有用記事の紹介: 不信招く「分かったふり」 | がん治療の虚実

有用記事の紹介: 不信招く「分かったふり」

不信招く「分かったふり」=金沢赤十字病院副院長・西村元一
http://mainichi.jp/articles/20160515/ddm/016/040/050000c

 

FBでシェアした記事ですが、当方でさらに補足を加えたいので 紹介します。

肝転移を伴う進行胃がんの抗がん剤治療と手術を受け、現在も治療中の消化器外科医の方です。

がん患者や医療者が集うグループ「がんとむきあう会」代表

 

まだ連載継続中ですが、「医療する立場」から「受ける立場」へ変わった当事者しかわからない事実がわかります。

医療関係者に是非とも読んでほしい。

 

 

記事より一部引用
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私もがんと分かる前は、患者としての経験がなく、患者の皆さんからいろいろなことを学ぼうと心がけていたつもりです。ところが、それだけでは私の質問に対する回答以上の情報を得ることはできませんでした。さらに、医療者側の興味は治療に関することが中心ですが、患者の皆さんは普段の生活についても知りたいと考えています。それに十分に気付けなかったことが「ずれ」を生んでいたと思います。「ずれ」を少しでも小さくするため、互いを理解し合う、つまり対話する時間が必要だと考えて努力したつもりでしたが、それだけでは越えられない山があるような気もしていました。

 自分自身が患者となってみると、手術後の痛みの状態や抗がん剤治療の副作用など、一つ一つが想像していたものとは異なっていました。
~中略~

 がんの告知を受けた後の精神的な状況について、以前の私は「単純に落ち込むものだろう」と考えていましたが、実際は全く違いました。本当に周りが色を失い、灰色だけの世界のように見えることが分かったのです。やはり「体験してみないと分からない」と思いましたし、患者が自分の心境を説明することも難しく感じました。

 患者の思いを医療者が理解するにはどうすれば良いのでしょうか。少なくとも医療者は「分かったふり」はやめるべきです。簡単に「あなたの気持ちはよく分かります」と言われると、逆に患者には「本当に分かっているのか?」と不信感のようなものが生じます。患者となった私が医療者とやりとりした際、流ちょうに説明されるよりも、「その気持ちまでは分かりましたが、その先はちょっと分かりません」と正直に言ってもらった方が安心できました。患者自身も、元気な医療者が患者の立場を理解することは難しいということを踏まえ、やりとりすることが大切だと思います。
ーーここまで引用

 

医療者も患者会に参加したほうが良いと思う理由が書かれていると感じたが、当方としてはもう一歩踏み込んだ事実を書きたい 。

 

記事の著者はがん治療医として相当なベテランの先生で、患者さんのことをわかっていたつもりが、実際の症状や、精神状況は理解できていなかったと述べている。それどころかがん治療以外の広範な問題には気付いていなかったとショックを受けたとのこと。

 

この証言からわかるように、医療者が患者さんのことをわかってくれているはずだという思い込みは、幻想だと考えてほしい。

 

医療者にも患者さんとの相性や、親身になってくれる人やそうでない人など色々いるが、つまる所、自分が病人(がん患者)になった事のない人間には気付かない点や理解できないことが普通にある。

問題は患者ー医療者がお互いのことを理解できるはずだという期待が裏切られたときに、怒りや不満が出てくることだろう。

 

これはお互い理解できているはずだという前提がある事自体が大きな間違いであり、原因といえる。

普通に診察、面談、説明すればわかるはずと思っているから、誤解を生じさせないための対策は手薄になる。

 

最初から相互理解は非常に難しいものだという認識があれば、自ずから積極的に対策を考えるはず(例えば医師患者誤解学みたいな学問があってもいい)。

しかし今回の記事のように、患者となった医者でないとその重要性に気付かないとなれば、注目されることは難しい。

 

せめて、医療者が患者会に定期的に出席して忌憚のない意見を聞くようになれば、随分違うのだが。

 

NPO法人宮崎がん勉強会で聞く主治医への不満は、当方がその患者さんの主治医ではないため、遠慮なく言ってもらえる。

 

もちろん、主治医側に問題があるケースはある。

しかし、主治医の医療者としての立場や考え方が当方にはわかるので、患者さん側の思い違いで不満が生じていることも少なくない。

 

そういった立場の違いを認識してもらい、どうやったら効率的に主治医とうまくやっていけるかをアドバイスすると、相談した患者さんには喜んでもらえることが多い。

 

一方で、自分たちは患者さん達のことをわかっていなかったなあと感じることも多々あり、患者会は医療者にとっても大変刺激的かつ有益な場だ。

 

この記事の著者が、がん患者や医療者が集うグループ「がんとむきあう会」代表になっていることがその証左ではないだろうか。

 

 

ーーー告示ーーーー

第7回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)

2016年7月16土曜日14時から東京都新橋周辺で開催予定。

がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。

当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。

 

ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。

セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

 

 

開催概要は以下のリンクをご参照ください。

https://sites.google.com/site/miyazakigkkb/