後藤充男です。

 

先日、日商簿記1級本試験がありましたが、出来はいかがですか?

 

完璧に受かったと手ごたえを感じ、もう受験はしないという場合を除き、受験生全員にやって欲しいことがあります。

 

それは、自分で模範解説(つまり、下書き)を作ってみるということです

 

これをやると、グッと実力が上がりますし、何より、本試験直後にしか本当の意味で体験できない復習です。

 

よって、本試験直後の、現時点でやるのが最も効果があるでしょう。

 

以下、理由も含めて、具体的なやり方を示します。

 

すなわち、現時点では、各専門学校等から模範解答は公表されていますので、模範「解答」は手に入ると思います。

 

しかし、まだ本試験から十分な時間が経っていませんから、今回の本試験を収録した過去問が発売されていない以上、詳しい模範「解説」は存在していません。

 

よって、本試験で正解できたところは良いとして、正解できなかったところは未だにわからないままです。

 

そして、ここが一番重要なのですが、講師陣の模範「解説」が発売されるまで待つのではなく、テキストなり、レジメなりをみながら(それでもわからないところは無視しておいても良いですが)、まずは自分で模範「解説」を作るのです。

 

この自分で模範解説を作ること自体が、ものすごく勉強になっており、今後のあなたの簿記能力および独学力を飛躍的に高めることになるのです。

 

その理由は、次の通りです。

 

すなわち、簿記の問題において、点数を得る(つまり合格する)ためには、次の段階を経ます。

 

①知識の習得⇒②下書きの作成⇒③点数を取る

 

つまり、①知識の習得は、テキストでの基本学習です。②下書きの作成は、問題の解き方をマスターすることです。③点数を取るは、文字通り、得点を取るということです。

 

ここで、簿記の問題というのは、理解できても(=①知識の習得が十分でも)、ほとんど点数を取れない(=③点数が取れない)タイプの学問です。

 

もう少し具体的にいうと、講義を聴いたり、テキストの基本問題をマスターしても、過去問(つまり本試験)は解けないということです。

 

そこで、①知識の習得から③点数を取るまでの間に、②下書きを作るという段階が必要になるのです。

 

この下書きを作るという作業、脳の観点からいうと、脳に思い描いているモヤモヤしている部分を、紙に書くことで鮮明化していくという効果があります。

 

よく下書きを書かないで解こうとして、混乱してしまい、うまく解けないという人がいますが、それは、脳のモヤモヤを、そのモヤモヤしているまま解こうとするために、結果的にすっちゃかめっちゃかになるのです。

 

しかし、この下書きを作るという部分は、テキストにはあまり書いてないし、そもそも書いてあってもすでにパソコン処理されてしまっています。また、手書き処理をしてあっても、動きがないので、知識がどのように下書きに反映されて、結果的に点数になっていくプロセスが分かりにくいです。

 

一番良いのは、講師がそばにいて、講師が下書きを書くプロセスをみながら、理解しながら真似することです。

 

とはいえ、なかなかそれはできませんし、特に独学ならばとても難しいことでしょう。

 

そのため、現実的には、模範解説が発売されたときに、下書きをみるということになりますが、これではあまりにももったいないです。

 

つまり、簿記の学習において、最も勉強になっているのは、②下書きを作るという作業をやっているときなのです

 

何しろ、前述のように、下書きを作る作業は、脳にモヤモヤと浮かんでいるものを鮮明にする作業ですから、これほどリアルかつ直接的に脳を鍛えられるチャンスはないです。

 

ここの作業を自力でやらないと、いつまでも応用力や思考力が身につかず、「同じような問題は解けるが、捻られるとできない」という状態になり、60点前後までは取れるけど、合格の70点を超えることができなくなります。

 

そして、この作業をやると分かるのですが、自分がなぜ間違ったかが分かってきます。

 

例えば、第147回日商簿記1級の工業簿記を例にすると、本問ができなかった人は、なぜできなかったのでしょうか?

 

問題自体は、落ち着いて解きなおしてみると、そんなにびっくりするほど難しい問題ではなかったはずです。2級の延長くらいでしょうか。

 

しかし、できなかった。

 

その理由として考えられるのは、計算量が多そうだと焦ってしまい、問題文を一通り全部読まず、例えば、いきなりある項目(例えば材料費)の部分だけ計算を始めてしまい、あとでそこに関連する項目(例えば、1個あたり2kgの材料を使用など)がでてきたときに慌てて修正をしたりすることで混乱し、普段ならできたところもできなくなってしまったからではないでしょうか

 

そういうできなかった原因なども、下書きを作成していくプロセスの中で確認ができ、次回はそうしないで問題文を一通り全部読んでから解き始めると教訓にすればよいわけです。

 

また、下書きを作るときは、テキストやレジメなど、自分が勉強してきた教材の何をみても良いわけです。

 

