TIFF にて鑑賞■コンペティション 部門■満 足 度:★★★★★★★★★☆
(★×10=満点)
監 督:カメン・カレフ
キャスト:フリスト・フリストフ
オヴァネス・ドゥロシャン
サーデット・ウシュル・アクソイ、他
■内容■
音信不通だったふたりの兄弟が再会を果たすが、
人種差別をめぐってそれぞれ正反対の立場にあった。
最近ネオナチ集団に入ったばかりの弟ゲオルギは暴動に参加、
一方兄イツォはトルコ人家族を救出する。
その後、大きな集会へ誘われたゲオルギは、活動への関わりに疑問を抱き始める。
またイツォは、助けた美しいトルコ人少女が、
自分の孤独な人生を終わらせてくれる存在になるのではないかと幻想を抱いている。
兄弟としてもう一度やり直すことで、
彼らは人生における希望を見出すことになるのだろうか。
(TIFFオフィシャルサイト作品紹介 より)
■感想■
ブルガリア映画です。
ブルガリアといってパッと頭に浮かぶのは、やっぱりヨーグルト 笑!
単純すぎる発想ですが(汗)、
牛がのんびりと草原に放たれていて
そこに居る人々もやっぱりのんびりとしていて。。。
な~んて思っていました。
ところが、ところが、人種差別はあるは、暴動はあるはで
ブルガリアの、のんびり爽やかイメージが一気に吹っ飛びましたよ~。
主役の兄弟、兄・イツォ役のフリスト・フリストフは監督の幼馴染で、
フリスト自身の体験をそのまま映画にしたようなんです。
フィクションですけどね!
そのせいか、自分の歩む道を見つけられないイツォの苦悩が
とてもリアルでした。
「自分で立った後、立ち続けるための支えがない」
というイツォのセリフ。 まさに言葉通り。
誰かにどうにかしてくれと言っているわけではなく、
ちょっとだけ心の支えになってほしいんですよね~。
麻薬に浸かり、やりたいこととは別の仕事をしている毎日。
ハッキリとした根拠もないままトルコ人女性へ依存する気持ちも、
理解できました。
一方、弟は反抗期状態。
母代わりの女性に悪態をつき、兄とはちょっと違った路線で
自分の生きる道を探しています。
“弟”なので、人生の先輩である“兄”という存在がいることが
イツォよりも心のよりどころがあるような気がしました。
孤独度はイツォのほうが高そう。。。
先が見えない不安って誰にでもあると思うので
この兄弟を見ていると、潜在意識が煽られる感じで
漠然と不安になってくるんですが、
希望が見え隠れしたラストとなっていたので
若干、救われた気持ちになりました。
好き嫌いが別れそうな作品ですが、
ゴンザレス審査委員長の好みのような気がします。。。
「ストーリーズ」に続き、グランプリ候補かな。
■Q&A■

上映後、
カメン・カレフ監督と
プロデューサー&編集の
ステファン・ピリョフ氏
によるQ&Aがありました。
Q.「主人公役のフリストさんにインスパイアされ本作を作ったとのことですが
お2人の関係は?」
監督「子供の頃からの友達です!
同じ町で育ちました。
本作では彼の生き方、孤独が描かれています。」
Q.「本作を作りたいと
言ったときの
フリストさんの反応は?
また、完成した作品は
ご覧になられた
のでしょうか、
そうだとしたら
その反応は?」
監督「彼は完成した映画は観ていません。
撮影最終日の前に亡くなりました。
“イツォ”はフリストそのもので、自分を死にいたらしめ、葛藤し、
まさに描かれている通りです。
今、こんなに大きなスクリーンで上映されていると彼が知ったらどう思うか
僕も今考えています。
出演をお願いしたときは、全く躊躇無く受け入れてくれ、
何度も脚本を読み返していました。
メイキングで撮った中に日記を指しているシーンがあるが
15年ほど前に書いていた本当の日記です。」
司会「フリストさんは俳優さんですか?」
監督「彼も他の方々もプロの俳優ではないんです。
お願いして出てもらいました。
恋人役の女性も、本当の元カノです。
作品には悪役、ネオナチも登場し、
トルコ人一家は襲われブルガリアを離れましたが、
実際のブルガリアは、それほど危険ではありませんよ~。
琴欧洲が皆さんを守ってくれますから、遊びに来てくださいね 笑!」
Q.「何故、あえてフィクションにしたのですか?
また、彼の最後は?」
監督「フリストはドラッグで亡くなりました。
いくつかのコメントを後から付け加えたのでフィクションとなっていますが、
生き方、ものの見方、苦しみはまさにあのままです。
ある中になった話は、彼の言葉そのものです。」
Q.「タイトルをつけた経緯は?」
監督「特に理由はありませんが、ストーリー構成は割と早々に決まりました。
最初は4部構成でしたが
フリストをメインにしようと変更になりました。
僕たちの気宇には東欧なので“イースタン”です。」
Q. 「恋人だった女性は、
フリストをとても愛していたようですが
あの後どうなったのですか?」
監 督「彼女は一人で生きていけると自分で気付き、成長しました。
実生活でも、フリストの恋人だった女性です。」
司 会「あっ! そうだったんですか。
ということは、あのキックは本物。。。。?」
(劇中で、別れたい素振りのフリストに、
彼女が一発食らわせます 笑)
ピリョフ「映画では“彼女と暮らすのは大変”とイツォが言いますが、
“彼と暮らすのは大変”というのが現実だったんです 笑。
Q. 「トルコとブルガリアは複雑な関係でしたが
同じような出会いがあったら実際は暖かく認めてくれるのですか?」
監 督「どれだけその人がオープンかということだと思います。」
ピリョフ「僕の姉が
トルコ人と
結婚しました。
少しずつ
変わってはきているが、
まだ偏見は
残っていますね。」
Q.「ビールを飲んでいた友人のフリストへの眼差しが印象的でした。
あの方と監督のコネクションは?」
監督「あのシーンは、
僕がパリに住んでいてブルガリアに帰省した時の
そのままのシーンなんです。
あの晩、フリストと色々な話をしました。 カフェとテーブルも同じです。
あの友人は私自身のことなんです。
“色々と変えていこう!”と熱く語ったんです。」
残念ながらフリストは亡くなってしまったけど、
天国で映画の完成を喜んでいると思います。
同じ芸術家として、監督はフリストの苦悩が理解できたので
この映画が撮れたのかもしれませんね。