近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論まとめ<前編> | がん治療の虚実

近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論まとめ<前編>

近藤誠氏の文藝春秋記事「抗がん剤は効かない」に対する反論まとめ<前編>

抗がん剤に患者を延命させる力はない
→固形癌では治癒できないことがあっても延命させるデータは蓄積され、現場ではそれが実感できている。

抗がん剤治療の最重要事項である生存曲線の形がおかしいのは人為的操作の可能性が高い。
→生存曲線の形の印象だけで全てを否定するのは近藤誠氏の根拠とする科学的手法を自ら否定するに等しい。

胃がん術後に免疫製剤「クレスチン」の生存率向上の論文は有名医学雑誌に載ったがインチキが暴かれ、見向きもされなくなった。
→この古すぎる事実でその後の胃がん化学療法の進歩を示す数々の医学データを否定するのはおかしい。

抗がん剤治療した患者群の生存期間が延長しているのは抗がん剤の進歩でない。抗がん剤を使わなくても手厚いケアをすると生存期間が延長するという論文があり、抗がん剤使用患者群が数ヶ月生存期間が長いのはそのためではないか
→そもそも患者条件を極力差が出ないようにしている無作為比較試験において治療患者群と無治療患者群の間に手厚いケアの差があるはずがない。

胃がんstage IVに使われるエスワン(商品名ティーエスワン)は最初の成績発表時の報告で完全寛解例のデータに誤りがあったのに訂正されず認可された。こんないい加減な薬剤は認可を取り消すべきだ。
→仮にそうだとしてもその後の報告では今までになかった約3割の奏功率と生存期間の延長が再現性を持って数多く報告されている。

昔と比べるとCTなどの画像診断が発達して肝転移などが10mmからでも発見できるようになった。以前は触診でしかわからず8cmの転移などもあった。同じ著者の同じ治療法が数年で数ヶ月生存期間が延びたのはこれで説明できる。
→この15年CTでの転移検出力向上で左右される小さい転移は臨床試験では逆に登録できないことも少なくなく、症状が出ないことからいきなり大きな肝転移が見つかる患者さんは今でも少なくない。根拠も挙げられてない憶測の意見。また時間経過とともに2次治療の向上で同じ初回治療法でも生存期間延長が得られている。

高額な製薬メーカーに癒着した研究者が行った試験は操作されており利益相反の事実だけを通知すればすべてOKと言うことに間違いがある。これを排除すればこの20年間の新規抗がん剤はほとんど認可取り消しとなるはずだ。
→エビデンス(科学的根拠)レベルは細分化され真実を見極めるための統計学的検証は飛躍的に発展している。利益を追求せざるを得ないメーカーの多少の誘導はあっても医学界全体の相互監視は強化されている。がん化学療法が治癒、延命に寄与しているのは否定できないデータの蓄積がある。

なお乳がん、肺がんの治療薬については筆者の専門外なので敢えて反論していませんが、数多くの疑問点があります。