すると、普段勉強したいたときに、あまり意識しなかったことが意識できるようになります。

 

つまり、本試験問題で分からない部分が出てきたということは、その部分のテキストなりレジメなりの理解が不十分だったということです

 

したがって、自分が分かったつもりになっていた部分を発見できるし、何より、「この論点は、本試験ではこのような角度で問われるんだ」という切り口を発見することもでき、その論点は、本当に意味であなたの血肉になっていきます。

 

もちろん、本試験では100点ではなく、70点を取ればよいわけで、全ての問題が完璧にできる必要はありません。

 

しかし、本試験というのは、ある論点について、本質的な理解を確認するものです

 

たとえば、第147回日商簿記1級の原価計算では、連産品計算における追加加工の是非が問われましたが、その本質は、「企業の目標を実現するため、将来採りうる代替的コースの中から、最善策を選択すること」にあります。

 

意思決定会計において、何が差額原価になるのかがとても重要で、解くべき意思決定問題が異なると、考慮すべき代替案が異なるため、同じ原価要素であっても、差額原価になったり、差額原価にならなかったりするのです。

 

仮に、解くべき問題が生産量の決定にあるとして、製品を1,000個生産すべきか、1,400個生産すべきか、それぞれ代替案になります。

 

このとき、それぞれの代替案に応じて使用する材料の数量も異なるので、材料費自体が差額原価となります。

 

では、①製品を1,000個生産することが決まっており、それに相当する材料が特定され、その特定材料が1,000個必要だとわかっているときは、この材料1,000個分の材料費は差額原価になるでしょうか?

 

また、②この1,000個の製品の製造方法が複数あり、そのうちどれを選ぶかという問題が解くべき問題だった場合は、この材料1,000個分の材料費は差額原価になるでしょうか?

 

①および②のいずれも、この1,000個分の材料費は埋没原価であって、差額原価になりません(BY 管理会計 中央経済社 岡本清、廣本敏郎、尾畑裕、挽文子共著)。

 

このように、何を差額原価にして、何を埋没原価にするかは、問題によって変わるわけです。

 

これを普段から意識せずに勉強すると、連産品の計算は、「追加加工するか否か」ばかりテキスト等に収録されていますので、第147回日商簿記1級原価計算の第1問の問5のような、そもそも追加加工することは前提で、その製造方法を「自製か外注か」といった場合などはできなくなってしまうわけです。

 

しかし、意思決定会計の下書きは同じ形が多いですし、少しの考え方の捻りを、過去問同士を比較検討することで、論点の本質がみえてきます

 

私の経験測からいうと、過去問を何度も解いて比較検討していると、そのうち過去問の実施回数とその下書が頭に浮かぶようになります。

 

たとえば、第122回原価計算は設備投資だったな。第129回原価計算も設備投資だったな。第122回は取替投資と拡張投資だ。第129回は拡張投資。拡張投資のところは同じか。とすれば、何が違う?ん?第122回は現有設備の減価償却費を計算しているけど、第129回は現有設備の減価償却費が計算できないぞ。それでも解答できる。なぜだ?そうか!第129回は拡張投資だから、現有設備を使うことは前提である以上、別に現有設備の減価償却費を計算しなくても良いんだ!つまり、第122回の減価償却費はタックスシールドを計算するための差額キャッシュフローになるのに対して、第129回の減価償却費は計算できなくもいいんだ!

 

こういうことが、通勤や通学のときに頭に浮かぶようになったらシメタものです。

 

この状態になるまで過去問をやり倒したら、きっとあなたは日商簿記1級に受かるでしょう。しかも、やっとこさではなく、軽くです。

 

過去問は本です。過去問を解く(=読む)ということは、作問者との対話をすることなんです。

 

そのため、あなたの頭に過去問の実施回数(これは繰り返してきたという証拠)と下書きが自然に浮かぶ(これは本質が理解できたということ)ということが、合格者たる資質をもった、合格にふさわしい人になったということなのです。

 

あなたは、日商簿記1級合格者にふさわしい人ですか?

 
ぜひ、本試験をしっかりと分析して、一歩一歩、日商簿記1級合格者にふさわしい人になってください。
 
今回、落ちるということは、合格者としてふさわしくなかったということ
 
逆に、受かるということは、合格者としてふさわしい人になったということ
 
それ以下でも、それ以上でもありません。
 
日商簿記1級は、マークシートではないので、まぐれ当たりは一切ありません。
 
また、ゴルフや将棋のようにハンデはありません。完全な実力世界です。
 
あなたが日商簿記1級合格者にふさわしくなれば、そのときに受かります。
 
そのための一歩が、本試験の下書研究です。
 
さあ、日商簿記1級合格者にふさわしいあなたになるため、第147回日商簿記1級の模範「解説」(=下書き)を作成してみてくださいね。
 
ふぁいと!
 
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