羅生門 // 芥川龍之介 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
羅生門・鼻 (新潮文庫)/芥川 龍之介
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 「羅生門」


 芥川龍之介、著。 大正4年。


 

 先日「長人鬼」を読みながら、久々に「羅生門」が読み

たいと思った。

何度目でしょうか・・・、短い作品なのだが、読むたびに

新鮮味がある。


 こちらの体調や、年齢・心理状態により印象が違うの

でしょうが、やはり文章に趣があるので、何度読んでも

読み飽きない作品なのかも知れません。


 鬼も出なければ、怪現象が起こる訳でも無い。

けれども、ゾクリとさせられる。

人間の心の闇こそ妖しいと、つくづく感じさせてくれます。


 食い詰めた男が、さびれ果てた羅生門の二階部分で、死

んだ女の髪を抜く老婆を見つける。

男は、明日から「盗賊にでもなろうか餓死しようか」などと

悩んでいたのだが、老婆を見て突然ヒューマニズムに目覚

めたのか怒りを露わにする。


 「この女は生前、悪人であった。 自分は髪の毛で鬘を

作って売らねば餓死する。 その何が悪い」

と言う老婆の言葉に、男の心理は衝撃を受け、一変する。


 男は、盗賊に急変し老婆の身ぐるみを剥いで暗闇の中に

走り去る。

後には、闇のみが残る。


 本当に、この短い作品の中で人間の心理の「怖さ」を鮮や

かに描ききっています。

余分も、不足も無い。


 私にとっては「妖しい系」究極の作品のひとつかも知れない。

追いつめられた人間の心の危うさ、身勝手さを感情を交えず

さらりと描いてしまう。 そこが凄いなあ。


 むろん、文章にも趣がある。

平安の闇をのぞき見した気分を味わる。

多くの作家がこの短い作品に影響を受けているのだろうなと

思わされます。


 あれこれ読んで、疲れた読書頭に沁みる作品だなあ・・・。