炭水化物摂取とがん④がんは脂肪を利用できない | がん治療の虚実

炭水化物摂取とがん④がんは脂肪を利用できない

前回のまとめを最初に書く。

・がん細胞はブドウ糖を無駄に大量消費して、正常細胞はその後始末をさせられ体力は消耗する。また血糖を下げるインスリンはがん細胞増殖を促進するため、インスリンを大量に消費する糖尿病患者は発がんの危険性が高くなると言うことだった。

さて今回はがん細胞は脂肪をエネルギーとして利用できない事について書く。

細胞内にミトコンドリアというエネルギー代謝システムがあるが、脂肪を効率的にエネルギーに変換するこのミトコンドリアの機能異常のためがん細胞は脂質を利用できないことは前回記載した。

糖質制限食にすると生体内では脂肪をβ酸化という方法でエネルギー源とする。また肝臓で糖新生というシステムで必要なブドウ糖は作り出される。

その際、ケトン体という中間物質が大量にできるのだが、がん細胞はうまく利用できない。
そこで以下のような動物実験がある。

・癌を植え込んだ動物でケトン体食(糖質制限食)を負荷すると癌の悪液質による体重減少が改善した。さらにインスリンを導入すると体重減少は改善したが、腫瘍は50%の増大を示した。これはインスリンの腫瘍増大作用を示している。

・癌を移植した動物では摂取カロリー制限で血糖を低下させるとより生存期間が長くなる。

・少数例の人間を対象とした試験でも高脂肪のケトン体食を行うと末期癌悪液質患者の体重増加につながり、QOL改善につながったという報告がある。

以上、動物実験ではブドウ糖、インスリン、乳酸のレベルは腫瘍増殖と正の相関が有る。
強力な糖質制限は血糖、インスリン、乳酸、IGF1, 脂質の質、ケトン体などの色々な経路から抗腫瘍効果につながることが判明したと言うことだ。

筆者は医学部では飢餓時には肝臓でケトン体が過剰産生され、筋肉なので消費しきれなくなってケトアシドーシスという血液の酸性化の危険性を教え込まれたが、がんが原因でブドウ糖が枯渇した場合は実はあまり問題とならないようだ。

結論としてはがん細胞は上記のミトコンドリア機能障害のためケトン体を利用できない。そこで炭水化物制限食は癌を兵糧攻めするが、人体の正常細胞活動にはあまり支障がないのだろうという理論だ。

つづく...