第13回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
時間:2017年1月21日(土)13時から16時
場所: 東京 新橋駅周辺

2017年1月7日土曜日13:30~15:30宮崎善仁会病院院内がんサロンを開催しますが、院外のご興味ある方も参加できます。事前に当方にメッセージをいただけるとありがたいですが、当日参加も可能です。

2017年1月14日土曜日、10:00より宮崎市郡医師会病院講義棟で第82回宮崎がん患者共同勉強会を開催します。今回のテーマは 「がん患者さんを支える家族は、本人とどう向き合えば良いのか?」です。
①10:00~10:30 患者さんだけの気軽なおしゃべり会
②10:30~12:30 がん専門医によるレクチャーと質疑応答
③12:30~グループに分かれたおしゃべり会
初めての方も気軽にご参加ください。
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2017-01-17 21:35:15

「早期緩和ケア」パラダイム転換④核心

テーマ:新しい医療テクニック

昨年横浜で開催された日本癌治療学会のパネルディスカッション「社会全体で考えるべきがん人生の充実」でのお話。

医療側からの様々な働きかけをしているのにもかかわらず、なぜ支援の色々な手段ががん患者に届かないのだろうか?浸透しないのだろうかという会場からの質問に対して、登壇していたパネリストの医師やソーシャルワーカーなどが答えに窮していたことが印象的であった。
つまり、自分たちはできることだけのことをやっているにもかかわらず、それが実際の患者さんの苦痛緩和に結びついていないことに困惑していることがありありと見て取れた。


自分は

「それは医療側が患者さん側に飛び込んでいないからだ」

という思いを強くした。


医療者が自分たちの土俵に上がってきてほしいと訴えているだけだからだ。


確かに「患者さんのために」と言う大義名分でチーム医療の普及や数々の学会の創設や大規模化は進み、生存期間の延長や見かけ上の医療の進歩はめざましい。

医療としてできることと、しなければならないことは莫大になってきており、その分医療者側の労力は増える一方。

 

しかし患者さんの幸福度はさほど向上している感触はなく、世間的にはむしろ医療側への不満がたまっている印象がある。


むやみに不安をあおって注目を浴びようとするマスメディアの誘導の影響が大きいのは事実だが、医療側も自分たちの領域内での議論や研究に集中しすぎ、医者の前では出さない患者さんの本音には無関心すぎた結果ではないだろうか?


医療は客観的根拠の積み上げであるから、その扱い方に慣れた医学界での活動は医療者にとっては心地よい。しかしこれは病院や学会内での「籠城戦」と言っても良く、患者さんとの距離を確実に広げている。


もちろんこういった反論もあるだろうか。
例えば
・学会での市民講座があるじゃないか
・セカンドオピニオンや院内がんサロンだって広がっている
・がん情報サービスや患者さん向けのがん治療むけの冊子もある
・がん連携拠点病院の要件で、多職種によるキャンサーボードや緩和ケアチーム、がん相談支援センターの充実がはかられている
・ピアサポート養成講座もある

 

各関係者の多大な努力と負担は重々承知しているし、敬意を払うべきものであることに関しては全く異論はない。
むしろ医療者は過重労働ではないかという印象の方が強いくらいだ。

 

しかし前述のように未だ適切ながん治療を受けてもらっている人ばかりではない。

またたとえ初期治療は適切でも、終末期近くになって、主治医とうまくいかず、民間療法施設の方へ流れ、不本意な「がん難民」となるケースはよく目にする。


参考: http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11175877785.html

抗がん剤拒否の理由⑮医師は標準治療を押しつけるが、その意味解釈を省く

より引用---------

良くあるパターンは以下のような医師の治療説明だ。

「このがんの場合まずこの抗がん剤を使います」

「最初の抗がん剤が効かなくなったので次はこの抗がん剤を使います」

「2番目の抗がん剤も効かなくなったようです。残念ながらもう治療法がありませんので緩和ケアを紹介します」

医師を信じて、きつい抗がん剤治療に耐えて言うとおりにしたのに、ある日突然さじを投げられたような言葉に愕然とする。そして何か他の方法はないか探し始める。
そしてわずかな希望を持たせてくれるような錯覚で民間療法に残りの人生と財産をつぎ込む。
こんな状況ではたしてがん治療のどこが進歩したと言えるのだろう?

------引用終わり

 

 

そして以下のような事実がある。

・たしかにがん相談支援センターは認知されてきているようにも思えるが。


・ピアサポーターによる相談支援を実施している拠点病院の割合 16.9%(2014年)
・拠点病院のがん患者のうち、がん相談支援センターを利用している者の割合は7.7%しかない!

 

 

主治医になかなか質問出来ない、あるいはどこに相談すれば良いのかわからない。

とりあえずネットで調べよう

ところが適切な情報は半分以下で、まんまと業者の宣伝に引っかかる

 

これでは「早期からの緩和ケア」の普及どころではない
医療の各方面が一生懸命努力しているにもかかわらず、適切ながん情報にかすりもしない人が絶えないのは、結局、医療側が座して待つ姿勢であること、もう一つは医者への近づきがたさが原因なのだ。

 

前者に関しては、主治医が初診の患者さんに「早いうちに一度はがん相談支援センターに寄ってみてください。どんな情報や支援が受けられるかがわかるだけで、きっと治療を円滑にするヒントが得られるはずです」と必ず案内するシステムを組み込んでしまうのが一番の対策と思う。

(→余談ながら、学校での子供へのがん教育を推進している関係者には、お子さんに「がんになったら、まずがん相談支援センターに行くよう親御さんへ勧めることをカリキュラムに入れてほしい)

 

後者については、これを改善する最も良い方法は医療者、特に医師自身ががんサロンや患者会へ直接参加することではないだろうか?

 

納得出来ない医療関係者も多いだろうが、近藤誠氏の「がん放置療法」から免疫療法、代替医療クリニックなどに、「してやられている」現状をもう一度考えてほしい。

 

その理由と戦略はまた、次の連載記事で詳説する。

 

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第13回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2017年1月21日(土)13時から16時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

 

2017-01-07 19:26:56

「早期緩和ケア」パラダイム転換③その理論に対する疑念

テーマ:新しい医療テクニック

前々回「早期緩和ケア導入が生存期間を延長する」の記事リンクを参考にしてもらうとわかるが、非常にインパクトのある報告で、当初はこれこそががん治療に不足していたことだと思われて、さかんに提唱されていた。


実際、昨年末に成立したがん対策基本法 改正法では
---------------------

がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること。
(筆者注: 改正前は「がん患者の状況に応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること」であった)
---------------------
となっている。


で、今どうなっているかというと、色々な理由でやや下火となってきている。というのは今の日本のがん診療現場がそれをどう解釈すれば良いのか、現実に取り入れることが本当にできるのかという疑問にぶち当たっているからだ。
疑問の具体的項目は以下のようなものだ。

 

①実効性からの疑念
②実現性からの疑念
③コストパフォーマンスからの疑念
④家族の苦悩に対応する事に対する疑念
⑤社会での受け止められ方に対する疑念
⑥患者さん自身の能力を無視することに対する疑念

 

①実効性からの疑念
「早期からの緩和ケア」のなにが寿命の延長、QOLの改善に結びついているのか、実はまだよくわかっていない。
以前このブログで
「早期から緩和ケアを受けることにより、抗がん剤治療の意味や目的について患者さん自身が考えるきっかけとなり、延命より症状緩和のほうが自分にとって大事と判断していた可能性が高い。そうでないと、抗がん剤治療継続のみが唯一の希望となってしまい、終末期の弱った状態での無理な抗がん剤継続がかえって寿命を短くしてしまう」

