日本国憲法 前文 私訳（１）

日本国憲法の前文を5回に分けて翻訳します。私訳です。

正訳された日本国憲法を読んでも「立派なことが書かれているのは分かるが、抽象的な言葉の羅列ばかりでどうもよく分からないなあ」という感想を持ちます。

しかし、原文と向き合って丁寧に読み進めれば、内容をより具体的により鮮明に理解することができます。

初回は、冒頭のセンテンスを読み解きます。

まず、原文です。


THE CONSTITUTION OF JAPAN

Preamble

We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution.


これで一文です。長過ぎます。（笑）

そこで、主語を青色で、述語を赤色で色分けしてみました。

長文ですが主語はただ一つ We, the Japanese people （私たち日本国民）です。

そして熟語は以下の４つです。
　
determined （決定した）　（過去形）
resolved（決意した）　　 (過去形）
proclaim（宣言する）　　 (現在形）
establish（制定する）　　 (現在形）　

長いこの一文は、これらの熟語を区切りとして４つの事柄について述べられていることが分かります。

また、時制も最初の２つは過去形、後の２つは現在形で綴られていますが、正訳では時制の明確な区別はしていません。

前置きが長くなってしまいましたが、以下、私訳です。

「私たち日本国民は、公正なる選挙によって選出された私たちの代表者からなる国会を通じて行動しており、万国と平和的な協力関係を築くことによってもたらされる実りと日本国のあらゆる場所での自由を私たちや後世の国民に対して保障すべきことを決定したのであり、また、政府の行為によって決して再び戦争の惨禍に見舞われることのないようにすべきことを決意した、そして、主権が国民に存することをしかと宣言し、ここに確かにこの憲法を制定する。」


以下、正訳です。

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」


冒頭の「acting through our duly elected representatives in the National Diet」が、このセンテンスでとても重要な働きをしていることに改めて気づかされます。

「以下の４つの事柄は正当に選ばれた国民の代表者によって定められたことなのだ」と冒頭で明瞭に謳っています。

また、正訳では「確定する」と訳されている「do firmly establish」は、この憲法を制定するにあたっての確たる強い意思表明を行ったものとも解釈できます。

筆者は改憲にはやぶさかではありませんが、原文からは起草者の熱意のようなものさえも伝わってきて心が動かされます。

しかし、原文の微妙なニュアンスを汲み取って訳そうとすると、文章がやたらと長くなってしまったり、却ってややこしくなってしまったりと、不都合なこともまま起こってしまいます。

できれば直接原文に接してみたいものです。

９つのセンテンスから成る前文ですが、次回は２～ ４番目のセンテンスを訳してみたいと思います。

至らぬ点も多々あった事と思いますが、最後までお読み下さり有り難うございました。


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