(備前焼 垂れ耳矢筈口花入 ヨウシュヤマゴボウ)
備前焼の矢筈口(やはずぐち)花入にヨウシュヤマゴボウを生けてみました。
個性的なヨウシュヤマゴボウは生け花に適した花材ですが、有毒ですので扱いには注意が必要です。
(備前焼 垂れ耳矢筈口花入)
花器は備前焼の矢筈口花入で、耳が垂れ下がっていますので「垂れ耳」と名付けました。
"ころがし" で焼成し、地肌、鮮やかな火色(緋色)、焦げ、大胆なヘラ目、"山道"と呼ばれるウネウネとした横線などに景色が見て取れます。
口縁部はデフォルメされ、生命体のような有機的な躍動感が感じられ、今にもゴソゴソと動き出しそうです。
矢筈口花入は備前以外では余り作例がなく、備前では親しみを込めて「矢筈の花入」と呼んでいます。
ところで、冒頭にも書きましたようにヨウシュヤマゴボウの扱いには注意が必要です。
ヨウシュヤマゴボウは日本中に広く帰化した身近な植物ですが、過去記事「備前焼鶴首花入 ヨウシュヤマゴボウ(有毒植物)・カヤツリグサ」でも取り上げましたように、厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」にリストアップされている有毒植物で、根が山菜のヤマゴボウに似ているため、誤食による食中毒がしばしば発生しているそうです。
根は決して口にしてはいけません。
厚生労働省のホームページには「(果実と根を)食べると 腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして死亡する」と何とも恐ろしいことが書かれています。
食用のヤマゴボウは「モリアザミ」というアザミの一種で「ヤマゴボウ」とは別種。 「ヤマゴボウ」の名称に惑わされないようにしましょう。
また、ブルーベリーのような実が成り、見た目は美味しそうですが、実にも強い毒性があり、こちらも決して口にしてはいけません。
子供さんが実で赤い色水を作る色水遊びをする地域もあるそうですが、色水遊びをした後は石鹸で手をよく洗うようにしましょう。
最後に、ヨウシュヤマゴボウを素手で扱うと、手の皮膚が少し痺れたようなヒリヒリした感覚が数時間続きますので、扱う際はゴム手袋やビニール手袋がお勧めです。
(写真)備前焼 ころがし垂れ耳矢筈口花入 生け花(投げ入れ) ヨウシュヤマゴボウ
2024年9月5日撮影