と書いたことがあるが、あくまでも個人的見解に過ぎない。


質の高い無作為化比較試験で非小細胞肺がんで証明されたとしても、米国の一施設の話であり、がん種が違った場合、あるいはそもそも日本でも効果が出るかは検証されていない(と専門家は思っている節がある、特に腫瘍内科医では)。

 

国立がん研究センター病院緩和医療科など一部では予備的介入研究はなされているようだが、すくなくともTemelの報告と同レベルの無作為比較試験が日本で進行中という話は聞いたことがない(筆者が知らないだけかもしれないが)。

 

②実現性からの疑念
・緩和ケア専門病院は抗がん剤を終了してからでないと受け付けてくれないことがままある。

もちろん各施設の差はあるだろうが、緩和ケア病棟は限られていて、緩和ケア外来初診も何ヶ月も予約待ちの状態だ。(注: 緩和ケア病棟入院待ちという意味ではなく)

 

各施設ごとの事情はあるだろうが、抗がん剤治療ができなくなった終末期に近い人を優先するためにはやむを得ないのかもしれない。

患者さんの増加と専門施設数からすると今後劇的に改善するとは思えない。

 

③コストパフォーマンスからの疑念
ただでさえ、抗がん剤治療で医療費がかかるのに、さらに話を聞いてもらうだけのために緩和ケア外来へ通いたいと、患者さんや家族が最初から思えるか?
もちろん主治医ががん疼痛対策を十分してくれないので、そういった意味での身体的緩和ケア目的での紹介はあり得るだろう。しかし大きい病院ほど待ち時間が長い傾向があるのに、その追加負担をどれほど希望されるだろうか?

 

この問題は病院側からすると
--------------例えば、「早期緩和ケアを提供するために、スクリーニングを実施しなければならないが、誰がいつしも影響が少しでも小さくできるような試みをするアプローチしたらよいのかわからない」とか、「早期緩和ケアが当たり前なので、緩和ケアチームが全患者を診るべき」と言われ、緩和ケアチームが疲弊する、という話がある。----
CancerBoardSquare vol.2 no.1 2016​「早期緩和ケア」と「診断時からの緩和ケア」の 問題をその背景から考える
小川朝生(国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科)より引用


③がん治療医vs緩和ケア医という対立構造からの疑念
一般の方には意外と感じるかもしれないが、実は抗がん剤や手術など、がんの積極的治療を推進する日本臨床腫瘍学会や日本癌治療学会は、日本緩和医療学会(ご指摘あり、初版では緩和ケア学会と間違って記述していたので、訂正しました)とあまり仲が良くない。
この表現は語弊があるかもしれないが、新しくがん治療を勉強しようとする医師から見ると、お互いあさっての方向を見ているような感じがするのだ。


もちろん、腫瘍内科医と緩和ケア医の役目を同時に担っている医師は少なくないし(相互に研修していることも多い)、学会上層部は相互に協力し合おうとコラボレーションしてはいるのだが、各学会を構成する腫瘍医と緩和ケア医たちは自分たちの専門領域を研究実践することに没頭しがちだ。


ある高名なリーダー的腫瘍内科医K.T.先生と早期からの緩和ケアのことが話題になったことがある。そのとき、もう少し緩和ケア学会と連携していく方が望ましいのではないかときいてみた。


すると「ん〜彼らは『物語』が好きだからね〜」という答えが返ってきた。


これは何を意味するかというと、腫瘍内科医外科医は一定のがん種、ステージごとの新治療法の有効率や全生存期間などの数字を出すこと、つまりエビデンス(科学的根拠)を作り出すこと(臨床試験など)に熱心である一方、緩和ケア医はがん症状の強い患者さん(終末期が近いほどその患者さん特有の症状となる)に対する個別の対応(あるいはノウハウの開発)に熱心であるためだ。


腫瘍医が重視するEBM(Evidence Based Medicine)に対してNBM(ナラティブ: Narrative: 患者の物語り)というものがある。

参考: ナラティブ・ベイスト・メディスンとは・・・

https://www.kango-roo.com/word/7060
本来このEBMとNBMは対立するものではなく、相互補完的なものである。
(ただしが、多くの人が勘違いしているので注意してほしいが、治療ガイドラインとEBMは直接の関連はない)


もちろん緩和ケア医がエビデンスを軽視しているわけではない。

逆にTemelの論文は緩和ケア領域では比較的質の高い臨床試験だったため、腫瘍内科医も早期緩和ケアの効果を認めざるを得なかったとも言える。


しかし緩和ケア領域では病状の個人差が激しいため、一定条件の患者さんを集めた質の高い臨床試験をやりにくい事情がある。

仕方がないことなのかもしれないが、もう少し交流があってほしいものだ。

緩和ケアチームやキャンサーボードのある大きい病院ならまだ良いが、大抵は院内患者のみを対象としている。外来患者数は膨大だからだ。


④家族の苦悩に対応する事に対する疑念
最近でこそ、がん患者の家族は「第二の患者」とも言われるようになったが、そのことまで含めての「早期からの緩和ケア」を日本の医療者が配慮できている感じはしない。
以下のような報告がある
--------------------
◆介護保険の利用状況
「末期がん」として、介護保険制度を利用する患者は36%と少ないのが現状であり、利用しなかった理由は「がん患者が使えるとは思わなかった、高齢者のものだと思っていた」など情報が提供されていないことがわかった。

◆緩和ケアの利用状況
緩和ケア外来の利用率は16%となっており、利用しない理由は「必要なかった、知らなかった、紹介されなかった」の順となっている。また、利用した理由の第一位は「主治医から薦められて」が全体の6割を占めている。

◆家族の思い
家族の「介護・看取り」に対する思いに、一番多かった声は「後悔の念や喪失感」である。「もっと話をすればよかった、家に一度でも帰してあげればよかった、知識や情報が足りなかった」といった声は全体の6割を占めた。 

CancerBoardSquare vol.2 no.1 2016「診断時からの緩和ケア」は届いているのか?  ─ 緩和ケアの再考 桜井なおみ より一部改変して引用


⑤社会での受け止められ方に対する疑念
がん診療に関わる人にとっては、もうそれほどではないかもしれないが、「緩和ケア」イコール「末期」というイメージは一般の方々や一部のがん患者さんには根強く残っている。残念ながらこれは当方の勉強会に出席した一般人の大多数の意見である。
日本緩和医療学会の方々には申し訳ないが、がん患者になったばかりの段階では、このネガティブなイメージがどうしてもつきまとう。
がん治療医も抗がん剤など患者さんの積極的治療が無効になりつつあるときに、つい「緩和ケアに行ってください」と慣用的に発言してしまっている現状も良くない。
ドラマとタイアップしてでも、予後とは関係のない苦痛緩和の専門家というイメージを広める必要があるのでは?


