地方者の映画ブログ-サッチャー1
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【2013.4.8】

2013年4月8日帰ってきてニュース見ていたら、トップで扱っていた。
「鉄の女」イギリスのサッチャー元首相死去 87歳、女性初の英首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130408-00000577-san-eurp
87歳。脳梗塞を患ったとはいえ、女性としてはまだまだ若い。去年この映画を見てサッチャーについて知りたくなったけれど、知ろうとしたときにはもう亡くなられて…
11年6か月という首相在任期間は今の日本には到底思い描けない期間。それだけの方だったのだなぁと思いながら、この映画を見直してみようかと思う。もうそろそろ旧作になる頃かもしれないし。
ニュースで大切なことはすべて父から教わった、というサッチャーの言葉が紹介されていた。
その教わった中の一つを、このブログで書いておいて本当に良かったと思う。



【2012.3.18】
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2012年 イギリス映画 105分
原題:The Iron Lady 年齢制限:無

監督: フィリダ・ロイド
脚本: アビ・モーガン
字幕: 戸田奈津子
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Ladies and Gentlemen!! 紳士淑女の国、イギリス。

戦勝国にも関わらず、戦後の経済事情はとても悪い。
そんな時代に、初の女性首相マーガレット・サッチャーが誕生し、イギリスを建て直す。
その方策は結果的には国民に支持されたが、公共事業の縮減をはじめ、一部の国民にとっては冷徹なものであった。そのため、ソ連からは鉄の女(The Iron Lady)と揶揄されるほど。
そんなマーガレット・サッチャー、首相として在籍した11年半を含め、商売人の娘の時代、デニス・サッチャーとの結婚、双子の出産、下院議員、その後を「回想」として振り返る。

現在 86歳のマーガレット・サッチャー 認知症を患っているそう。
サッチャーさん、ご存命ながらこの映画は一種の自伝的な映画としてみてみるのも良いのかもしれない。


マーガレットの父、アルフレッド・ロバーツの言葉にとても胸を打たれ、この映画をとても大切にしたいと思うほどのもの。



メリル・ストリープがアカデミー賞主演女優賞を獲得したことでも有名なこの映画、マーガレット・サッチャーの土台、そして日本だけでなく世界各国で「問題」になっている「認知症」を考える意味でとても意味のある作品だと思います。

そんなわけで評価は★★★★☆。満点じゃない理由は↓に。
でも個人的には2012の洋画1番。それだけのモノがあった。
女性監督だからこそ描けた部分もあったのかななんて。







ネタバレとか色々 ↓


● 字幕について


字幕はご存知、戸田奈津子さん。文字数制限がある字幕で大胆な訳をし、過去の作品で誤訳とか色々話題になっている方。今回も個人的には色々。。。


今回もとの英語を聞くと、え、とか思う部分もあるけれど、2つだけ苦言。


若き日のサッチャー夫妻。家事が手に付かないためにHelperを雇えばいいじゃないみたいな会話。


ヘルパーとそのまま表記。この状況ならば家政婦だろ。戸田さんはミタさん、見たわけじゃないのか!


認知症を患ったマーガレットならば、ヘルパーで良いだろうけど、これはちょっといただけない。


戸田さん自身もそれなりのお歳なのだから、介護保険とか知ってるはず、野田総理が医療と福祉の社会保障がなんたらかんたらで、ざいげんがどーのこーのとかいってるんだから、ちょっとは耳に届いて、ヘルパーと家政婦の違いも説明できたんじゃないかなぁ、なんて。



もうひとつは、「ゴロツキ」という訳。
無頼漢、ならず者、ギャング?色々訳の類似例もあるけれど、ゴロツキ、つかわねーよ。
まあこの映画観にきた方々の年齢層を考えれば問題はないかもしれないが(自分が観にいった回は中高年の方々が席を埋めてました)
あらくれ とか チンピラとか代訳を考えたがどうだろう。てか元の単語聞き取れなかったので、意味がない。


● イギリスの政治体制について
中学・高校の公民の授業で二大政党制とか習った記憶があるけれど、イギリスは二大政党制な国。労働党と保守党。他にはアメリカ、カナダ、オーストラリアと色々な国であったり。
だが時代によっては、この体制が崩れたりもする。日本は民主と自民(と公明)で二大政党っぽいけれどそう思えないには訳がある。
それは、映画にも描かれている、国会弁論(討論?)の構図。イギリスは右・左と分かれた形状の国会があり、与党と野党の立ち居地が顕著に分かれている。
wikiの議事堂見ると、確かに左右だなぁなんて思えたり。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E5%A0%82

中高生のお子さんがいる方、実際に学生の方は資料集などで確認を(笑


で、そんな政治的な話の補完が映画でも、パンフレットでも無し。
政治家の映画で、しかも外国なのだからちょっとは説明を入れてもよかったような。
パンフ内にあるサッチャーを巡る12のキーワード(中央大の教授によるもの)で、保守党と労働党の対比が書かれているけれど、それだけ。政治に興味関心のない人を引き入れてないという作りも含め、☆-1

