今日のお仕事済ませてから、ぼちぼち読み始めまして

とっても面白かったもんだから

夕方まで一気に読み終えましたー。この本です。



日本の身体/新潮社
¥1,620
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ウンコの本から始まって、ここ数日は続けて

図書館で無作為に借りてきた、こころやからだに関する本を

読んでおりまして、

コレが不思議なことに、まったく違う著者が書いてる書物であっても

根っこに通じるものが同じなんですよねえ。



で、この本の題名は「にほんのしんたい」と読みます。

日本人の身体、という意味合いとは、ちと異なります。



内田樹さんがインタビュアーとなり、

対談形式で書かれておりますが、

そのお相手として選ばれているのは

茶道家、能楽師、文楽人形遣い、合気道家、女流義太夫、

尺八奏者、雅楽演奏家、元力士などの

日本古来よりの武道や芸能を極めた方々のほかにも

漫画家や治療者、マタギ、スポーツ学者といった

それ以外の方面で活躍されてる人物など

実に広範囲に亘っています。




「身体を動かす」=「身体運用」と捉え、

あらゆる武道、芸能、職業にはそれに適した身体の動きがあり

それを突き詰めていくことで自ずと、古より生き続けている

日本の自然風土にもっとも「同化」した、無理のない美しい

姿勢と呼吸、それに伴う筋肉の動作が完成する、と

一連の対談を通じて、そのような結論が導かれています。





茶道家の千宗屋さんとの対談では



「ホスピタリティの最終的な目標は、自分をもてなすこと。

 現代人は自分を愛するとか、自分を大切に扱うことを知らない。

 

 一番基本的なところにまず、自身の身体感覚があって

 自分の内側に入り込み、自分の身体は自分にとって

 いちばん気持ちのいい姿勢で居るか?

 いちばん食べたいモノを食べているか?

 と、チェックするのは大切なことです。


 自分の身体感覚のわからない人間が、

 どうして、目の前の人の餓えや乾きを理解できるでしょう。」



との言葉が、印象に残っています。



能楽師の安田登さんとの会話の中には



「人間には、からだの奥から響いてくるものを出すチカラもあるし、

 感じ取るチカラもあるんだけれど、

 生命力が弱ってる人たちというのは、身体がわーっと震える、

 振動する、あの感覚を経験したことがない、と思うんです。


 世界のあらゆるものが持っている固有の振動数と共振、共鳴していく

 ことで、自分が単独に存在するのではなく、実は無数のネットワークの

 なかのひとつである、と感じられる。

 誰かとつながってる、何かとつながってる、という実感が持てるから

 こそ、生きてゆける。

 時にはもっと、根元的なもの、宇宙と繋がっているというような

 感覚が訪れる。そういう意味で能は非常にプリミティブな

 命のチカラを高める方法だと思うんです。」




と、能楽の根元にあるものを、我らに語って下さってる場面もあります。




私が少なからず興味を持つ「文楽」についても

人形遣いの方のお話で、あの人形たちを操るために必要な

膨大な情報量をどのように自分が捌いているか、

そして、一体の人形を操る3人の人間たちが同時に

自分でもなく相手でもなく、「人形の身体」の共感することで

三位一体となり、人形が生き生きとした動きを得られる、ということ。




文楽の演者の人たちに限らず、日本の芸能は能でも歌舞伎でも

演出や指揮者に当たる人がおられません。

しかも、いつのまにか始まっている。


リハーサルがないのですねえ。

舞台稽古、何度やっても無駄だから、だそうです。

ただ段取りのお稽古でしかない。


毎日毎日、舞台の上で起こるコトは違う。

段取りした舞台はつまらない。

ぶっつけ本番、大賛成。

おおまかな動きが分かっていれば、あとは相手と対すればわかる。

それが芝居や、と。





ああーー。これも言うなれば「セッション」なのでしょうねー。



女流義太夫の方とのお話では、三味線について。



「武道をやっている者は、太刀や杖などを道具として扱ってはいけない、

 自分を演奏者とみなして、それらは楽器のようなつもりで

 扱いなさい、と言われます。

 自分の身体の一部、というよりも

 太刀なら太刀、杖なら杖で固有の生理、それ自体が

 <この角度、この速度で動きたい>動線があるのだから、

 それを妨げないように身体を動かすこと。」


の、内田さんの言葉に対しては


「そのとおりだと思います。撥先に目をやらずとも見える。

 どんな風に糸にあたっているか、正面を向いた状態で

 見えているように把握しなくていなければダメだ、と。


 楽器との一体感というのは、それは生き物ではないのだけれど

 そこに血が通ってるような、というか。

 頻繁に使う三味線のほうが、気が入っているというか、

 よく鳴るという感じがします。

 しばらく置いておくと、いい楽器であってもふてくされるようで

 ナンだかこう、鳴らないんです。」



と、ギターについて以前、まさやんが話していたのと

同じだなーと思って読みました。






そのほかにも、尺八奏者の方が励行されてる「密息」という

腹式呼吸の詳しい解説や

力士の方がやっておられる「腰割り」の姿勢の効用など

日常生活にも簡単に取り入れられる知恵も、あちこちに網羅してあって

実際にやってみて簡単だし、参考になることが満載です!







内田樹さんの本も、今までは難しそうでなかなか手が出なかったけど

これを機会に、夏休み中に何冊かトライしてみましょう。

学べる部分がたくさんありますよーー!