ヘンリー・キッシンジャーは『外交』という本で「12月12日、日本、イタリアと3国同盟を結んでいたドイツはアメリカに宣戦布告した。ルーズベルトが常に基本的な敵とみなしていた国、ドイツにアメリカの戦争努力を集中させる自由を、なぜヒトラーがルーズベルトに与えたかについては満足のいく説明は無い。」と書いています。

今回はこの疑問に答えてみたいと思います。

以前にこのブログで日本の真珠湾攻撃が成功したのはフーバー大統領の回顧録から読み取るに、当時のアメリカの首脳部が当時の日本人の力を侮っていたからだと書きました。

海軍長官が3ヶ月で日本を地図上から消せると豪語したり、ハル・ノートを日本に手渡した後もルーズベルト大統領は日本が戦うと思っていなかったことが、そこには書かれてありました。

他に当時のアメリカ人が日本人についてどのように考えていたかネットで調べてみました。

例えば軍事評論家のフレッチャー・プラットという人は次のようなことを語っていたそうです。

「日本人は首が座る前から負ぶわれ揺すられるから、バランス司る内耳に異常をきたし、急降下飛行ができない」
「近眼で鳥目だから夜間飛行はできない」
「個人主義が発達していないから独りで乗る戦闘機が被弾や故障に遭うと、何をしていいか 分からない。ただ腕を組んで地上に激突する」

また、ブレーク・クラーク著「真珠湾」では以下のように書かれているそうです。
「われわれは日本人は独創力と想像力に欠けている - わずかに能力ありとすれば、それは単に模倣性にしか過ぎぬといったような根も葉もない話ばかり聞かされてきた」
「もしそれが真実であるとするならば、日本海軍の軍艦は荒天に乗り出すやいなや、ただちに一隻残らず転覆していなければならぬ筈である」

戦後すぐ、淵田美津雄大佐はGHQのG2に呼び出され、真珠湾攻撃隊長だったことがわかると「失礼ながら、われわれは日本人を侮っていましたからね。ジャップにしては出来すぎると思いました。それで指揮官はドイツ人将校だろうなどと話し合っていたのでしたがね」と語りかけられているそうです。(ブログ『かつて日本は美しかった』から引用)

このようにアメリカの民間も政府首脳部も日本人を「劣等民族」とバカにしていたことが、真珠湾攻撃が成功した最大の要因だったのです。

では、ドイツに戻ります。

ヒトラーは同盟を組んでいる日本人についてどう考えていたのでしょうか。

『マイン・カンプ』を書いたぐらいですから、アメリカ人が当時の日本人について考えていたのと五十歩百歩でしょう。おそらく、彼も日本人は「劣等民族」と思っていたでしょうし、そんな国と同盟を組んで何の役に立つのかと思っていたのでしょう。ちなみにドイツの外交戦略を担っていたのはリッペンドロップ外相でした。

ところが、ヒトラーが「役に立たない同盟国」と思っていた日本が真珠湾を機動部隊によって攻撃しアメリカの太平洋艦隊を全滅させたのです。

このニュースを聞いてヒトラーは何も感じなかったでしょうか。

おそらく、彼は感動したでしょう。それも通常よりも遥かに感動したはずです。なぜなら彼も日本人を「劣等民族」と思っていたからです。イギリスやアメリカが同じことをするのとわけが違うのです。

そして、その「劣等民族」の国に対する感動が、全く必要のないアメリカに対する宣戦布告をよんだ気が私にはします。

つまり、真珠湾攻撃が成功した理由も、ヒトラーがアメリカに宣戦布告した理由も同じなのです。

両者とも当時の日本人を「劣等民族」と思っていたからでした。

この答えは絶対にキッシンジャーは受け入れないとおもいますが。