第274話)「そして父になる」に見る愛着(ネタバレあり) | 幸せのDNA …… 学校では教えてくれない大切なこと

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心理相談員/生きがい・子育て講演講師の みやた あきら です

人はひとつでも居場所があると、生きていけるといわれています
居場所とは、ありのままの自分を受け入れてくれる場所、
「今のままでいいんだよ」と言ってもらえる場所です
あなたの居場所はどこですか?


2013年に、福山雅治 主演の映画『そして父になる』がカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、日本でも大きな反響を呼びました。

(ネタバレあり)
6歳になる一人息子が、生れた時に取り違えられていたことが分かり、苦悩する親子の姿を描いた映画です。まさに「愛着」があるがゆえの、苦悩でした。

赤ちゃんは抱っこしてもらえたときの安心感や、泣いたらすぐに応えてもらえるという体験の積み重ねの中で、基本的な信頼感覚や、自尊感覚(自己肯定感)が育ちます。そのようにして形成された、「特定の人(一番多いのは母親)との心の絆」が「愛着」です。

第271話)抱っこがはぐくむ親子の愛
第272話)愛を満たされない子どもたち
第273話)人見知りと愛着

愛着の形成は、1歳半くらいまでが重要な時期だそうです。そして一旦愛着が形成されると、その絆は、どんなに遠く離れようと、どんなに時間を隔てようとも、半永久的に持続すると言われています。

「生みの親より育ての親」という言葉がありますが、昔の人も、子育ての長い歴史の中で、「愛着」の存在を経験から知っていたのかもしれませんね。


子どもの心の成長にとても大切な「愛着」ですが、大切であればこそ、愛着の対象者との非情の別れは、幼い子どもにとっては、世界が崩壊するに等しい過酷な体験になります。

とはいえ、「死別」「離婚」、さらには「親権停止」などの処分や、あってはならないことですが映画のような「新生児の取り違え」などによる、愛着対象者との離別が発生するのが現実です。


映画「そして父になる」では、両方の親同士が協議し、しばらくの交流期間を設けたあと、生みの親がそれぞれ実子を引き取ることになりました。
両家の交流で、子どもたちは相手の家(生みの親の家)に慣れたように見えました。そして子どもたちは、新しいお母さん、お父さん(生みの親)の下での生活を始めるのですが――なかなかうまくいきません。


「これからは、私たちが本当のお母さん、お父さんだよ」という言葉を受け入れることが、子どもにとってはいかに困難なことか……

今回、「愛着」のことを知れば知るほど、それを思い知らされました。

手をつないで

<お父さんと手をつないで> 撮影 みやたあきら


愛着対象者との離別は、単に「寂しさ」にとどまらず、子どもの心に大きなキズを残します。

「この世界は安心できる場所で、人は、私の助けとなってくれる存在なんだ」という基本的な信頼感覚は、
「この世界は、人を信じれば裏切られ、誰も私を助けてなんかくれないんだ」という、不信感や怒りに変わります。

「私は、助けてもらえる価値のある存在なんだ」という、自尊感覚(自己肯定感)は、
「私は、助けてもらう価値のない存在なんだ」という自己否定感、無価値感、無気力感に変わります。


そんな時に子どもにかける言葉は、「私が本当のお母さんだよ」「これからは自分がお父さんだよ」ではないような気がしました。

言葉があるとすれば、「お前には、お母さんとお父さんが2人いるんだよ」「どちらも本当のお母さん、お父さんなんだよ」ではないでしょうか。

そうして、せめて「お母さんは、君をうらぎったわけじゃない」「お父さんは、きみを嫌いになったわけじゃない」――それを伝えてやることではないでしょうか。


どちらも、本当のお母さん、本当のお父さんだよ。
どちらのお母さんも、お父さんも、お前のことが大好きで、
お前のことを、世界で一番大切に思っているんだよ。

(完)



 ◆ YouTube動画 『大切な人に贈る言葉…君へ』
もし君の心が折れそうなら、私から君へ。もしあなたの愛する人が苦しんでいるなら、あなたから大切な人へ…。大切な人の心に寄り添う言葉を動画にしました。

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◆心に寄り添うメッセージ集~シリーズ「君へ」
生きる希望を探している子どもたちに贈る、私からのメッセージ集です。
でも、子どもたちが一番求めているのは、お母さんやお父さんから、こう言ってもらえることではないでしょうか。


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