六番目の小夜子 // 恩田陸 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
六番目の小夜子 (新潮文庫)/恩田 陸
¥540
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 「六番目の小夜子」


 恩田陸、著。 1998年。(改訂版)



 「夜のピクニック」を読もうと思った。

すると、mokkoさんに指導された。

「六番目の小夜子」を読んで、「象と耳鳴り」etc.

を読んで、その後に読む方が良いとアドバイスして

いただきました。


 うう、mokkoさんは恩田陸ファンだけに厳しい。

「夜のピクニック」を恨めしげに眺めながら、

「六番目の小夜子」を読んだ私です。


 「学園もの」はなあ・・・、と言う偏見を少し持ちな

がら、読み始めました。



 津村沙世子― とある地方の高校にやってきた、

美しく謎めいた転校生。 高校は十数年にわたり、

奇妙なゲームが受け継がれていた。 三年に一度、

サヨコと呼ばれる生徒が選ばれるのだ。

そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。

学園生活、友情、恋愛。 やがては失われる青春の

輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ

、伝説のデビュー作。

 (文庫裏表紙より引用)



 確かに、甘ったるい表現もある。

改訂版とは言え、デビュー作ゆえの弱さもある。

しかし、読み進めるほどに引き込まれて行く。


 語るほどに作品を読んだ訳ではないが、この作品

にはその後の恩田陸作品の全てに通じるエッセンス

が・・・、すでに備わっている。


 ホラー、ファンタジー、ミステリィ・・・、どのカテゴリー

に属しても不思議はないが、単純にジャンル分けする

ことは出来ない・・・、そう不思議で切ない物語。


 津村沙世子とは何者か?

高校に伝わる「サヨコ」と言う一種の儀式は、何時、

どのようにして成立したのか?


 その「伝統」をコントロールしているのは何者か?

あるいは、何故この伝統が受け継がれ続けるのか?


 追えば追うほど、新たな疑問にぶつかる。

砂漠の蜃気楼を追うように・・・。

真実に行きついたと思っても、それはゴールでは無く

新たなスタート地点に変貌してしまう。


 現実の不確かさ。

大地の確かさを信じていると、突然足元がぬかるみに

変わる。 そのような構造の物語。


 文化祭で行われた、全生徒参加の劇には、ゾッと

させられました。

本来、怖い劇では無い。 それが、テンポと演出で

不気味なものに変貌してしまう。


 しかし、この作品がホラーなのかと言えばそうでは

無い。 恐怖の要素は多いが、ホラーでは無い。

恩田陸作品なのだ・・・、としか言い得ない。


 謎は、根源的な謎は解明されずに終わる。

物語は物語に必要な謎だけを解き明かすに過ぎない。

そして、郷愁を感じ、切なさと温かさを感じる。


 高校時代とは、時の流れの中で「過程」なのだ。

進学するにしろ、就職するにしろ、「参加準備期間」で

あり、途上である。


 同じ年齢の者たちが集まる空間で、時代と時間を

共有する。 そして、未来への不安と期待を共に

感じる。


 この、不安の要素を「六番目の小夜子」は作品化した

と言えるのかも知れない。 そしてまだ何も「確定しない」

不確かさを表現した作品とも言える。


 そう、予測される未来はある。

予想出来る答えはある。

しかし、それは「まだ確定されない」未来・答えなのだ。


 まさしく「学園もの」にふさわしい物語なのかも知れない。

読後に余韻の残る作品。

面白い物語でした。