08.09.17トウキョウソナタ

満 足 度:★★★★★★★★
   (★×10=満点)
 
監  督:黒沢清
キャスト:香川照之
      小泉今日子
      小柳友
      井之脇海
      井川遥
      津田寛治
      児嶋一哉
      役所広司、他



■内容■

 仕事に没頭する毎日を送っている
平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川照之)は、
ある日突然、長年勤め上げた会社からリストラを宣告されてしまう。

 一方、世の中に対して懐疑的な心を持っている長男・貴(小柳友)は
家族から距離を置くようになり、
一家のまとめ役だったはずの妻・恵(小泉今日子)にも
異変が起き始めていた。
                       (シネマトゥデイ より)


■舞台挨拶■

 今日の試写は「ゲスト」が登場することだけ試写状に記載されていました。
こういう場合、キャスト以外の芸能人が来ることも多いので
深く考えていなかったんですが、
なんと、思いもしなかった豪華メンバーだったのよ~
黒澤清監督、香川照之、小泉今日子、小柳友、
井之脇海、井川遥、児嶋一哉(アンジャッシュ)
の7人です。
彼等の登場に会場からは割れんばかりの拍手ぱちぱち
こんなに凄い拍手、試写人生で初めてですビックリマーク
私も生のキョンキョンに大興奮でしたっ。

司会者「一言ずつご挨拶をお願いします」

監督 「これだけのキャストがここに集まってくれたことが嬉しいです。」

香川 「黒澤監督への憧れがあって、ご一緒したいと思っていました。
    10年ぶりに使ってもらいこうやって映画が完成し、
    今日を迎えられたことに感激しています。」


小泉 「撮影中から素晴らしいものができると予感があり、
    それは的中しました。
    観て、良かったと思ったら、周りのお友達にも薦めてください。」


小柳 「初めて役者の楽しみを教えてもらい、
    役者という職業に夢を貰って、本作で成長できました。」


井之脇「撮影時から身長が12,3cm伸び、声も変わりました。
    映画と今の僕は違いますが、
    作品はとても良い感じなのでよろしくお願いします。」


井川 「本作が海外から評価されたとき、自分も参加しているのに
    ふわふわしたお客様のような気持ちだったんですが、
    今日久々に皆に会ってこれからもがんばらないとと思いました。」


児嶋 「こんばんわ、僕のこと知ってますか?」
香川 「あれ? 今日なんでここにいるの? MC?」
児嶋 「一応、監督からオファーが・・・ 
    あ、あ、ありましたよね? 監督ぅ??
    3シーンしか撮ってないんですが、カットされていなければ
   “児嶋やったな!”と温かい目でみてください。」


司会者「海外で高い評価を受けていますが、今のお気持ちは?」

監督 「嬉しいです。でも世界がどうのというよりは、
    日本の東京で生きている一つの家族、
    その姿をそのまま映像にしたいと思ったので
    自然に映画の中でその力(想い)が伝わればと思っています。」


 香川さんとキョンキョンは同級生なんだそうです。
なので、多くを語らなくても目を見てるうちに通じたりして
本当の夫婦のような信頼感がお互いにあったんだって。
この夫婦の子供役の二人も、本当の家族のようなやりとりから
俳優としてとても大きな収穫があったようでした。

司会者「秘密を抱えた家族の物語ですが、
    皆さん、今だから言える秘密は。。。笑?」


小泉 「わりと大きくなるまで夜尿症と夢遊病に悩まされていました。」
 この発言には皆さん喰いつきましたね~~笑
他には、小柳くんが
 「今だから監督に言えること。。。ホントは坊主になるのが嫌でしたっ」
井之脇くんが
 「今だから香川さんに言えること。。。
  殴られるシーン、“大丈夫です”と現場では言っていましたが
  本当は痛くて。。。 香川さんを見るとそのことを思い出します 笑」