⑥患者さん自身の能力を無視することに対する疑念
これは緩和ケアのみならず、がん治療全体に対する当方の疑念と受け取ってほしい。
医療全体に言えることであるが、医療側は患者さんとは治療を受ける存在としか扱っていない節がある。
つまり患者さんが自分で考え、主体的に行動する個人であることを敢えて無視して、医療側がどんな働きかけができるのかという介入視点でしか議論していないように思える。
もちろん「早期緩和ケア」報告でも、患者さんへの関わりについては「疾患の理解を深める」「問題対処法への言及」「家族の能力を高める」ことなどが重要な要素として検討されている。

しかし患者さんが価値観と思考を持った存在である事を前提に、そのがん治療に向き合う方向性を適切に導こうとするシステムや研究がどれほどあるだろうか?
当方のブログで
ネット情報の危険性
でも指摘したが、自分で本やネットでがん情報を調べ、能動的に動いていることが、その患者さんの予後にかなりの影響力を発揮することは自明なことだ。
------------以下参考として引用----------
佐藤: 多くの人が誤解していますが、じつは『ネット」は上級者のメディアなんですね。
ネットの情報は玉石混淆で、そこから「玉」だけを選ぶのは、かなりの知識とスキルが必要と言うことです。

 


------------------------

 

もっと大きな盲点は、患者家族自身が医者とどうつきあっていいのか(診察や質問、説明の受け方など)を教えてもらえず、みな手探りでもがいていることに医療者が気がついていないことだろう。
この点(患者受診学とも名付けたいが)を病院のシステムに組み入れないことには、たくさんの無駄や誤解を招き続けるだろう。


長くなったが、今回の記事をまとめると、どうも「早期からの緩和ケア」体制というのは、そう簡単には手に入らない(特に地方では)もののようだと言う話になる。

 

それじゃあ、がん患者やその家族はあきらめるしかないのか、なにもできないのかと言う話になって、患者会へつながるという話です。(長くて申し訳ない)

 

次回は「早期からの緩和ケア」パラダイム転換の核心に触れる。

 

今回は以下の文献を参考にしています。

 

 

 

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第13回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2017年1月21日(土)13時から16時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

2016-12-28 18:23:19

「早期からの緩和ケア」パラダイム転換②議事録ノートの活用

テーマ:新しい医療テクニック

前回、がん患者会の活動そのものが「早期からあるいは診断時からの緩和ケア導入」の実践にもっとも適しているのではないか?という意見を披露した。


それには一つ条件がある。
がん治療医自身が患者会に参加し、運営に関わることだ。


「過重労働でそんな暇あるわけない」「必要性が理解できない」「学会での報告例がない」という声が多数聞こえてきそうだが、数々の疑問に関しては連載で順次回答していく。

 

それまでの当勉強会では参加者からのがん治療にまつわる色々な疑問、抗がん剤治療の意味、副作用対策、担当医とうまくつきあう方法、代替医療の立ち位置や在宅緩和ケアの現状などを回答解説してきた。

その結果記録としてこのブログの記事は蓄積されてきた。


ただ問題は、多くの参加者の前で詳しく解説し、色々なアイデアを出してもらっても、そのまま消えていくことがほとんどだったことだ。


ところが今年から開始した東京支部会は素早く議事録を記録できる才能を持ったがんサバイバーの方がおり、毎回終了後にLINEを通じてその記録を配布できるようになった。

 

2016年12月17日新橋でのNPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会の議事録ノート

 

 

もちろん全部の記録ができているわけではないが、多少の訂正と解説を追加している。

 

参加者は今から治療を開始する人から終末期に近く、治験を受けるかどうかを検討している人、知人や家族ががんにかかって相談したい人など、多岐にわたる。


患者さん自身のがん情報(不完全な場合もあるが)を元に、セカンドオピニオン的な分析、解説、治療選択への助言、主治医への働きかけの提案、自分でできる苦痛緩和方法のアイデアなどを提供する。


これらを全員の前でおこない、全員の意見や経験、助言も求める形となっている。

 

こういったことをする必要必然性、妥当性、有効性、経済性についてはまた次回解説する。

 

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当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

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セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2017年1月21日(土)13時から16時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

 

2016-12-26 13:32:59

「早期からの緩和ケア」問題に対するパラダイム転換を試みる①

テーマ:新しい医療テクニック

「早期からの緩和ケア」問題に対するパラダイム転換を試みる①
のっけから大上段に構える題名で恐縮だが、がん治療の根幹に関わる診療システムについて、これから数回にわたりアイデアと実践を提示したい。

 

平成28年12月24日(土)開催されたNPO法人宮崎がん共同勉強会例会の様子。レクチャーはおこなわれるが、参加者が向き合って座っていることに注目。

 


自分が理事長を務めるNPO法人宮崎がん共同勉強会は宮崎県下のがん患者さんを対象に2010年からすでに7年間、毎月の勉強会を開いている。
患者会も色々な形態があるが、いわゆる政策提言、医療行政に対する要望をまとめる患者会ではなく、患者さんや一般人のがん治療リテラシーを高めることが主目的だ。

当勉強会の例会のプログラムは以下のような形となっている。


①患者家族同士のおしゃべりタイム
②腫瘍内科医によるレクチャー
③参加者全員の前であらゆる疑問に腫瘍内科医がその場で回答
④治療経験者や他の医療者もその疑問や問題を一緒に考え、全員で知恵を絞って対応策やアイデアを提案する。

 

すでに90回以上開催しているため、熟練したサバイバーも多く、がん患者さんや家族の色々なパターンの疑問や問題に対処するノウハウが蓄積されている。


宮崎県内には大きな患者会がなく(3年前宮崎大学病院の院内がんサロン開設の陳情もしたが、教授会で却下された)、その分集まってくるためか、毎回30〜40人にまで参加者が増えてきた。

 

今年のレクチャーのテーマは以下のようなものだった。
------------------

9月 インターネットと本のがん情報は実はかなり危険な理由

8月 テレビや雑誌のがん治療情報が、あなたの治療に役に立たないのは理由がある

7月 世の中のがんの悪いイメージは如何にして作り上げられたか?

6月 がん治療にまつわる誤解はこんなにある

5月 がん発症は人生の転機。なぜ、どんな事が?

4月 がんの不安に対処する方法をいくつ持っていますか?

3月 がん治療は自分で考える所に意味がある

2月 がんの種類が違うと、余命も治療戦略も、どんなに違うか知っていますか?

1月 がんになってよかったことを、あえて探してしまおう
------------------
質問コーナーでは、個々のがん治療の困りごとの相談はもちろん多いが、主治医とうまくいかないとか、病院不信の質問もよく受ける。

その場でとりあえずの回答、対策を提案するが、病院内にいる人間には想像もできない患者家族の悩み事は大変興味深い事ばかりだ。
当方としては大変楽しくさせてもらっているが、これに味をしめて2016年1月からは東京支部会を作り、小規模ながら(10〜24人)の例会を始めた。

 

このブログを通じて参加される患者さんがメインで、わりと年齢層が低く、ご自身のがん種について詳しく勉強されている人が多い。
同様にがん治療にまつわる悩みは多く(そういった動機で参加を決めるのだから当たり前だが)、質問内容は多岐に渡る。

 

ところで、このNPO法人宮崎がん共同勉強会の活動そのものが「早期からあるいは診断時からの緩和ケア導入」の実践にもっとも適しているのではないか?という考えが最近徐々に固まってきた。

 

宮日シンポ3
もともとTemelらの論文で紹介されているものだが、このブログでは2013年すでにシリーズで紹介している。

 

その結論だけを抜き出すと「非小細胞肺癌では早期に緩和ケアを導入した方がQOLも精神状態も改善し、濃厚な終末期医療を受けないにもかかわらず生存期間は延長した」というものだ。早期緩和ケアを受けた患者群のほうが生存期間が長いのに、むしろ抗がん剤治療回数は少ないという意外な(経験的にはやっぱりねと思っていましたが)注目点がある。

 

【参考】

早期緩和ケア導入が生存期間を延長する①

------上記リンクより一部引用------

次回以降この論文の意味を解説するが、恐らく出てくるであろう以下の疑問点にも言及したい。

・非小細胞肺癌の患者しか早期緩和ケア導入の意味がないのか?
・生存期間中央値の差が8.9ヶ月 vs 11.6ヶ月のたった2.7ヶ月では患者にとって意味があるのか?
・海外の緩和ケアと日本での実情の差を考えると参考にならないのでは?
・今抗がん剤治療を受けている立場の患者で、自ら緩和ケアを利用したいとは主治医に言いにくいから参考にならない?
・濃厚な終末期医療を受けた患者の方がなぜ生存期間が短い?
・「厳しい(濃厚な)ケア」と言う言葉自体の意味がわからない

