second scene116
翌朝、目が覚めたのは昼すぎだった。加奈子には休暇をとったと先だって告げていたので何もいってはこない。あれから、ようやく眠りについたのは六時ごろだ。
気だるかった。ベッドから、のっそりと起きだしカーテンをあける。冬の弱々しい陽射しさえ目にまぶしい。完全に寝不足だ。そういえば一昨日の夜は一睡もしていなかった。二十代前半とはいえ、さすがにこたえる。相変わらず篠塚からの連絡はない。こんなとき声をきかせてくれたらと思うのは身勝手な言い分だろうか。
パジャマにカーディガンをはおり一階におりると、加奈子が顔をほころばし「おはよう」と、いってきた。挨拶をかえしインスタント珈琲をいれるためにキッチンへとむかう。加奈子の視線が気になった。
「なに」
「恋人できたの?」
ぎくりとして手をとめる。
「どうして」
「だって。クリスマスイブに休暇をとるなんて。瞬、会社をお休みするのもはじめてじゃない」
「……このところ忙しくて、ちょっと疲れてたから」
加奈子が笑顔をひっこめ落胆したように肩をおとした。
「それじゃ、今日は着てもらえないわね」
「なにを」
加奈子が嬉しげに微笑みリビング横の夫婦の寝室にはいっていった。なんだろうと勘ぐりながらインスタント珈琲に湯をそそぐ。一口すすり、ほろ苦さが喉を潤すと、ようやく目がさめた気がした。
加奈子が寝室から大きな平べったい箱を両手に抱えでてきた。ジングルベルの模様のはいった派手な金色の包装紙に小さなブルーのリボンがついている。
「それ」
「クリスマスプレゼント」
カップをテーブルのうえにおき箱を受けとる。おもわず顔がほころんだ。いくつになってもプレゼントを贈られるのは嬉しいものだ。
「あけていい?」
「もちろんよ」
丁寧に包装紙をとり箱をあける。のせてある薄紙をはぐと、中身はダークグレーのスーツだった。
加奈子が「ねえ、はおってみて」と、急かすように声をかけてくる。言われたとおり袖をとおす。仕立てのいいスーツだった。
「これ、高かったんじゃない」
「ちょっとね。奮発しちゃった。瞬、紺色のスーツしかもっていなかったでしょう。常務秘書なんだから、すこしぐらい、おしゃれしてもいいとおもって」
「ありがとう」
「ねえ、瞬。篠塚さん、優しい?」
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