エビデンスとは(再挑戦)⑦まとめ1 | がん治療の虚実

エビデンスとは(再挑戦)⑦まとめ1

前回までの各エビデンスレベルの話で、信頼性の高いものほど大規模で時間とコストもかかることがわかったと思う。

これはいいかえるとちょっとした思いつきや発想では信頼性の高い治療は確立できない事を指している。
もちろん新薬、先端的新治療に期待したい気持ちはわかるが、時間をかけて評価していくと最終的に確実に利益が見込めて残るものはそれほど多くないのだ。
信頼度の高い治療法は古い治療法が多いので患者さんから見ると陳腐であまり期待できない治療法に見える。
しかし厳密な臨床試験などで着実に科学的根拠を積み上げてきた経緯を考えると、それを無視して一見有望そうな新治療に飛びつくのは結構危険だ。
ましてやその治療がどのようなエビデンスレベルの話かを理解せず、目先の宣伝だけで受けるのだけは避けてほしい。

---------信頼度高い↑---------

レベル 1 システマティック・レビュー/メタアナライシス
複数のランダム化試験を組み合わせた数万人レベルの最も信頼度の高い情報。
欠点は時間がかかることと古い治療法が多い

レベル 2 一つ以上のランダム化比較試験による
新旧二つの治療法の決勝戦ともいえる試験→抗がん剤の認可にも大きく影響する
このレベルであればエビデンスとして十分通用する。比較的新しい治療法の最も注目すべきデータ
欠点は多少時間がかかる。同じレベルの試験でも結果が食い違うことがあり、その解釈は専門家でも意見が分かれる。

レベル 3 非ランダム化比較試験による(前向き試験)
抗がん剤臨床第二相試験がこれに相当する。前向きなので不成功率もわかるし、期待の新薬はここで選別される。
欠点はこのレベルでは元気な患者さんを集めることで実際以上の良い成績を作り出せる。また比較試験でないのでその奏功率などがどれほど意味があるか解釈が難しい。

レベル 4 分析疫学的研究(コホート研究や症例対象研究による後ろ向き研究)
既にあるデータを集めてその傾向を探る。新治療法開発へのヒントを探る意味を持つ。
欠点は研究者によるバイアス(偏り)が入りやすく、意図的な研究成果がよく発表されている。これを安易に信じてはいけない。この後ろ向き研究はレベル3前向き試験の10分の一ぐらいしか価値がないと思っても良いかもしれない。
多少気の利いた民間療法でここまで発表しているものもあるが、意図的な操作が可能なレベルと言うことを忘れてはいけない。

レベル 5 記述研究(症例報告やケースシリーズ)による
たまたま治療が著効した珍しい治療例の紹介や稀少がんの治療例を紹介する意味がある。膵がん、胃がんのstage IVが抗がん剤で治ったという報告も珍しくないが、たまたまという以上の意味はない。
うまく行った患者さんの報告が自分の同じ病気に当てはまるのではという誤解が多いが、無視すべきレベルである。

レベル 6 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
エビデンスとして発表されている治療法は全体のごくわずか。それに当てはまらない事に関しては専門家が推測するしかないのだが、確固たる根拠無しなので最低のレベル。
テレビなどの専門家の発言はこのレベルだから真に受けてはいけない。

---------信頼度低い↓---------