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早期緩和ケア導入が生存期間を延長する②【当方の見解】 

早期緩和ケア導入が生存期間を延長する③出てきそうな疑問点

早期緩和ケア導入が生存期間を延長する④出てきそうな疑問点2

早期緩和ケア導入が生存期間を延長する④この試験が注目を浴びる理由

 

その理由、やり方について、しばらくシリーズで続きます。

 

次回は去る2016年12月17日に新橋で開催されたNPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会の議事録ノートを紹介解説する。

 

 

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第13回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
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ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
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時間:2017年1月21日(土)13時から16時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

2016-12-25 09:42:36

”ネットで見かける「がんの家族の壮絶療養」2タイプとできること 小林麻央さんの骨痛の話から”

テーマ:ブログ
2016-12-07 19:58:22

ネット情報の危険性

テーマ:医学的話題

DeNAがやってるキュレーションプラットフォーム事業: 医療情報サイト ウェルク(Welq)が無断引用改変した怪しい情報を大量に提供していた事件が現在炎上している。

 

ここでいうキュレーションとは、消費者が気になる記事のリンクを貼り付けたり、記事を要約したりする「まとめサイト」ことを指している。


気になるキーワードをグーグルやヤフーで検索すると、数百万以上の膨大な関連サイトが出てくる。あまりにも膨大な検索結果が出るので、通常検索された上位数個のサイトだけしか、実際には見ない人が多い。


もともと見ている人にとって適切なサイトや記事が上位に検索表示されるのではない。
検索エンジン会社に広告費を払ったサイトやよく検索されているサイトが表示されやすいのであって、正しいかどうかは関係ないのだ。


適切かどうかと言う意味では無法状態というのがネット情報であり、今回は間違った情報や違法な引用改変を許す、広告収益を第一にする企業の実態が暴かれたというわけだ。
実際に問題となっていることは、他の報道機関が大量に紹介しているので、ここでは省く。

 

ところで3年ぐらい前に運営会社の創業者の記事がネットで紹介されている。

----------------------------------------
2年の介護で変わった夫と愛犬さくらと私の関係 -DeNA創業者 南場智子
http://president.jp/articles/-/15145
より引用
こうして夫婦2人で闘病生活に入ると、私は病気について徹底的に勉強を始めました。術後の治療法について国内外の専門家に相談し、本を読み漁る。DeNAの創業メンバーの一人も、膨大な論文を読み込み、検討すべき治療法を教えに、わざわざ住まいのロンドンから駆け付けてくれました。また、病院の先生とも信頼関係を築くことができ、何でも相談することで、実際、いくつかの治療法を試しました。

家事は苦手だけど、とにかく夫と一緒にいたかった
そして退院後は抗がん剤などの治療を開始し、免疫力を高める生活を始めたのです。そのためには、なんといっても食事が重要です。そこで、私は慣れない料理に挑みました。『がんに効く生活』という本を読み、ターメリック(うこん)は抗炎症作用が高いと知ると、ひじきの煮つけだろうが、切り干し大根の煮物だろうが、構わずかけまくる。これがマズかったのでしょうね。そのうち夫が、「今日はひじきが嫌いになった」「切り干し大根が嫌いになった」と言い出すようになりました。それでも、私が慣れない料理を頑張って作っているのがわかるから、頑張って食べてはくれます。でも、大変な手術で痩せた体が、さらにどんどん痩せていってしまいました。頑張ったんですけど逆に迷惑だったみたいで、最後には「もう勘弁してくれよ」と言われてしまいました(笑)。
〜〜中略〜〜
2年の闘病生活の後、我々夫婦がどうなったかに話を戻しましょう。それが有り難いことに、夫のがんは縮小しはじめ、12年の夏には、画像に腫瘍が映らなくなりました。今では、海外旅行はもとより、ゴルフもダイビングも何でもござれという状態です。西洋医学のお医者さんは、説明がつかないと言うのですけどね。調子に乗って、このままいってくれと思っています。

引用ここまで--------

 

残念ながら、この方の夫の紺屋勝成氏は2016年12月5日死去されたと言うことで、なかなか大変な状況が重なったが、本日夕方の記者会見を見ていて気がついた点を書きたい。

DeNAの南場智子創業者は、自分の家族ががんになって、医療情報をネットで探そうとしていたのかという質問を受けていた。


上記の引用でわかるように、さすがやり手の社長だっただけに、信憑性の怪しい伝聞ばかりのネット記事は参考にせず、自分で論文も読んで、専門家に直接相談することを実践していたわけだ。


その経験からDeNAグループのヘルスケア事業では、がんなどの医学情報を一般人向けに、ネットで分かりやすく伝える情報提供事業を模索していた。


ところが、実際に有料事業を立ち上げ、患者会や一般人に提供しようとしたところ、実際には需要が極端に少なく、事業としては成り立たないことがわかった。

そのため、アクセス数を増やす小細工をし、安い原稿料で一般ライターに大量の記事を募って、無料提供して広告収入を稼ぐ方向転換の結果として今回の事件が発覚した。

 

発想は良かったのだが、この創業者自身が優秀すぎたのだろう。


がんを始め、健康情報は皆知りたいのであるが、だれでもあまり労力をかけたくないのが本音だ。


特に最近はグーグル先生に聞けばいいとばかり、何かあったらネット検索して済まそうとするし、最近のスマホでの検索では一画面の表示面積が狭いから、検索結果の1〜2番目の結果しか見ない傾向が強い。

 

当方のブログを含め、医療者は正確な医療情報は非常に大事だと主張しても、それは情報提供の当事者だから。


そのえらそうな医療者も、不動産や家計のことをもっと学習すべきだとファイナンシャルプランナーから責められたら、同じようにもっと簡潔な方法を教えてくれと言わざるをえない(笑)。

 

話を戻すと、有料でもがん治療情報を勉強したいという人は一握りであり、多くの患者さん(高齢者も多くなっている)や家族にとっては、がん治療を理解するのにかなりの苦労が伴う。

 

信頼すべき主治医とのやりとりより、安易なネット記事でがん治療の方向性を探ることを優先していた人にとっては、ネット記事の信頼性は無きに等しいと悟らざるを得ないような大きな事件だろう。


ネットに書いていることを鵜呑みにしていた人にとって、今後はそのネット記事が本当かどうか、確認する方法が示されていないからだ。


医療者が書いていれば信頼できるとは限らないのが難しいところだが、やはり日本でも信頼の置ける医療サイトの認定制が必要だろう。

 

ところで、当NPO法人宮崎がん共同勉強会では、「テレビや雑誌のがん治療情報が、あなたの治療に役に立たないのは理由がある」という講義までしているが、本当に意味のある医療情報を活用するためには医療リテラシー(読み書き能力)がある程度ないと危うい。
特にがん治療においては、担当医とのコミュニケーション技法のほうをとにかく優先してほしい。
なぜなら、どんながん情報でも患者さん本人の情報を前提としないと有益とはならないからだ。むしろ有害とも言って良い。

 

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第12回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2016年12月17日(土)11時から14時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

