17歳の夜、夢を見た
私はとても長生きして老婆になっていた
妹も従兄弟たちも友人もみんな逝ってしまって
終生独身だった私は
小高い山の雑木林に囲まれた場所に
小さな家を建てて一人住んでいた
そこでベートーベンのピアノソナタを聴きながら
同じ本をくり返し読み
天窓から流れる雲を数えた

陽は登り木々は茂り
陽は落ち雨が屋根を叩き
誰に語りかけることも
語りかけられることもなく
残り少ない命を消化する
月は満ち土が渇き
月は欠け風が家をゆらす

ある夜、私は椅子に腰掛けたまま息を引き取る
とても寛いでひっそりと
誰にも気づかれることのないままに
家はやがて朽ち落葉に埋もれ腐葉土となっていく


それは決して孤独でもなく悲しくもない死だった

夭逝することを期待していた私にとって
長生きして老婆になっていることが
目覚めた瞬間には
残念でたまらない夢だった
だけれど
この夢はなんどか繰り返し現れて
私の心を魅了しつづけていた
意に反して長く生きながらえてしまったときには
このような最期も悪くはない

このスモールハウスを観たとき
息をのんだ
私の夢に出てきた家そのものだった
違うのはロフト仕様でなく二階建てで
梯子ではなく階段であることくらい。
そして、もう少しだけリビングが広ければ
そっくり、といっていいくらいなのだ。




完全なるオフグリッドのこのスモールハウス
ガスも電気も使わない生活
立地といい建物の素材一つ一つをみてると
この女性は化学物質過敏症、電磁波過敏症なのかもしれない
この周辺の広大な土地を所有されているのかな・・・
美しい住まいと暮らし
憧れのスモールハウス

もう少し早く出会いたかった