インチキ療法対策①: 記事紹介“画期的ながん治療”の罠(2) | がん治療の虚実

インチキ療法対策①: 記事紹介“画期的ながん治療”の罠(2)

さる2017年4月1日、都内某所でがん治療医、医療ライター、メディア関係者、がん患者会関係の有志が集まって、「インチキ療法対策会議」なる秘密結社会議があった。
がん治療においてほとんど効果のなかった従来の免疫療法とは一線を画す新薬、免疫チェックポイント薬(オプチーボやキートルーダなど)が話題となっているのは多くの方がご存じだろう。

はっきり言って今までの免疫療法はほとんど詐欺だと思っていたが、最近この免疫チェックポイント薬の名称の混同を狙って、巧みにがん患者さんをだまそうとする免疫療法クリニック群が大いに宣伝を打って、集客しようとしている。

その秘密結社での議論を紹介したいと思っていたところ、非常に参考となる記事が出たので紹介する。

 

“画期的ながん治療”の罠(2)~エビデンス・ベースト・メディアのすすめ
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170407-OYTET50015/?catname=column\_katsumata-noriyuki

----------以下一部引用----------
“がん治療最前線、どんながん細胞をも認識し狙い撃ちする「ナチュラルキラー(NK)細胞」”とうたった、がん免疫細胞療法セミナー開催の広告が、今年になり、大手新聞の各紙に掲載されました。

大手メディアに、たとえ広告とはいえ、このように“がん治療最前線”などと掲載されると、信じてしまうのではないでしょうか。

ましてや、実際にがんになっている患者さんや、ご家族にとっては、 藁わら にもすがる思いで、このセミナーを受けてみたいと思うのが当然のことと思います。

このように、保険治療外で自由診療として、がんにあたかも効果があるようなことをうたい、高額な免疫細胞療法を提供するクリニックがここ数年で相当に増えています。

がんの患者さんは、訴訟リスクが少ないとみられているせいか、最近では、一部の美容外科クリニックも、こうした、がんの免疫細胞療法に手を出しています。

進行がん患者を対象にしたビジネスに

「効果がないことが前もってわかっていたら、もっとやることがあった。子供や孫に少しでもお金を残しておくべきだった。孫ともっと遊びに行けばよかった」

こう語るのは、全財産をなげうって、700万円かけて、免疫細胞療法を受けた60代の患者さんです。

標準治療が終了して、主治医から緩和ケアを勧められたのですが、どうしてもあきらめきれないと、半年間、保険外の自費診療で、免疫細胞療法を受けたのですが、結局効果はありませんでした。

このような免疫細胞療法を受けようとする患者さんは、ほとんどが進行がん患者さんです。

患者さんは最後の望みをかけて、免疫細胞療法を受けるのですが、実際には効果がないばかりか、患者さんにとって大切な時間やお金も奪ってしまいます。

免疫細胞療法をやっている会社は上場企業となり、ビジネスモデルとして成功しているケースも多く、その資金力をいかして、さまざまなメディアで大規模な宣伝広告をしているのです。

藁にもすがる思いの弱い立場のがん患者さんの不安心理を利用したこのようなビジネスというべき行為は許されることなのでしょうか?
〜〜中略〜〜


ある免疫細胞療法のクリニックでは、「数千例の実績」があるなどと宣伝しているのですが、きちんとした臨床試験をやれば、数千例の実績は必要なく、数百例でも承認され、保険適用となります。

逆に言うと、「数千例の実績」があるのに、承認されていないということは、その「数千例の実績」というのは、誰のための実績でしょうか? 数千例をもってしても明らかな実績を示せず、保険承認されないような治療は、患者さんを無駄に危険にさらしている可能性がある、とも言えると思います。
----------引用終わり----------

 

簡単に言うと保険適応でない、自費診療の免疫療法は詐欺療法に近いということです。
もちろんその治療を受けて、良かったという人もいるでしょう。
しかしその意味は

 

・抗がん剤治療がきつく、うまく調節してもらえなかった患者さんが、何らかの他の治療に光明を見出せた。

 

・もはや抗がん剤か無効と言われ絶望した患者さんたちが、優しく迎えられ、わずかでも希望を持たせてもらえた。

 

という意味です。
保険適応外の従来の免疫療法は延命効果や鎮痛効果はなく、経済的毒性と時間消耗毒性は本人だけでなく家族も被害を被ります。
意外と当事者の心象が悪くないのは「結婚詐欺」に似ている感じがしますね。

 

こういった、いかがわしい免疫細胞療法も大手メディアで宣伝されると、お墨付きを与えてしまいます。しかし読売新聞社社内でも部署により、解釈判断が分かれて、方針のせめぎ合いがあるのでしょう。

今回の記事は自浄作用の表れと信じたい。

 

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