2016-11-23 18:10:08

解説: NHKスペシャル▽“がん治療革命”が始まった~

テーマ:有用書籍、記事の紹介

NHKスペシャル▽“がん治療革命”が始まった~プレシジョン・メディシンの衝撃
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586864/index.html
日本人の2人に1人がかかる病、がん。その治療が根底から変わろうとしている。――
進行した大腸がんを患う48歳の男性。4度にわたる再発を繰り返し、手術不能とされていた。しかし、ある薬の投与によって腫瘍が43%も縮小。職場への復帰を遂げた。投与された薬とは、なんと皮膚がんの一種、メラノーマの治療薬。今、こうした従来では考えられなかった投薬により劇的な効果をあげるケースが次々と報告されている。背景にあるのは、がん細胞の遺伝子を解析し速やかに適切な薬を投与する「プレシジョン・メディシン(精密医療)」だ。日本では去年、国立がん研究センター東病院など全国200以上の病院と10数社の製薬会社によって「SCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)」と呼ばれるプレシジョン・メディシンのプロジェクトが始動した。進行した肺がんと大腸がんを中心に、がん細胞がもつ遺伝子変異を詳細に解析。効果が期待できる薬を選び出して投与する。これまでに7000人近くの患者が参加し、肺がんでは1/8の人に薬が効く可能性のある遺伝子変異が見つかった。100人ほどが実際に臨床試験に入っている。このプロジェクトに参加する患者に密着しながら、プレシジョン・メディシンはがん治療をどう変えようとしているのか、がん患者とその家族に何をもたらすのか、先進地のアメリカの最新事情とともに、その可能性と課題を見つめる


こちらも参考に
中村ゆきつぐ
NHKスペシャル“がん治療革命”が始まった ~プレシジョン・メディシンの衝撃~ 現状はまだ大変 しかし未来は期待出来る

http://blogos.com/article/198792/

 

興味深い番組でしたが、一般の方にとって、この番組だけで膨大ながん治療全体に対するプレシジョン・メディシン(精密医療)の位置づけを知るには無理がある。

 

最初に簡単にまとめると

従来のがん治療が、じゅうたん爆撃からピンポイント爆撃も併用するようになってきた。
ただしもっとお金はかかるようになるし、がん戦争はまだまだ続く

 

といったものだろうか。

 

確かにインパクトのある最新がん治療であることは間違いないし、注目すべき事ではあるが、ここでは見落とされがちな注意点を指摘しておきたい。

以下、番組内容に少し補足した内容を書く。(矢印は当ブログのコメント)

 

・従来の抗がん剤治療において、各がん種の患者さんの集団としての奏功率(腫瘍縮小する確率のこと)は臨床試験で判明していたが、実際の個々の患者さんに投与したときの効果は、やってみなければわからなかった。そのため無駄に苦しめる患者さんがどうしても多くなる。
(→これが今までの抗がん剤の評判が悪い理由)

 

・がんは遺伝子変異によって起こる。がんの増殖を引き起こす原因となっている遺伝子変異がわかり、そこに作用する分子標的薬があれば、事前に有効な患者さんを選択でき、不幸な患者さんを減らすことができる。
問題はがん増殖に関わらない遺伝子変異も多数あるので、原因遺伝子が特定しにくい。そこで、がん遺伝子変異とそこへの作用薬剤に関する膨大な論文を、AIに読み込ませて、可能性のある有効薬剤を探索できたら、治療につながるかもしれないとのこと。
(→がんの発生と増殖へ関わる遺伝子をドライバー遺伝子、結果としておこった変異が起こった遺伝子をパッセンジャー遺伝子という。EGFR遺伝子は非小細胞肺癌のドライバー遺伝子だが、大腸がんでは治療を左右しない。RAS遺伝子は大腸がん治療の方向性を決定づけるが、膵がんでの治療では参考にならないなど)

 

・今までは発生臓器のがん種別に抗がん剤が決まっていたが、これからは有効な薬剤のある遺伝子ごとに臓器横断的な治療法開発が多くなるだろう。
(→ただし、あくまでも一つの新しい治療の武器が増えたということでしかない)


以前のNHKスペシャルと違って、今回はこの最新治療の恩恵を得られなかった、あるいはその後治療が無効となった患者さんも紹介していることから、あまり期待をあおりすぎないような配慮が感じられた。

参考: 「NHK がんワクチン~"夢の治療薬"への格闘~」をどう見るか?
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11408237842.html

 

ここで一般的に誤解されていることを訂正しておきたい。

 

・第4のがん治療法と言われていた免疫療法と最近話題の免疫チェックポイント阻害薬は全く別個のもの。
従来の免疫療法は腫瘍免疫を増強しようとする手法であったが、副作用は少ないものの、ほとんど効果が確認できなかった。
一方免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が生体内の免疫監視から逃避していた免疫チェックポイント機構を抗体薬でブロックすることで、本来の免疫機構が回復し、がん細胞を排除する。2〜3割の患者さんに効果が本当に証明された。

そのメカニズムは分子標的薬と言え、広い意味では抗がん剤そのものだ。効果はともにそれなりの副作用はある。

 

・奏功率から考えると従来の抗がん剤とそれほど変わらないか、もっと低い場合もある。ただし効いた患者さんは効果が長く続くことがあるのは革命的かもしれない。

 

・がんに対する武器が増え、事前に効果のある患者さんを選別できるようになった。

これは過半数のがん患者さんが救われるという意味ではないし、がんが消えると言うより、長く共存できるラッキーな人が出てきたと言うことに過ぎない。

例えば分子標的薬が9割以上奏効するALK遺伝子陽性肺がん患者は、非小細胞肺がんの3%ぐらいしかいないが、肺がん患者数が非常に多いので、恩恵を得られる人は多い。

しかし治るわけではなく高価な薬剤を投与し続ける必要があるし、いつかは効かなくなる可能性も高い。

 

番組ではがん治療革命と言っているが、それは医療者側と報道側からの視点でしかなく、幸運に恵まれなかったがん患者にとってはぬか喜びとなってしまう。

 

まあ、仮に運良くがんが治ったとしても、永遠に生き延びられるわけではない。

やはり人生という「生きている」時間をどれだけ稼げるか、どれほど大切にできるかという視点は必須だろう。

もちろん先端を突っ走る研究者と企業や行政当局の努力と貢献は素晴らしいもので、文句はつけられるものではない。


しかし、がん治療がどれほど発展しようが、次なる問題は絶対生じる。

 

・がんを縮小させ、共存、延命ができても、副作用とお金と家族の負担などの問題は生じる。
・がんが治っても、再発の恐怖や仕事ができるかという問題は生じる
・また今度は長生きするリスク(後遺症や、老化、二次がんなど)に直面する

 

気が重くなるかもしれないが、問題に終わりはないのだ。
医療者は自分の専門分野での貢献が果たせれば役割は終了と言うことで、その後の指針は患者さんに示してくれない(事が多い)。

世間で言うがん治療の進化は一面的であり、見過ごされている重要な領域はまだまだたくさんある。
がん治療進歩の尺度は治癒率や生存期間で測れるが、患者さんが不幸にならずにすむための物差しは無いからだ。

 

今回はやや重苦しい感じの紹介になったが、もちろんがん治療には希望が持てないという意味ではない。

 

逆に、まだまだ見過ごされ、改善されるべきがん治療の盲点を発掘していきたい。

 

 

 

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第11回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2016年11月26日(土曜日)14時から17時
場所: 東京 大崎駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

2016-11-15 08:45:30

がんの不安を軽くする三つのコツ

テーマ:がん患者の心構え

先日NPO法人宮崎がん共同勉強会例会が80回目を迎えた。
毎回1時間ほどのテーマでレクチャーして、その後参加者の近況報告と質疑応答となっているが、最近のレクチャーのテーマは以下のようになっている。

ーーーーーーーーーー
2016年
9月 インターネットと本のがん情報は実はかなり危険な理由
8月 テレビや雑誌のがん治療情報が、あなたの治療に役に立たないのは理由がある
7月 世の中のがんの悪いイメージは如何にして作り上げられたか?
6月 がん治療にまつわる誤解はこんなにある
5月 がん発症は人生の転機。なぜ、どんな事が?
4月 がんの不安に対処する方法をいくつ持っていますか?
3月 がん治療は自分で考える所に意味がある
2月 がんの種類が違うと、余命も治療戦略も、どんなに違うか知っていますか?
1月 がんになってよかったことを、あえて探してしまおう