まあ原題と邦題を見たら、「鉄の女」だけで通じるかどうかってものもあるかもだけど。



あと、左右な議事堂なため、答弁が言わばパフォーマンスな部分がとてもある。


そのため、しゃべり方に関してレッスンを受けたりと、だからなのか、英国王のスピーチ思い出しちゃった。
そんな舞台裏も結構見物。(日本の首相でパフォーマンス力高かったのは近年では小泉さんまでさかのぼっちゃうんだろうけど・・・)

苦言ここまで。個人的には今のところ洋画一番の理由を淡々と書く。





● メリル・ストリープについて
アカデミー賞主演女優賞を獲得するだけあってお見事。もう引き込まれるほど。
認知症を患ってからの演技もすごい。ホントすごい。。。
言葉にあまりできないが、これは観てから判断を。

●マーガレット・サッチャーを支えるもの
旧性のマーガレット・ロバーツの頃から、人に支えられて人は生きるのではない、自分自身の足で立つのが自分だと考えていたマーガレット、その考え方は、保守党の考え方に通じ、下院議員当選、そして保守党党首、イギリス首相へとステップし、その考え方で、炭鉱などの労働者に国に頼らず、自立するよう働きかける。
一人の考えが、国全体まで浸透する。

その大元には、食料雑貨商から市議会議員に転進した、マーガレットの父、アルフレッド・ロバーツの言葉があった。

「考えが言葉になり、言葉は行動になり、行動は習慣に、習慣が人格になり、人格は運命を形作る。」

調べてみると、元はイギリスの作家、サミュエル・スマイルズの言葉から (映画内・パンフ内では言及されてはいないけれど、言葉尻を考えるとそうとしか思えない)。

元の文章は

思いの種を蒔き、行動を刈り取り、
行動の種を蒔いて習慣を刈り取る。
習慣の種を蒔き、人格を刈り取り、
人格の種を蒔いて、人生を刈り取る。

日本では福沢諭吉がこの言葉を書籍でつかったとか。松井秀喜もこの言葉を座右の銘にしているらしい。
それだけすごい言葉。

この言葉に出会えただけで、映画料金払ってよかったと思える。
(サミュエル・スマイルズ 調べたら、聞いたことのある有名な格言
の主だったり。今まで知らなくてただただ申し訳なく思う。俺は今まで何を学んできたんだ)

ちなみにこの言葉は、マーガレットが定期健診の際、医師が「ご気分はどうですか?」と聞いてきた際に、


「最近の人は、どう感じるかを重視しすぎている。私は考えたい。」のセリフに続くセリフ。


アイディア、考え。その単語からふと、スティーブ・ジョブスを思い出す。
ジョブスもアイディアをとても大切にする人だった。才能があっても、考えを大切にしなければ、世界的に有名にはならなかったのだろうけど。

色々書くときりがないので、このネタはここで。


● 認知症について
この映画を支えるもう一つのモノ。認知症。
政治パート(回想部)と認知パート(現在)と分かれ、現在と過去を行き来するこの作品。日本だけでなく世界各国で「問題」とされている認知症、つまり介護の問題。
最近見た映画の中では、猿の惑星ジェネシスや50/50で認知症(アルツハイマー)が出てきている。
もちろん日本でもこれをメインテーマにしている映画はあるが(明日への記憶、わが母の記など)、サブテーマとしてねじりこめてない。

で、今回の映画については、自分が観ている映画の中では初めて認知症の方目線で撮られていた画期的なモノであったと思う。死別した夫がそこにいる妄想(せん妄)や、その夫に向けて話す言葉、必要だからといって外出し買い物までしてしまう、(家族にとっては)問題行動。

認知症の人、認知症の人を支える周囲の人の模様がとても伝わってくる。
なんでこんなことしたの!!と責めるのでなく、何故こういうことをしたのか考え共感する。
認知症患者を抱える家族が共に成長していく模様も感じ取れる映画でもあった。

日本で痴呆が認知症という名前に変わって数年。
2012年4月から介護保険制度も変わるにもかかわらず、認知症という言葉さえも浸透していない現実。
こんなCM流していても。
http://sodan.e-65.net/movie_01.html


娯楽としてみる映画もあるが、こうして社会問題を見せてくれるものもある。
考え、行動に移し、そして・・・どうなるかはあなた次第。

まあ自分の両親、祖父母が認知症になれば、否応にも身近に感じるんだろうけど。


【関連作品】
マーガレット・サッチャー―鉄の女の涙 (リンダブックス)/白石 まみ

映画の小説本。まあ読んでみるのもいいかと。

スティーブ・ジョブズ名語録 (PHP文庫)/桑原 晃弥

言葉は力。それが原動力となる、はず。