と、激白 笑。 どんな殴られ方なのかチェックせねば。。。

 このメンバー、とてもいい雰囲気(家族)で、
他にも色々なエピソードなど語り、壇上、会場ともに
笑いの絶えない舞台挨拶でした。
最後に香川さんが
 「4人の家族が生きてきた人生をリアルにぶつけた作品です。
  こういう作品はなかなかないので、とても誇りに思っています。」

と締めくくりました。


■感想■

 一つの家族を観て、家族って複雑なところもあるけど、
説明なんてできないくらいあっけなく単純なところもあって
言葉がなくても繋がっているのが絆なのかな。。。と思いました。


 リストラされたことを家族に言えないまま
 毎日ネクタイを締めて出かける父・竜平

 アメリカの軍隊に入隊を決意する長男・貴

 家族に内緒でピアノを習う次男・健二

 夫が会社へ行っていないことを知っているのに
 何も言わない母・恵


 母・恵が、男3人のクッション的役割になっていました。
そして、これが自分の仕事だから! といった義務感を持っているようで
その反面、今の生活から抜け出したいとどこかで思っているの。
こんな気持ちを代弁するかのような恵のちょっと疲れた表情はとてもリアル。
憂鬱そうな孤独感が漂っていたよ 悲。

 一方、威厳を保とうとする父・竜平は、
あっけないリストラに同情できないほど、好きになれない父親でしたが、
家族に隠し通そうとする言動は、
コメディではないんですが、笑わずにはいられませんでした。
傍から見ると、
真剣に悩んでいる本人には想像も出来ないであろう滑稽さがあります。

 そして竜平と恵には二人の子供がいます。
子供達の性格がそれぞれ違うのは、どこの家でも同じだけど、
似たくないとこほど、親に似ちゃったりするもんだよね。。。笑
佐々木家では竜平と健二が、そして恵と貴が同じタイプじゃないかしら。
竜平はリストラを機に、通勤ラッシュの波を見ただけで足が止まってしまい、
健二は「エロ林事件」以来、気まずさを引きずっている、
こんな二人に、意地はあるけど、打たれ弱そうな一面を感じ、
似ているからこそ、尚更ぶつかり合うのでは、と思うシーンがありました。
恵と貴は、一旦「言っても無駄」と思ってしまうと
余計な事は口にせず一人で処理し、
結果だけを報告するタイプじゃないかな。。。

 私は最初、竜平が健二のピアノに反対したのは、
リストラで収入が減ったから、経済的な不安があってのことかと思いましたが、
貴と言い合った竜平を観て、単なる頭ごなしな性格だったのか。。。と汗
そして、この性格が佐々木家の空気を大きく左右しているのだとわかりました。
この辺りは虚勢を張る竜平の性格がわかりやすく描かれていて、
夫婦間の温度差を一番感じたシーンでした。

 それと、ビールを飲む竜平が「いただきます」の声をかけるまで
誰一人箸を持たなかったシーン。
ここに父親の威圧は感じても威厳を思わせる空気は流れていません叫び
家族全員が顔をつき合わせているのに
心は全く通っていない象徴だと思いました。
家族が集合するこの二つのシーンは、見所だと思います。

 4人は、路上、海、派兵先、留置所と、家や家族から離れ
それぞれ何かを考えたようですが、
煮詰まっている時ほど、こういう時間が大切なんだと思いました。
渦中にいる間は見えないことも、離れることで見えてくることがあるし、
必死になっていたことが、
実はそれほどのことでもなかったと思えることもあるし、
逆に、眼中になかったものが大切だと気付くこともあるしね。

 それぞれが食卓に戻った時、それとラストでの竜平の涙、
ここで具体的な言葉はないけれど、
前とは明らかに違う空気が流れていました。
家族間のすれ違いと絆、
どちらもその場の空気で表現されているのが素晴らしかったです。
そして、キョンキョンの憂鬱で孤独な主婦も良かったのですが、
一人の人間を色々な角度から見せた香川さん、さすがでした~。