2015年
12月 大半のがん患者さんが勘違いしている極めて重大なこととは
11月 「がん」で困った。どんな事が?対策は?
10月 治らないがんの場合、どこに目標を置けば良いのか?
9月 「がんリハビリ」という言葉を知らない患者さんは最新のがん治療から取り残されている!
8月 がんの予防と治療において多くの人が見逃している大事なことは?
7月 治らないがん、改善しない症状に直面したとき、どう対処すべきか?
6月 薬の名前を覚えようとしないがん患者さんに訪れる8つの不幸
5月 「がん治療は先生に全てお任せします」が絶対的によくない7つの理由
4月 がん治療ガイドラインは何のためにあるのか
3月 テレビで紹介される先進医療があなたにほとんど参考にならない理由
2月 がんの標準治療とはどういう意味か
1月 ?
2014年
12月 がん治療開始前に緩和ケアを受けたほうが良い理由とは?
11月 がんについて学習しないと治療は失敗する
10月 がんにふりまわされない患者力とは
9月 がんが心配でしょうがないときはどうすれば良い?
8月 エビデンスだけではがん治療が失敗するわけ
7月 エンディングノートが、がん患者に有益な理由
6月 高齢者のがん治療には深い戦略が必要
5月 残り時間が限られていたら、何をする?
4月 がんの不安はどうやって解消するか?
3月 何のためのがん治療か理解していますか
2月 ?
1月 がん患者とその家族が後悔することは何か?

ーーーーーーーーーー

 

やはり一般向けなので、個別のがん治療についての講義はほとんどない。ただ専門的治療の解説は、質疑応答時間に個別の治療についての相談を全員の前で行う事で、補っている。


さて今回は2016年10、11月の宮崎がん共同勉強会の講義よりテーマを持ってきた。

「がんの不安を軽くする三つのコツを伝授します」

 

もちろんがんの患者さんにとって個々の事情はまるで違うし、不安軽減のための方法は色々あるだろう。
しかし、心に余裕がない人にたくさん言っても届かないので三つに絞った。

最初に結論を記載する。

①今に集中する
②日記を書く
③良いこと探し


これらはがん治療における専門的な問題に対しての不安を、その原因からなくすと言うわけではない。
ここでは一般的な不安への対処法を記載していますが、実際がんに対する漠然とした不安で悩んでいる人は多い。

 

解説


①今に集中する
不安があって、仕事も何も手が着かないという人は多いでしょう。
不安というのは将来のことを指します。
考えれば考えるほど不安が募るものです。
ある研究によると不安の90%は実現しないとされており、そのために、自分のエネルギーと時間を浪費するのは、避けた方が良いでしょう。
がん患者さんが仕事を辞めない方が良い理由の一つは、今の仕事に没頭しているときは病気のことを考えなくてすむからです。今、やること、やりたいことをたくさん作りましょう。

 

 

②日記を書く
そうは言っても、つい考えてしまうのが人情です。
しかし頭の中で考えるだけでは、いろいろな事が浮かんでは消え、空回りするだけで、思考が前に進みません。


ここは一度その不安を言葉にして、文章に書き出しましょう。
避けられない事実、心配している不安、将来への期待、かすかな希望を思いつくまま日記として書くのです。
面倒と思う人が大半でしょうが、ちょっとした日付入りのメモでも良いのです。

その時点での心境を表現することも重要です。
言葉にすることで、曖昧な心配事は明瞭化し、自分でコントロールできることか、できないことかがはっきりします。
コントロールできないことに心のエネルギーを消耗してもしょうがありません。今できることのみに体力を使いましょう。

 

またその日記を後で読むことで、心配していたことが本当に起こったかどうか確認できるはず。
大抵は心配しすぎな自分を再認識でき、それを乗り越えた記録が、今からの自信の土台になります。


自分の不幸な体験は日記に書いても良いし、人に聞いてもらっても、楽になるでしょう。

ただし繰り返し書いたり、話したりしない方が良いです。

なぜなら何度も話すことは、その光景がくりかえし自分の脳裏に浮かび上がり、その不幸を追体験することになるからです。もちろんその逆も真です。

過去の楽しかったことを人に繰り返し話すことは、その追体験ですから、心の栄養補給と言っても良いでしょう。

 


③良いこと探し
不安というのは漠然とした不安が大多数です。これは明確な情報を仕入れることで解消できます。
がんになって、いやなことに敏感になってしまいがちですが、あえて身の回りの良いことを毎日探しましょう。
悪口や文句を言う人は不幸になります。
なぜなら悪いことや文句をつけたくなることを無意識的に探そうとする習慣がつくからです。


もちろんその人の性格はなかなか変えられないかもしれません。しかし意識的に行動を変えることは可能です。
がんになって不幸になったあるいはメンタルが弱くなった人は、毎日ちょっとした良いことを探す、あるいはプチチャレンジをする習慣をつけましょう。
多少失敗しても、それはその方法ではうまくいかないという事だけのこと。むしろ繰り返し試みることで、工夫する習慣が身につきます。
がん治療生活ではいろいろ予想外のトラブルは起こるものです。

しかしトラブルに対処する心構えと習慣さえあれば、きっと良い方向に軌道修正できるはずです。

 

 

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当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2016年11月26日(土曜日)14時から17時
場所: 東京 大崎駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

 

 

2016-11-07 18:31:23

有用記事の引用: 今すぐやめて!「免疫力」を高めない7つの誤解 

テーマ:有用書籍、記事の紹介

今すぐやめて!「免疫力」を高めない7つの誤解 
https://medley.life/news/item/5808ad9b13e3742c008b458f

結構読み応えのある記事です。
一部ポイントを引用します。矢印の後のコメントは一部当ブログの意見も入っています。

 

・よくある誤解1:笑うと免疫力が高まる→No
ストレスをなくすと免疫力が高まる?→No
笑うと免疫力が高まるのは医学的に証明されているのでは?→正確にはNo

 

・よくある誤解2:ツボを押すと免疫力が高まる→No

 

・よくある誤解3:食事で免疫力が高まる→No
バランスの悪い食事で免疫力は下がる?→No(ただし糖尿病になったらyes)
お酒で免疫力は下がる?→No(当ブログ注: ただし大酒家は色々な感染症で重症化しやすい医学常識あり)
免疫力を高めるために水を飲むべき?→No
腸内細菌を増やすと免疫力が高まる?→No(バランスのよい食事のためには、「体に良いものを食べよう」という考えは敵です)

 

・よくある誤解4:規則正しい生活をすると免疫力が高まる
早寝早起きで免疫力が高まる?→No(ただし、夜型生活で糖尿病になりやすい事実はある)
運動をすると免疫力が高まる?→運動をすると元気になるが、免疫力と直接関係なし
体を温めると免疫力が高まる?→No(ただし寝冷えしたりすれば、風邪を引くこともあるでしょう)
ダイエットで免疫力が高まる?→No(肥満そのものが免疫力を下げるとは言えません)
免疫力を高めるためには禁煙?→一部yes(喫煙者は一部の感染症にかかりやすい)

 

・よくある誤解5:免疫力を高める方法がある→No(元気になる方法はいろいろありますが、どれも免疫力を高めるための方法とは言えません。唯一の例外はワクチンです。ワクチンで、特定の病原体に対して免疫をつけることができます。)

 

