スカイ・イクリプス // 森博嗣 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)/森 博嗣
¥1,050
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 「スカイ・イクリプス」


 森博嗣、著。 2008年。



 空は希薄で、静謐に満ちている。

そんな気がします。

海の濃密で豊潤な神聖さと、空の神聖さは

明らかに違う。 そんな気がするのです。


 大人にならない永遠の少年たちは、

老化せずに細胞が再生を繰り返す故に、

過去の記憶が希薄だと言います。


 「不死」故に、「生」への執着も希薄です。

彼らには、永遠に繰り返される「今日」しか無い。

故に、過去へのノスタルジーも、未来への希望

も、他人ごとのように感じられるのでしょう。


 彼らの、空虚さは空と一体化する。

虚空にあるときだけが、世界とアイデンティティーが

一致する時間なのでしょう。


 「スカイ・クロラ」シリーズ唯一の短編集と銘打たれた

「スカイ・イクリプス」で提示されるエピソードは、

断片であるが故に啓示に満ちています。


 「スカイ・クロラ」シリーズの、過去と未来が交錯する

短編集です。


 確かに、「スカイ・クロラ」の世界の謎を解く

鍵がここにはいくつかある。

そして、「キルドレ」たちの世界観に迫る鍵が

ここにはある。


 私にとっての「スカイ・クロラ」は、叙事詩です。

個々のエピソードも、小説と言うより「詩」である

ように感じられます。


 これは、一大叙事詩なのでしょう。

「永遠」は「刹那」であり、「刹那」は「永遠」である。

切なく、何故か郷愁を誘う作品集でした。