ZOO1 // 乙一 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
ZOO〈1〉 (集英社文庫)/乙一
¥480
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 「ZOO1」


 乙一、著。 2003年。



 以前、「闇黒神話」と「平面いぬ」を読んで、

あまり感心しなかったのですが、mokkoさんが

面白いからと薦めるので、読んで見ました。


あれっ?

なかなか面白いでは無いですか!


 「カザリとヨーコ」

双子の姉妹なのに妹だけが大切にされ、ヨーコは

ご飯も貰えない。 いつも、カザリから食べ残しを

貰って何とか生きている。

 母親がなかなか「黒い」。

現代版シンデレラのようなストーリーとも言える。

ただ、王子もカボチャの馬車も登場しない。

結局、ヨーコが何とかするしか無いのだが・・・。

 ヨーコはめげない。 最後が痛快でした。


 「SEVEN  ROOMS」

コンクリートの密室に閉じ込められた姉弟。

小学生の弟が排水溝を伝い、他の部屋にも女性

が閉じ込められている事が判明。

 部屋は7つ、1日に一人、順番に殺される。

姉弟が考え付いた脱出法は、過酷なものだった。

 姉弟愛が哀しい。


 「SO-far そ・ふぁー」

父と母の離婚にまつわる、子供の選択と言う行為

についての寓話。 この作品では、父と母はお互い

が見えなくなる。

 良く出来た寓話だと思いました。


 「陽だまりの詩」

人類最後の男は、自分の最期を看取り、埋葬させる

ためにアンドロイドを創った。 彼女は、自分の触れた

この世界を学び、考える。

 生まれたばかりの感性の柔らかさが、上手く表現

されていて瑞々しい。

オチのヒネリが効いています。 上質のSF。


 「ZOO」

彼女を殺した犯人を探し続ける男。

誰が犯人か、自分が一番良く知っている。

この男の、自己愛は最近の事件でよく見かける心理。

 自己愛って、怖い。



 乙一さんは、実に多才な作家です。

彼が投げかける物語を、そのまま受け止めれば確かに

面白いと言う事が解りました。


 「ホラー」である、「寓話」であるとジャンル分けをする

と、例えば「ホラーとして物足りない」と言う事になる。

なるほど、以前読んで物足りぬと感じたのはこの点

です。


 乙一は乙一である。

その事が乙一さんの価値なのでしょうね。

mokkoさん、なかなか面白かったですよ♪

次回は、「石の目」を読もうかと思っています。