second scene124 ~encore1~
シャワーをつかってバスルームからでてくると、篠塚がテーブルのうえのオードブルをつまんでいた。
「夕食、とっていないんですか」
「おまえもつまめ」
「ぼくは食べてきましたから」
「つきあいの悪いやつだな」
あ……。
すでに日付はかわってしまったが、そもそもこの豪華な部屋も篠塚の誕生日を祝うためのセッティングなのだということを思いだした。
濡れた髪をふきながらソファに腰を沈める。皿に綺麗にならべられたチーズに手をのばすと篠塚がおやといったようすで見てきた。
「なんですか」
「いやに素直だな」
「ぼく、いつもは素直じゃないですか?」
「素直なのはベッドの中だけだ」
チーズをつまんだ手がおもわずとまってしまった。横目でちらと睨む。篠塚が笑いを噛み殺した。
時間はすでに深夜の一時をまわっていた。
チーズを頬張ると同時に瞼が重さをました。
篠塚が立ちあがり腕をとってくる。
まだ、髪が濡れたままだった。
「髪を乾かさないと」
「自然に乾く」
篠塚に誘われるまま奥の寝室へとむかう。広いベッドだった。キングサイズだろうか。ベッドのうえで受身の稽古ができそうだ。
篠塚がいきなり押し倒してきた。ここのところ寝不足気味なうえに今夜はおもいきり走ってしまった。ふわりとしたスプリングに身を投げだしたとたん意識が一瞬とぎれたようだ。
「瞬?」
目をこじあけるようにして篠塚を見上げる。
「はい……」
「眠いのなら眠っていてもいいが……。ただし、俺がなにをしようと後から文句をつけてくるなよ」
篠塚のことばにぎくりとして体をおこす。
「こんな端で寝ても仕方がないだろう。とにかく、ベッドの真ん中までいけ」
ベッドにのり這うようにしてすすむ。ベッドの中央がしごく遠くに感じた。
ようやく布団にもぐりこみ篠塚の胸にすがりつく。なにかが物足りなかった。
「香水……」
「ん?」
「もうつけないんですか」
「おまえは伽羅のほうが好きなんだろう」
拗ねたような口調だ。それほど気にしていたのかとおもうと申し訳なさよりも愉悦が先にたってしまう。
ついと口をほころばせる。篠塚が仏頂面をつくった。
「おまえな」
「あの夜、北沢さんは、なんといって電話をしてきたんですか」
「あの夜? ああ、赤坂の料亭か」
「はい」
「おまえが酔いつぶれたから介抱させてくれと言ってきたんだ。ご丁寧に店の電話番号まで教えてきた」
「ぼくは酔いつぶれてなんていませんから」
「事実のびてたろう」
「まえの晩、眠れなかったんです。あの夜は食前酒の梅酒を一杯、飲んだだけですから」
「ほう……。どうして眠れなかったんだ」
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