青山繁晴 『われら国民、新政権に何を期すべきか(2)』 | 打倒安倍を叫ぶ紳士淑女+老人達を微笑ましく見守ろう♪♪

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…大戦中の南京での戦闘は、すでにして南京の人口を超える「大虐殺」があったことにされているが、さらに「ザ・レイプ・オブ・ナンキン、(南京大強姦事件というニュアンス)」と、またしても性に結びつけられた名称に変えられている。
それは中国系女性作家のベストセラーのタイトルであったが、その女性がピストル自殺し、ベストセラーは「事実誤認」、「売らんからの、きわもの」とアメリカの歴史学者たちに批判されたあとも、この名称だけはアメリカ社会にもはや根付いている。 なぜか。アメリカは清教徒の国であり、今もCIA長官が女性スキャンダルで即、辞任する国だ。性に結びつけアメリカを日本から離反させようという作戦は、巧妙と言うほかない。

この「きわもの本」(フォーゲル・カリフォルニア大教授)を絶讚したのが米紙ニューヨーク・タイムズだ。 NYタイムズは今、安倍叩きの先頭に立っている。この正月の社説で、慰安婦を「SEX SLAVE」とためらいなく、根拠も一切示さず表現したうえで、日本国民が選挙で選んだ安倍総理を「(歴史の見直しを企図する)恥ずべき衝動を持つ」と罵り、挙げ句は「(その衝動のために)ミスター安倍は、北朝鮮の核開発などをめぐる地域協力を脅かしかねない」と論難している。
北の核と関連づけるのは言いがかりに近い。 これで一流紙とは恐れ入るが、このNYタイムズも、同じくワシントンDCの一流紙ワシントン・ポストも共に、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国に帰属する」という大見出しの広告を昨年9月の紙面に挟み込んだ。 広告とはいえ、ふつうのニュースページにあるから、読者には広告ではなく報道にみえる。
実は、このアメリカを代表する2紙は、今や普段から「チャイナ・デーリー」(中国日報、中国共産党中央宣伝部の運営による英字紙)を挟み込んで発行している。もう2年を超えた。 早い話が、チャイナ・マネーが大量に2紙に流れこんでいる。中国はアメリカのメディアには巨額の広告収入、ハーバードをはじめ著名大学には恐るべき大金の寄付金を注ぎこみ、アメリカ社会の根っこから日米離反、親中への転換を狙う。

アメリカは性道徳に敏感でありつつ、カネには弱い。それを知り尽くした作戦である。 そして中韓がこうした反日作戦で連携していることは、靖国神社に放火した中国人の犯人を韓国が、日韓の犯罪引き渡し条約に違背して、中国に引き渡し、放火犯が中国で英雄として扱われているという現在の事実で、日本国民にも知られることになった。朝鮮半島は、歴史的に中国に冊封された歴史が長く、中国の顔色をうかがうのが本質である。
第二次安倍政権は、その外交が、こうした困難にすでに直面している。その現実からみても強い日本経済の復活は、単なる参院選向けの戦術ではなく、不可欠の課題だ。 アベノミクスについて「よく分からない」というEメールがわたしによく届く。本質は明瞭だ。「分配から成長へ」である。

わたしは年末年始に、経済危機にある欧州を訪ねた。欧州は1月2日から仕事を始める人も多い。この時期にしか会えない人もいる。
外交官、財界人を問わず彼らの認識は「民主党政権は社会民主主義の色の濃い、分配重視だった。日本は保守政権下で、成長重視に変わるんだね」ということだった。 その通りである。社民政権を長く経験してきた欧州人にとって、アベノミクスは登場して当然の経済施策なのだ。
問題は、金融緩和や財政出動よりも、成長政策にある。いくらカネを借りやすくしても、公共事業で一部に好況を生み出しても、根本的な需要を新しく生み出さねば、企業は給料を上げるところまで たどり着けない。
わたしは安倍総理自身と、その真のブレーンであるインテリジェンスの高官たちに「日本海が抱擁する、塊(結晶状)のメタンハイドレート(海底などで凍った天然ガス)は、日本が建国以来初めて持つ自前資源であり、福島原子力災害後の日本と、アジアのエネルギー事情を大きく改善するものだ。 しかし、それだけではなく資源小国のはずの日本が新しく資源産業を、それも過疎に苦しむ日本海側を起点に勃興させることが、日本経済の新しい成長政策にとって、どれほど大きな意義を持つかを早急に考えてほしい」と提言している。

そして歴史の問題については、「なぜ戦争をしたかよりも、なぜ負けたのかを初めて問う」政権になってほしい。 大戦当時の中国大陸には、日本だけではなくアメリカも他の欧米諸国も軍事力で入り込んでいったのだ。 侵略か侵略でなかったかを問うても、本来は不毛である。真珠湾攻撃で航空戦力の大切さをアメリカと世界にみせた日本が、なぜ戦争末期の沖縄戦では戦闘機を一機も発進させられない戦艦大和を繰り出したのか。なぜその大和が、いつまでもロマンであるだけなのか。
大和建造が当時の日本の既得権益であったから、それを変えられず、やがて敗戦となった歴史は、海外の資源をアメリカの意のままに高く買い、それが既得権益であるからメタンハイドレートにも取り組まなかった現在の日本の、戦争なき敗戦にも直結している。
なぜ負けたかの問いは、まずは内政にある。そこから始め、長い時間をかけて敗戦国のままの日本であることを、やがては世界と共に克服する。 たとえば国連憲章の敵国条項の削除だ。その出発点を築くことが、保守政権である第二次安倍政権の使命となる。
なぜなら、日本の保守とは、革命の否定であり、すなわち一歩ごとにしか進まない政治思想だからだ。 凡てを一新したあの明治維新ですら、15年を要した。新政権は、その3分の1、5年を掛けて新しい日本、アジアの橋頭堡(きょうとうほ)を造るべきだ。

新政権にいちばん強く、身近に働きかけてくるのは、ロシアのプーチン大統領だ。 安倍外交の肝が「中国の包囲」にあることを見抜いて、夢の北方領土返還を仕掛けてくる。 だが、それは歯舞、色丹の二島だ。
肯定面で言えば、日本の敗戦後の世界秩序の初めての修正になる。否定面で言えば、領土の放棄だ。 歯舞は小さすぎて「歯舞島」はなく郡島だ。色丹島も国後、択捉両島より余りに小さい。

打開するには、仮に二島で交渉が進めば「国際法に基づけば、日本の北方領土は千島全島と南樺太だ」と公正に主張する。外交交渉は話半分、それで初めて四島返還の道が開ける。
敗戦後の日本自らの常識を少しずつ変える、それを期す新政権とすることを同じ国民に提案したい。
(新潮45今月号)