武術・武道の世界では正中線、スポーツの世界では軸、体軸、センターなどと呼ばれているものがある。センターとはその学術的総称である。
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図:双葉山
センターの定義
狭義のセンター「重力線とその延長線上に沿って形成された直線状の身体意識である」
広義のセンター「人間の身体の垂直方向に主に直線上にできた身体意識」
センターは重力線に沿って形成される身体意識であるから、センターが形成されていると、たえず自分の重力線を意識できる、つまり、自分の重心を感知できる。だからセンターのある人はよりよい動きがきでるのである。
重力線に沿って身体意識を形成するには、まず重力を感じる必要があり、それには、できる限り脱力していなければらない。センターの形成と脱力は密接に関係しており、脱力の出来不出来は、重力方向の感知の正否に比例する。
脱力とは、それぞれの状況において可能なかぎり最小の筋肉に、可能なかぎり最小の筋出力を行わせている状態のことである。
バイオメカニクスでは、優れた身体運動とは、全身のあらゆる筋肉を様々な時間局面に従って,適切な配分で緊張・弛緩させることであるとされる。
センターの位置
センターは人ができるだけ脱力して足を揃えて立ったとき、下は、地球の中心から始まって、ウナ~内踝の間、脛骨の間、両膝の裏側の空間、会陰、背骨の前寄りや中、百会を抜けて、天の中心へ伸びる。
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図:センター
広義のセンターと基本用語
垂軸:狭義のセンター
体軸:背骨に沿って形成された身体意識
垂体一致:静止立位において、体軸と垂軸がほぼ重なり合い、あたかも一本の軸のように存在している状態
垂体軸:垂体一致し、あたかも一本のように存在している軸
垂体分化:身体の前傾などで斜めの体軸と垂軸が形成された状態
曲軸:背骨の弯曲に沿う体軸(直立や加速状態では直体軸と呼ぶ)
潜体軸:曲軸と同時に形成される、体幹部の中央あたりに斜めにまっすぎに通る身体意識
垂体二重分化:体軸に潜在的に眠っていた曲軸と潜体軸を分化させること
力重線:斜面での回旋運動中などに働く、遠心力・向心力と重力との間に生まれた合力が働く方向を示す線
斜軸:力重線に沿って形成される身体意識(振軸とも呼ぶ)
垂体軸はセンターのあり方の基本形であるが、センターは変動する構造であり、その機能はダイナミックでエレガントなものである。背骨の弯曲が伴う姿勢のとき、垂軸と曲軸と潜体軸の3つが形成されている場合にセンターと呼び、身体が斜めになる運動においては、垂軸と体軸と斜軸がある場合にセンターがあるという。それらが、潜在意識下で自在にコントロールされ、垂体二重分化なされるとき、優れた動きがみられる。すなわち、優れた動きには、必ずそれを支える身体意識のメカニズムが存在するのである。
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図:垂体軸
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図:垂体分化 図:垂体二重分化
センターの位置② 側軸
側軸:前額面から見たときに中央軸を除いた6本の縦に通る軸の総称
それぞれ、中央軸から外側に向かって1、2、3と数える。
1は背骨の両脇に沿い、2は半身の中心を縦に貫き、3は肩関節の位置を縦に貫く。
側軸は左右半身をそれぞれの側軸を中心に相対的独立に使うことが可能となる。
部分身体:身体から分かれたパーツ
部分中心化現象:各々の部分身体が各々の中心となる身体意識に導かれて働く現象
(右or左)側体:右半身と左半身に部分中心化現象が成立したときの半身のそれぞれの呼び方
側軸があると左右の各々側体を別々な身体のように使い分けたり、両側体のずれ運動を起こすことが可能となる。側軸が働いた波動運動では、左右の側体が互いにずれ運動を起こし、脚に波及する。そのため、脚の波動運動の周期もずれ出し、同時にまったく逆のことも起きる。結果として、側体と両脚が4つの生き物のように動き出すような運動状態となる。これを、高い次元から統合するのがセンターである。
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図:側軸
センターの位置③ 前後軸
前後軸:矢状面からみたときに縦に通る5本の軸の総称。それぞれ、1軸、2軸、3軸、4軸と呼ぶ。
センターが通っている人の中でもそれぞれの軸の強さは異なり、また複数の前後軸を持つ人もいる。3軸の位置は狭義のセンターがとっていた位置と同じ位置である、「狭義のセンター=3軸の位置に形成された垂体軸」であるといえる。3軸は数あるセンターの中でももっとも重要とされる。
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図:前後軸
3軸の重要性と機能
・背骨の活動性を高め、背骨の働きが活性化することで、脊椎動物である人間の能力を高める
・身体意識と全身を統一的にコントロールする能力が飛躍的に高まる
脊椎動物としての人間の基本的構造は魚類の自体に完成していると考えられ、人間が脊椎動物としての本来の能力を発揮するには、背骨中心の運動をすることが必要である。すなわち、背骨の前や中を通る3軸に身体意識が形成されれば、本来の能力が発現されるというわけである。また、背骨は統一的な連続体として体幹部に存在する唯一のものである。つまり、背骨は全身を統一的に支配する性質が最も強い器官であるといえる。
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天才と称される優れたパフォーマンスを行う人には、優れた身体意識=極意があった。身体意識の世界は何とも奥深いですが、難解で、習得も容易でないと感じます。まずは大前提である狭義のセンターを身につける鍛錬を続けていきたいと思います。
引用 センター・体軸・正中線
センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます/ベースボールマガジン社
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