さて、ミッチェル408の短期総括 part2 です(part1はこちら
)。
今回は実際に使ってみて感じたことをインプレします。
①フェザーリングしやすいのが立派
このリール、実際にキャスティングしてみると、フェザーリングしやすいのに驚きます。ベールを
返して人差し指を伸ばすと指の腹がすんなりスプールの横に当たります。
今までいろいろなリールを使ってきましたが、これほどフェザーリングしやすいリールを他に
知りません。
地味な話ですが、実釣では大切なことです。フェザーリングをするとしないとではキャスト・コント
ロールの精度に大きな違いが出ていまうし、アンチリバースがoffで大物とやり取りするときでも、
人差し指でローターを押さえることでハンドルから手を離す瞬間を作ることが出来ます。
②握りやすいハンドルノブ
ミッチェルのハンドルノブは右巻き左巻きで形が違います。
握る(摘まむ?)指の形に合わせて湾曲して作っています。慣れてくるとこれがシックリ来るん
ですよ。
何の変哲も無いノブ一つでも工夫があります。これも機能から来ている美しさですね。
③脚線美
ミッチェル408はかなり綺麗な脚を持っています。なぜそんなに綺麗な脚線になったかというと、
最短距離設計
というものがあって、これを応用したからだそうな。
脚の延長線がメインギア軸(ハンドル軸)に交わります(赤のライン)。
足から立ち上がる部分はグリップする手との兼ね合いで垂直ですが(青のライン)、そこからを
最短距離で結んでいます。
これが最短距離設計だそうで、408だけでなく、その他のミッチェルにも導入されています。
ハンドルからドライブギヤに加わった力の一部は脚を伝わってロッドに向きますが、ハンドルの
回転の影響をなるべくロッドに伝えにくくしている訳ですね。こんな昔から人間工学を駆使して
設計されていたということです。
美しい脚線美は狙った美しさではなく、機能を優先したことによる結果だったのです。
機能美=外観美
ですね。
同じ、made in Franceの名車、シトロエン2CVがなぜあんな背高のっぽの姿になったかと
いうと、紳士がシルクハットを被ったままで乗り込むことが出来るように室内高を高くデザインした
結果なのです。機能美が外観美に結びついた典型例ですね。ミッチェルに通じるものがあります。
さて、ここまではミッチェル408の素晴らしい点を挙げてきましたが、ここはちょっとね、
という点もあります。それをご紹介しましょう。
①アンチリバースはなんのため?
ミッチェルの取扱説明書では、アンチリバースは最後に魚をランディングするとだけonに
するように勧めています。
グラスロッドしかない時代ではロッドの反発力が弱く、アンチリバース・システムにかかる
負担も小さかったんでしょうけれど、高弾性カーボンが主流の昨今にあって、その反発力
にミッチェルのアンチリバース・システムが耐えられない状況になっているようです。
だからアンチリバース・システムを保護するために、ランディング時のみonにするように
勧めたのだと思います。
でも心配ご無用。アンチリバースのレバーはハンドルを持ったままでも操作できる位置に
設置されています。ファイト中でもアンチリバースonは簡単にできますよ。
最近のリールではアンチリバースをonにして釣りするのが常識になっていますので、初めは
戸惑うと思いますよ。慣れてしまえばなんてことはないんですが、万人受けはしないですね。
小生が好きな筏かかり釣りのリールのほとんどはドラグさえ付いてないので、魚の突進は
スプールフリーの状態でフェザーリングやサミングで制御するしかありません。それを考え
れば、ドラグが付いているだけ、ミッチェルの方が扱いやすいですよ。
②ベールを手で返してはいけない?
インスプールの宿命でしょうか、ベールはリーリングによって解除する必要があります。手で
無理矢理戻すと、ベール自体に歪みが出て、トラブルの原因になります。
これを“熊の手"のアングラーと表する人もいますが、それは扱い方に慣れていないばかりに
ついついやってしまったか、無知が故の事故みたいなものですね(笑)
これも慣れですが、現代のリールと交ぜて使った場合、このうっかり事故が増えてしまうのも
事実です。
しかし、これは覚悟の上で付き合うしかないですよ。こちらがリールに歩み寄る必要があると
いう訳です。何せ、半世紀前のリールですよ。いたわりの心で接してください。
③糸ヨレが出やすい
確かに最新リールに比べて糸ヨレは出やすいですよ。1970年代にベールにラインローラーが
付きましたが、ベアリングまで入ったラインローラーを持つ昨今のリールと比べるのは酷って
ものです。
1960年代製 1970年代製
フェザーリングの実施やリーリング時に余分なスラグを作らない等のアングラーの努力も
必要になるのも仕方ないですよ。それが分かって使うべきリールです。
①~③のちょっとねポイントはあるももの、アングラー側が気をつければ良いことです。
言い換えれば、ミッチェルを使うということはミッチェルのことを勉強して、それに合わせると
いうことです。その上でゲットした1尾は何よりも大きな思い出になるはず。
それがガルシア氏の願いでもありました。
それが故に取扱説明書にはロッドの持ち方からキャストやフェザーリングの方法、はたまた
ラインの結び方まで記載されていたのです。
何の努力もなく、何の知識も無く、オートマチックな高性能を享受したいのであれば、最新型の
高級リールを使えば済むことです。
ミッチェルは使うアングラーを選びます。それでも苦心して使ってこそ、ミッチェルの良さが
活かされるはずです。
どうですか?ミッチェルでお洒落に釣ってみませんか?
フランスの貴婦人と優雅な釣りも良いものですよ。