月桃夜(げっとうや)//遠田潤子 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
大賞月桃夜/遠田 潤子

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 「月桃夜(げっとうや)」

 遠田潤子、著。 2009年

           ※


想いは人知れず、
この世の終わりまで滾(たぎ)り立つ- 。


死んでもいいと海を漂う茉莉香に、虚空を彷徨
う大鷲が語りかける。
熱く狂おしい兄の想いを、お前はなかったこと
にできるのか?
かつて二百年前の奄美にも、許されぬ愛を望ん
だ兄妹がいた……。
過酷な階級社会で奴隷に生まれた少年は、やが
て愛することを知り、運命に抗うことを決意する。

 (帯より)

           ※

 第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品。
しかし、日本ファンタジーノベル大賞はレベルが
高い…。

 第20回『天使の歩廊・ある建築家をめぐる物語』
・中村弦、18回『僕僕先生』・仁木英之、17回
『金春屋ゴメス』・西條奈加、第15回『太陽の塔』
・森見登美彦、第13回(優秀賞)『しゃばけ』・
畠中惠、第11回『信長 あるいは戴冠せるアンドロ
ギュノス』・宇月原晴明、第8回(優秀賞)『青猫屋』
・木戸光子、第6回『バガージマヌパナス』・池上永一
&『鉄塔武蔵野線』・銀林みのる、第1回『後宮小説』
・酒見賢一。

 以上は、私の読んだ作品ですが、どれも個性的でと
ても面白い作品でした。
その他にも、南條竹則(優秀賞)・佐藤亜紀・鈴木光司
さんなどが受賞しておられます。

 さて『月桃夜』ですが、本作は奄美大島の伝説に
題材をとった作品。

 主人公・フィエクサは奴隷階級に生まれた少年。
ある日、偶然の出会いから少女・サネンを助け、二人
で暮らすことになる。

 二人は山の女神に兄妹の誓いを立てる。
奴隷の辛い暮らしの中で、二人は助け合い、深い愛情
で結ばれて行く。

 さらに、フィエクサは奴隷階級の老人・アジャと
出会い、囲碁の才能を見いだされる。
そして、かつて囲碁の優れた才能により、名人と対局
して、さらに将軍家の指南役になった者がいる事を知
る。

 フィクサは、サネンと共に幸せになるために、囲碁
の才能を生かして江戸に招かれる事を夢見るようにな
るのだが…。

 というようなストーリーです。
二人の兄妹としての愛情に満ちた日々が、本当に美し
く描かれています。

 しかし、二人が大人になって行くにつれ、物語は
悲劇の色を帯びて来る…。
それに、死のうとする現代の少女の物語が重なって
行く…。

 人は愚かです。
深い愛情ゆえに過ちもおかす。
そのほんのささいな過ちを修正出来ぬまま、悲劇の
奔流に流される事もある。

 美しくて切ない物語です。
ただ、この作品の最後には救いがある。
悲しい想いだけを抱きしめて読了することはない。

 胸に沁みる作品でした。
本当に、面白かったです♪