ホームセンターに割り箸を探しに行った。
結構大きめのホームセンターで、僕は割り箸の置いてある場所を見つけられずにいた。
すると後ろから、
『お客様、何かお探しですか?』
と、とても丁寧な口調で店員が声をかけてくれた。
色白で少しふっくらとした男性店員、両頬はほんのりピンク色で、親に大事に育てられてきたという印象だ。
僕が割り箸を探している事を伝えると、また笑顔を作り、僕を割り箸コーナーまで導いてくれた。
僕が「ありがとうございます。」とお礼を伝えると、その店員は深々とお辞儀をした後、
『ごゆっくりお楽しみ下さいませ。』
そう言ってレジの方に向かい歩いて行った…。
ごゆっくりお楽しみ下さいませ……
割り箸を…?
その言葉を頭のなかで何度か繰り返してみる、最初は丁寧さが度を越しただけだと思ったがそうじゃない。
きっとあの店員は、僕が割り箸のフォルムや感触に特異な興奮を覚える、異常性欲者だと思っているのだ。
ふざけやがって、あのおたふく店員がっ!!
そんな怒りが一瞬込み上げた。
だかよく考えれば、あの店員はそんな変態な僕を拒絶しなかったのだ。
本来の使用目的を忘れ、自分の欲求のみを満たそうとする僕を笑顔で受け入れ、客として扱ったのだ。
それならば、僕もそんな彼に答えなければならない。
一番安くて、数の多い商品を選ぶ筈だったが、僕は様々な割り箸を手に取り眺め始めた。
材質や硬さ、重さなどを入念にチェックして、不気味な笑顔を浮かべてみせる。
そして割り箸コーナーに10分ほど居座った後、満足そうな表情を浮かべ何も買わずに店を出るのだ。
ヤベーよ!クソ変態だよ、自分から場所聞いといて何も買わずに帰っちゃったよ!
そんな感じだろう。
そして帰り100均に寄り、割り箸を買って帰る。
やっぱ割り箸は100均で買うのが一番です、散々チェックした僕が言うので間違いありません。