサポーターはスタンディングオベーションをしたらしい。まあ、サポーターが許すのであれば、それはそれでいい。

自分は、良いサッカーと言うのであればその中には勝つということも含まれていなければならないと考えを持っているので、まあ、こういう試合を見ているとウエストブロムに住んでいなくて良かったとしか思わない。


こういうサッカーをやって負けてしまって降格したとして選手に何が残るのだろう?

幾人かの選手は降格したときにはプレミアの別のチームに引き抜かれたが、そうでない選手はチームとともに降格だ。当然、年俸は大きく下がってしまう。プレミアの下位レベルでは選手はチームを選べないから可哀想な話だ。

そして、2008年のときの監督はセルティックに引き抜かれた。
つまりは監督は良いサッカーを指導しているということでどこかに引き抜かれてステップアップできるわけだが、選手の大半はそうならない。選手はそれでも監督の指示に従って負け続けたことになる。

なんか、不公平な話だと思うのはいちはしだけだろうか?


良いサッカーを標榜するのであれば、勝たなければ意味がない。

もちろん、良いサッカーという言葉を避けて、つなぐサッカーとかクリーンなサッカーとかなんだか誤魔化している人たちも同じ。
負けても良いような台詞をこういう人たちが言うのはバルセロナのクライフの影響だろう。
しかし、そのクライフはチャンピオンチームを作った。
そこを勘違いしている輩が子供たちを指導しているのは残念なことだ。


89分きれいなつなぎからマルダがゴールして6-0。


新聞だか雑誌だかに書いてあったが、名古屋の監督ストイコビッチはこれまでは名古屋で教えを受けたアーセナルのベンゲルサッカーとユーゴ代表で教えを受けたオシムサッカーを手本にしていたそうだ。
それが去年からは、アンチェロッティのところに勉強に行ってチェルシーのサッカーを手本にしているのだそうだ。
まあ、ケネディを軸にしてのサッカーを見ているとドログバが軸のチェルシーとだぶる部分は確かに少しある。

で、現実に名古屋は今の時点で首位。このまま勝ちきれるかどうかといえば難しいかもしれないが、サッカーではそういうことが大事なのだと考える。

ストイコビッチはたいしたものだ。何故、そう感じるかと言えば、彼が勝者のメンタリティを持っていることがわかるからなわけだ。

指導者というものはそうでなければならない。

サポーターが納得しているらしいから、余計なお世話なわけだが、WBAが良いサッカー、つなぐサッカーをすれば負けてもいいというチームの代名詞にならないことを祈るだけだ。