08.09.26消えたフェルメールを探して

満 足 度:★★★★★★★★
   (★×10=満点)
 
監  督:レベッカ・ドレイファス
キャスト:ハロルド・スミス、他










■内容■

 1990年、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館所蔵の
レンブラント、フェルメールなど美術品13点が盗まれた。
絵画探偵として著名なハロルド・スミスは、
FBIも注目する美術品泥棒をはじめ要注意人物に接触。
開設したホットラインにも情報が寄せられる。

 そんなとき、ロンドンから
アイルランドのIRAと盗まれたフェルメール「合奏」の関係を
示唆する密告が入り…。
                      (シネマトゥデイ より)


■感想■

 今日の試写会場は、
現在フェルメール展が開かれている東京都美術館でした。

 43歳という短い生涯であったため35作品しかない希少価値から、
フェルメール作品は世界で最も高価といわれているそうで5度も盗難に!
そのうち、
ボストンにあるガードナー美術館から盗まれた「合奏」は今も戻らず。。。
美術館には現在も、空の額がかけられているそうな。

 というのは、この美術館に展示してあるのは
創設者であるイザベラ・スチュワート・ガードナーの
個人的なコレクションだそうで、
「どの作品も動かしたり置き換えたりしてはならない」
という遺言があるらしいんです。
後継者はそれを守り、合奏を含めて強奪された美術品13点の
帰りを待っているとのことでした。
フェルメールの絵画に加え、
ガードナー婦人の生き方や美術品を愛する心も魅力的です。

 本作は、その盗難品を探し、
真相を突き止めようとした2年間のドキュメントで、
ガードナー婦人が買い付けてコレクションに加えていく場面と、
監督が依頼した探偵のスミス氏の絵画捜索が交互に映ります。
フェルメールの魅力が語られながら、
コレクションへの思い入れと
捜査への期待が比例して大きくなっていく作りなので
観進めるほど、「合奏」の行方が気になりました。

 スミス氏は、チラシに映っている眼帯の男性で、
美術品等の盗難を専門とし、その筋にも顔が利く探偵さんです。
(厳密には美術品の損害保険査定業務や
 セキュリティー・コンサルタントをしています。)
ガードナー婦人の人間性と遺言、稀少なフェルメール作品、
お金のかかる協力者などなど、この雰囲気から、
どことなくいつもの映画にあるエンターテイメント性を
無意識に求めていた私は
怪盗ルパンのような強奪劇と痛快な解決を想像していたのですが、
実際の捜査は一進一退。。。。
やはり、現実は厳しいものでした。

 しかし、協力者や関係者が「政治がらみ」と口々に訴え
元FBI捜査官のエリス氏がこの件を一切口にしなくなった辺りからは
フィクションにはない緊張感がありました。
スミス氏は皮膚ガンに侵されていますが、
それは若い頃の軍の被験者的な経験が原因だそうです。
大きな組織に翻弄され、病気を抱えるスミス氏は
同じく大きな力によって人々の前から消えてしまった「合奏」の捜索に
どこか特別な思いを持っていたのでは。。。と思ったのですが、
私の考えすぎかしら。。。

 誰もハッキリしたことは言わないままなので
尚更、見えない圧力を感じたのですが、
政治がらみで絵画が盗まれるなんて
ガードナー婦人は悲しんでいるのではと思います。
私も、自分の目で一つでも多くのフェルメールを観たいと思っているので
一日でも早くガードナー美術館の額に戻ることを願っています。


■チーチイン■

 上映後にレベッカ・ドレイファス監督の
舞台挨拶&ティーチインがありました。
ドレイファス監督は、フェルメール作品に魅了され、
今まで14作品鑑賞されたそうです。

司会者「フェルメールを撮ろうと思ったキッカケは?」

監督 「10代の時N.Y.に住んでいて、
    知人から“ボストンに魔法のような不思議な美術館がある”と聞き
    その時、その美しさ(美術館&フェルメール)に魅せられて!」


司会者「スミス氏については?」

監督 「知人を通じて知り合い、皮膚ガンだということは知っていましが、
    実際に会った時、どうしたらよいのかわからず・・・。
    でもとてもユーモアのある方で、
    彼の言ってくれたジョークで、場が和みました。」


観客 「パリでの買い付けのシーンはどうやって?」

監督 「イザベルの伝記があったので
    そこに記してあったところへ問合せし、
    パリへ行って当時の資料や書類を見せてもらって
    やりとりを調べました。」


観客 「口をつぐむ人もいたようですが、監督は本作を撮影することで
    危ない目に遭ったりしたのですか?」


監督 「居心地の良くない思いはしていました。
    しかし、エリス氏(FBI捜査官)の言葉で踏み込んではいけない
    場所なんだと認識していたので、
    危ない目には遭いませんでした。」


観客 「監督の個人的な感覚、印象として、
    フェルメールは今、どこにあると思いますか?」


監督 「盗んだ人とは別の人が持っていると思います。
    今は、当時(撮影)の権力者はもう同じポジションにいないので、
    フェルメールが姿を現す可能性があると思います。」


司会者 「観客へ一言メッセージをお願いします。」

監督 「本作を観てくれてありがとう。楽しんでいただけたら嬉しいし、
    フェルメールを愛してくれる人が集まってくれたら嬉しいです。」



との挨拶で締めくくり、
今、東京都美術館に展示してある中で2作品は未鑑のようで
この後、是非鑑賞したいとおっしゃっていました。