- スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)/森 博嗣
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「スカイ・イクリプス」
森博嗣、著。 2008年。
空は希薄で、静謐に満ちている。
そんな気がします。
海の濃密で豊潤な神聖さと、空の神聖さは
明らかに違う。 そんな気がするのです。
大人にならない永遠の少年たちは、
老化せずに細胞が再生を繰り返す故に、
過去の記憶が希薄だと言います。
「不死」故に、「生」への執着も希薄です。
彼らには、永遠に繰り返される「今日」しか無い。
故に、過去へのノスタルジーも、未来への希望
も、他人ごとのように感じられるのでしょう。
彼らの、空虚さは空と一体化する。
虚空にあるときだけが、世界とアイデンティティーが
一致する時間なのでしょう。
「スカイ・クロラ」シリーズ唯一の短編集と銘打たれた
「スカイ・イクリプス」で提示されるエピソードは、
断片であるが故に啓示に満ちています。
「スカイ・クロラ」シリーズの、過去と未来が交錯する
短編集です。
確かに、「スカイ・クロラ」の世界の謎を解く
鍵がここにはいくつかある。
そして、「キルドレ」たちの世界観に迫る鍵が
ここにはある。
私にとっての「スカイ・クロラ」は、叙事詩です。
個々のエピソードも、小説と言うより「詩」である
ように感じられます。
これは、一大叙事詩なのでしょう。
「永遠」は「刹那」であり、「刹那」は「永遠」である。
切なく、何故か郷愁を誘う作品集でした。