森の声

午前中からしとしとと、そぼ降る雨が少し涼しげな一日。


お仕事オフでしたので、図書館でながらく予約待ちだった

この本、一気読みでございます。


羊と鋼の森/文藝春秋
¥1,620
Amazon.co.jp


本年の本屋大賞を受賞したこちらの作品を

予約待ちのあいだ、著者である宮下奈都さんの著作を

色々と、ランダムに選んで読んでおりましたが

どれをとっても、非常に惹きつけられる文章を書かれる作家さんだなーと

引き続き、今もあれこれ楽しみながら読ませてもらってます。



本屋大賞は、第一回目の受賞作品が

小川洋子さんの「博士の愛した数式」ですが、

あの当時、たまたま雑誌の裏表紙に

「まったく新しい文学賞」と、紹介されていたのを見て

その頃はまったく、存じ上げなかったこの作家さんの受賞作品を

早速読んでみました。



独特の静謐で、気品があって、温かみもあって

それでいてゾクッとするほどに冷めた視点と、滑らかな硬度を

併せ持った文体に、どんどんと引き込まれて

あっという間にこの作家さんの大ファンになっていました。


それまでは、「苦手」というマイナスイメージしか抱けなかった

数学、という学問がこの作品を読むことで

今までとは違った親しみでもって、捉えられるようになった

女性たちは、かなりの数に及ぶことでしょう。




「本」というものが担っている、大きな役割。

今回の受賞作品である「羊と鋼の森」においても

それは十分に、発揮されておりました。


世の中にあまり知られていない「調律師」という職業に

スポットを当てた、この物語では

「ピアノ」本体の成り立ちについても、

実にわかりやすく紹介されている以上に

それらを更に印象的に、読み手の心にインパクトとして残るような

表現を用いて、文学的に表わしてくれています。



ピアノは、木で作られています。

そして、その木はどこか遠くに広がっている

深くて大きい森の中で

長い長い時間をかけて、太陽と雨と風、肥沃な大地の

すべての恩恵を受け、すくすくと育まれてきたはずなのです。



そういえば、この前読んだ「職人」という本にも書かれてました。

楽器職人さんの、こういった言葉が。


「名器と呼ばれるヴァイオリンは、そのもととなるカエデの木が

いったい、どんな森で育まれたのか。

そこまで思いをめぐらしてみないといけない。」





あらゆる楽器の、その多くが

豊かな山や森の木から、その妙なる調べを奏でる「命」を

いただいてくるのだなあ、と。



優れた演奏者とは、その遥かなる大自然から分けてもらった

命の呼び声を、人間の手であらたに生みだした造形物によって

更に美しく、崇高に蘇らせる事の出来る人々なのでしょうね。



そして、その楽器がもっともっと高らかに清らかに

演奏者の手を借りて、誰も知らなかった「歌声」を奏でられるように

お手伝いしてあげるのが、調律師というお仕事であり、

それはピアノにとっても、演奏者にとっても、

何より音楽を聴いている多くの人たちの

心を震わせ、共鳴させ、感動せしめる

大切なお役目なのだなあーーって

このたびオバサンは、この本を読んで

しみじみと、感慨を深くしたのでありました。






楽器にまつわるお話を読むと

あらためて、音楽と人間はこんなにも近くて深くて

離れがたいもんなんだ、とあらためて気づかされます。

まだまだ、他にもたくさん

いろいろな楽器の物語、読んでみたいですわっニコニコ

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