・よくある誤解6:免疫力を高めると健康になる→yesとは限らない
免疫力を高めるとがんにならない?→免疫とはごく大雑把に言うと風邪を引かないことです。感染症以外の病気にはたいてい関係ありません。むしろ一部の病気を引き起こします。
オプジーボは免疫療法じゃないの?
→商品名オプジーボ(一般名ニボルマブ)などの薬は、でたらめな「免疫療法」とはまったく違います。抗がん剤です。
免疫力を高めるとアトピーにならない?→アトピー性皮膚炎は免疫が強すぎて起こる病気です。免疫を弱くすることで症状が治まります。(当ブログ注: ただし免疫力を高めてアトピーになるというのは一般的ではありません)
免疫力を高めると花粉症にならない?→上と同様

 

・最大の誤解:免疫力というものがある

免疫のしくみはとても複雑だということをわかってもらえたでしょうか。これほど複雑な免疫のしくみを「免疫力」というひとことで説明しようとするのは無理があります。

「免疫力」にあたる医学上の概念はありません。
このサイトでもイメージが湧きやすいように「免疫力」と言っている場所はありますが、「免疫力」を飛ばして理解したほうがより正確になります。たとえば「ワクチンで免疫力をつけると病気を防げます」という説明なら、「ワクチンで病気を防げます」とだけ言ったほうが不正確さがありません。
「がん免疫療法」と同様、「免疫力」という言葉はでたらめな説明によく使われています。運動や早寝早起きならともあれ有益ですが、「免疫力を高める食品」や「免疫力を高める治療」にお金を出す前には、少し落ち着いて考えたほうがいいでしょう。
 
「免疫力を高める生活」について何かを知る必要はありません。あなたの常識を信じて、当たり前に健康的だと思える生活をしてください。それが病気を防ぐ近道です。

ーーーーーーーーーここまで引用ーーーーーーーーー

 

ええ〜〜!?と思う人も多いでしょう。しかし繰り返しますが、一般の人にも非常に分かりやすくその理由を説明しているので是非元記事を読んでほしい。

確かに「免疫力」とは漠然としたやっかいな用語です。実際に医学用語としては使われていないし、敢えて言うなら「免疫力」とは見た目の元気さですと当方は患者さんに説明しています。どうしても食い下がる人には血清アルブミンの高さは参考になるかもしれないとお話ししています。

ちなみに当ブログでも「くせ者医学用語集」シリーズで解説したことがあります。


くせもの(医学)用語解説 VII「免疫力」①
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10842139392.html

 

くせもの(医学)用語解説 VII「免疫力」②
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10843198104.html#main

 

くせもの(医学)用語解説 VII「免疫力」③
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10843678594.html#main

ーーー 一部引用 ーーーー
例えば免疫学者の安保徹氏などはしきりに免疫力関係の出版、講演を行い、抗がん剤は免疫力を下げるからすべきでない、医者の8割は自分ががんになったら抗がん剤治療はしない(いつの時代の話?)と主張している。しかし当の本人は基礎研究者で実際のがん患者さんは全く診ないで思い込みを言っているだけなのだ。
筆者が受け持ったある膵がん患者さんは抗がん剤治療を順調に受けていたが、たまたま安保氏の講演を聴いて治療をやめてしまった。その後どうなったかは推して知るべしだが、余りにも多くのまがい物情報が氾濫しているのでたまたま目についた物を盲信するのは危険過ぎる。
阿保氏は抗がん剤は免疫力を下げるので逆に寿命が縮まると言っているが、体の免疫力と突破した結果、ガン細胞は進展しているわけである。その状態で抗がん剤で治療したほうがより長生きできるし、治療しないほうが癌の進展による症状で苦しみ、ずっと寿命が短くなる事は全世界的にすでに証明されて異論の挟む余地がないのだ。(ブログ注: 正確にはメリットのある患者さんが一定数いるという意味)
そのなかで阿保氏が実際の治療に手を染めてなく観念の世界で抗がん剤は有害だと言い張る事は無理がある。何といっても実際の治療現場にてすでに結論が出ているからだ。

ただし安保氏が主張している基礎医学的なことに関してそれほど異論を唱えているわけではない。それはそれで正しい根拠があるのだろう。

問題はそれをそのまま臨床医学つまり実際のがん患者さんの治療理論に当てはめたことだ。今の医学は実証主義であり、たまたまではなく実際に効果があったかどうかの再現性を証明してなんぼの世界なのだ。
つまり理論がどんなにもっともらしくても、効果が証明されなければ捨てられる。
逆にメカニズムがわからなくても効くことが証明されてしまったためよくわからないが標準治療として確立している治療法もある。

したがって実際に患者さんを治療していない人間が自分の都合の良い理論だけで治療法を指導することに自体に無理がある。

ーーー ここまで引用 ーーーー

 

 

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開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

2016-11-04 16:20:50

質問と回答: 医師は患者・家族心理への教育を受ける機会がないのか?

テーマ:質問と回答

有用記事の紹介: 勝俣先生連載: 余命に関する誤解(下)~標準治療の功罪~

http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-12213750813.html

のコメント欄の露草さんからの質問

 

----------------------------

余命告知の問題は医師が言う「患者教育」(嫌な言葉ですが、糖尿病の患者さんが命を守る為に受ける生活教育を思い出して納得するようにしています。癌患者へのそれは、医師によっては、まるで死への準備教育・少し余計なお世話と思う時もあります。)をする医師教育の問題が大きいのではないでしょうか。私は自分自身が癌患者ですが、数十年前に家族を別の癌で亡くしました。当時の主治医は病状・余命等を説明する際に、家族がなった癌の症例から、その後の生存の可能性として、極度に進行が早ければ半年、手術とその後(抗がん剤ではありません。当時は家族の癌に効果が明らかなものは無かったと思います。)の治療が上手く功を奏し、治療を続けていければ6年から7年という説明をしたそうです。不覚実なものを、資料を示し、可能性にも言及するという説明が、数十年前に既にあったのに、何故、今頃、単純に1つの数字だけで説明する医師が多いのか(どうなのでしょう?)疑問です。時間が無いからですとは医師も答えないでしょうが、患者心理・家族心理への教育を、医師は受ける機会がないのでしょうか。
私の家族の生存期間は、良い方に振れました。拡大手術でもなく、家族の社会生活・仕事も考慮に入れて頂いた、当時としては最善に近い治療を受けられたと思います。
医師には医師の事情と考えがあるのだろうと思いますが、患者の考えを医師は一体どう受け止めるんだろうというのが、患者になってから、頭から離れない疑問というか命題の一つです。
〜中略〜

家族の癌は当時の言い方で中期の後期という説明でした。病名を説明される以前に、行われる検査等から推測して、癌である可能性は高いだろうと、家族自身も他の家族も考えていたそうです。医師の説明を冷静に聞く素地はあったかと思います。主治医の生存可能性の説明も更に慎重で、手術・治療が功を奏せば短く見れば2年、長く見れば6~7年、と短い場合にも言及したそうです。数十年前に、家族が慎重かつ真摯な「病気はあれど、更に人生は続く」を理解して下さる主治医に出会えた事を感謝しています。

----------------------------

 

当方の回答


医師は患者さんへの説明の仕方、患者心理・家族心理への配慮について、どういった教育のされ方をしているのか、患者さん側としては当然出てくる疑問だと思います。

 

近年、医学生の時にOSCEという患者さんへの面接の仕方についての正式な教育カリキュラムはありますが、これも立ち振る舞いの常識を世間知らずの医学生に教えているという感じのものです。

 

しかし、医師になってからの患者説明方法の教育は正式にはほぼ皆無と言って良いでしょう。
びっくりされるかもしれませんが、医師なりたての研修医に対する患者さん向けの親切、効率的、理解しやすい説明方法の指針や教育カリキュラムなどなく、大学教官自身も手探りで教えているのが現状です。


