友人が語っていました
93歳の父が倒れ、病院に運ばれた
薄れゆく意識の中、
絞り出した言葉は「逃げろ」「伏せろ」
「助けてくれ」
”戦争の情景だ”───友人は愕然としたと言う
そういえば他界した僕の父親も
寝言で同じようなことを言っていたことを思い出す
戦争に赴いた友人の父は、
それを一度も話そうとしなかったらしい
だが、70年を超える歳月も、
忌まわしい記憶を消すには至らなかった
治療が奏功し、快方に向かった
父は寝言で「やらなきゃ分からないぞ」
「まず3カ月やってみろ」
今度は夢の中で、人の幸福を願っていた
自らの人生を追体験するような出来事だった
魂の奥底に刻まれたものが、
時を経て奔流のように現れ、
自らを突き動かすことがある
「人の行うことは、
その人に元来そなわっていることだ」
人生模様は様々です
が、転機の度に、立ち返る、
魂の原点をたもち得たことに
勝る幸福はないと思う