なんと言っても、この領域を扱った医学専門科がないからです


かろうじて精神科の一部、精神腫瘍学の領域では多少患者さんの心情に配慮した説明の仕方を研究対象としているぐらいでしょうか。


また生死の問題が大きい臨床腫瘍学や医療者向け緩和ケア研修の一部では告知の仕方などの具体的手法を教えてくれますが、微々たるものです。

 

じゃあ現場の医者はどうやって患者さんへの説明方法を学んでいるのかというと、ほぼ100%がその時ペアを組んでいた指導医(あるいはその上の上級医)の実際の説明場面で学んでいます。その指導医も昔研修医だったときに同様な方法で学んでいるはずです。


医療現場では高度専門化と安全対策のプレッシャーで忙しい一方、患者さんへの説明技法に関しては、苦情でもない限り、評価のされることがほとんどないことから優先順位がどうしても低くなります。(といっても、この実技を直に学べることは非常に意義が大きいのですが、当然その指導医の技量に左右される)

 

となると患者さんへの説明能力は、当の医師のキャラクターと個人的関心に委ねられることになるわけです。


基本的に医者は患者さんに安心してほしいし、喜んでもらいたいと思っているものです。

しかし問題は医者としての医学常識を身につけているか、上司や医療スタッフとうまくやっていけるかどうか、救急処置の知識やテクニック、学会発表や回診の準備、自身の睡眠時間や体力、受持患者の急変など他の切実な優先事項が多すぎるのです。

 

もっと簡単に言うと、患者さんの生死に関わる医者としての業務と、患者さんの満足度を上げる接遇の能力のどちらを優先するかというと、ほぼ前者を選択するのは言うまでもありません。

 

ところが、最近では高齢化社会で、がんにかかる人も、さらに生き延びる人も増え、治療を受ける期間も長期化してきました。


がんによる生死が短期決戦よりも、患者さんや家族の人生や生活にも大きな影響を及ぼす長期戦に主軸が移ってきたわけです。


となると、患者さん自身がよく理解し、考えて納得のいく治療(抗がん剤など苦痛を伴うものであればなおさら)を選択したくなるだけの時間的余裕も出てきます。

 

納得感が得られる十分な説明の要望は非常に高まっているのですが、肝腎の医者側がついていけてないのが現状です。

別の角度から見ると、医者は皆、患者さんの病気を治したいと思って医者になったため、治せるかどうかという点を最優先としてきました。
表現は悪いですが、治せれば文句はないだろうと言う考え方です。


ところが、近年のがん治療の発展は治癒を目指すだけでなく、治らないステージIVであっても、病状の進行を遅らせ、生活を守り、がんとの共存をはかるという大きな戦略転換が進行しています。


生きるか死ぬかというクリアカットな話ではなく、不幸にならないよう治療人生を送ってもらう命題が出現したわけです。

 

こうなってくると医者の治療の腕だけではなく、きつい治療への意欲を保たせるための患者説明技法が非常に重要になってくると思われます。


しかし治療意欲まで守備範囲が広がると、患者さん自身のキャラクターや価値観をも把握し、配慮する必要が出てくるため、もはや技量云々の範囲を超えた医師自身の信念が必要となってきます。

 

正確な診断技術、高度な治療技術の開発と習得といった医者として当然追求すべき命題以上に、患者さんへの説明技術を高めようという医師は多数派ではありません。

例えば、手術は下手だが、患者説明はうまいといわれる医師がいたとしたら、患者さん側としてもどうかなと思うでしょう。

 

もちろん、手術のうまいへたは患者さんには一見わかりづらく(その時の運に左右されることもありますから)、患者さんの不安を上手にとってくれる医師の評判が良いということは往々にしてあります。


逆に患者さんにぶっきらぼうでも、他の医者がまねができない医療技術を持っている医者は、業界内では誰も文句が言えないので、そのまま押し通せるわけです。


ただ、当方が出会った優秀な医師は患者さん説明もうまかったですね。技術だけで医療を押し通せる訳ではないからか、自信と余裕があってサービス精神が旺盛になったのかは不明ですが。


さてこういった医療側の裏の事情を知りたい方への推薦書籍があります。

 

 

 

この本は、最近話題の高額な免疫チェックポイント薬が国を滅ぼすと声を上げて有名になった肺がん専門医で、平成版「白い巨塔」のシナリオを監修したことでも知られています。

医療問題についてあけっぴろげな意見をたびたび披露し、医師の本音を語っているので、医者が何を考えているか、ヒントを得たいときは大変参考になるでしょう。

平凡な書籍名とはうらはらに、内容はかなり刺激的です。
いわゆる医療問題専門家の薄っぺらい(この場合日々患者さんと向き合っているわけではないという意味)意見でなく、難解な用語を並べた業界権威の高説でもない、平易な(遠慮のない)言葉で毎日患者さんと向き合っている現場のジレンマを披露してくれます。


たしかに著者のべらんめえ調の表現には好き嫌いはあると思うし、本人の講演はさらに拍車がかかって、偽悪家ぶっている口調が好きになれないという意見もあります。さらに業界内では変わり者扱いされているらしいのですが(失礼!)、書いている考察は思わずうなってしまう深さがあります。

同業者にとっても面白く読めて、まあ少なくとも退屈とは無縁の書籍ですね。

一部引用すると

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・「患者と仲良くする方法」→「ばあさん(患者)に抱きつけ。じいさんだともっと効果ある。」

・患者からの贈り物は?→その場で開けて食え。

(通常なら文句も出てくるでしょうが、実際の書籍を読んで各自ご判断ください。)

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今の(がん)医療の軋轢は医療側と患者さん側の背景の相互理解不足が大きな原因と思っているので、医療側の内情を赤裸々に語ってくれるのは自分としては助かるかなあ?

 

ちょっと話が脱線しましたが、患者さんの心情に配慮できない医師が増えた?、あるいは目立つようになったのは、医療技術の進歩のおかげで、ある程度生存期間の延長したためとも言えるのではないでしょうか。


もちろん異論もあるでしょう。
しかし、世界的に見ると、厳しい医療事情である発展途上国で、患者説明の問題が取り上げられるのはほとんど見たことがありません。

 

もっと(がん)医療の発展が進めば、いずれはいろんな問題が解決され、人は幸福になるのではないかという期待が一般にはあるかもしれませんが、実際には次から次に問題が生じるものだと当方は考えています。


例えば慢性骨髄性白血病は特効薬の出現で8割ぐらいの患者さんが生き延びられるようになりました。しかし患者さんの新たな悩みは生涯医療保険に加入できないことだという記事を見たことがあります。
また小児がんは昔と違って、かなり高率に治るようになりましたが、今問題になっているのは治療に使用した抗がん剤の後遺症である、成人してからの二次がん発症あるいは結婚や妊孕性に関することです。

 

切りがないのですが、こうなってくると人生哲学の領域に突入してしまいます。
やむを得ないので、患者さんには「当面の問題解決を探るのも大事ですが、かならず次の問題が生じるものです。よってトラブルに対処する基本的心構えも身につけましょう」と当方は受持患者さんに助言しています。

 

患者さん側からすると医療側の責任にしたくなるようなことも多いでしょうが、外部に原因を求めすぎると自分の努力で解決するチャンスが減ることになります。

つまり他人に自分の命運を握られるのがいやであれば、自らできることを探っていきましょうというのがこのブログのスタンスです。

 

------2016年7月新刊紹介--------

孤独を克服するがん治療〜患者と家族のための心の処方箋〜孤独を克服するがん治療〜患者と家族のための心の処方箋〜

1,620円

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がんに悩む友人へのプレゼントとしてもご活用ください。
 

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第11回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)
がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2016年11月26日(日)14時から17時
場所: 東京 新橋駅周辺

開催概要
https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/

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