北朝鮮の問題は最終的には中国問題に集約できます。北朝鮮のミサイル発射や核実験にいくら一喜一憂しても中国が燃料や食料などで北朝鮮を支えている限り問題は解決しないのです。

 

アメリカはそのことを誰よりも知っているはずなのに、中国に対しては決して圧力をかけようとはしないのです。

 

この問題に関してポリティコに「元役人が中国を制裁しないことが北朝鮮を助けていると語った」という良記事が掲載されていました。

http://www.politico.com/story/2017/04/north-korea-china-sanctions-237238

 

この記事によれば北朝鮮の核開発に「中国銀行」が協力しているのは明白なのですが、クリントン、ブッシュ、オバマの3つに渡る政権において中国に対してほとんど何も圧力を加えなかったと書いています。

 

「『我々は北朝鮮の制裁に対して中国からの挑戦に対決しなければ全然真剣に対処していないことになる』とヴェテランのアメリカの情報員であったアンソニー・ルギエロは語った。『大きな疑問は政治的な意思があるかどうかだけだ』」

 

なぜアメリカは中国に対してはこのような甘い態度を取り続けるのでしょうか?

 

私は、つい最近フィナンシャル・タイムズのコラムニストであるギデオン・ラッチマンという人が書いたEasternisation という本を読みました。

 

この本を読んで大変衝撃を受けた部分があります。

 

オバマ政権の途中でクリントン国務長官からケリー国務長官に変わりましたが、そのケリー国務長官が就任したすぐ後でワシントンに駐在するアジアの専門家の前で次のような言葉をかけたらしいのです。

 

 ‘How can I stop Japan starting a war with China?’

(私はどのようにして日本が中国と戦争することを止められるか?)

 

私は思わずこの文章を繰り返し読み直しました。主語と述語がひっくり返っていると思ったからです。

 

さすがに日本に批判的なラッチマンも「中国が一方的に東シナ海で航空識別権を設定したり、南シナ海で不法な埋め立てをしている」情勢でアメリカの国務長官がこのような認識を抱いていることに当惑している様子でした。

 

ジョン・ケリー国務長官が対中融和派だということは私は以前から知っていましたが、現在に至ってもこのように認識していることは驚きでした。

 

おそらくこのように認識しているアメリカの外交エスタブリッシュメントが多数いるからアメリカは中国に対して圧力をかけられないのでしょう。

 

だからこのような歪んだ中国認識を持った外交エスタブリッシュメントが存在しないトランプ政権に期待していたのですが、アメリカの対中外交の首領であるヘンリー・キッシンジャーが娘婿であるクッシュナーにとりいり、彼の地位がトランプ政権で重要さを持つにつれ、従来の対中政策に戻ってしまうのではとの不安があります。

 

ちなみにトランプ大統領がシリアを爆撃したのはむすめのイヴァンカの意見が大きかったようで、アメリカ国家を家内工業のように運営するトランプ大統領に対しては彼を選挙中に応援している層からは不評で従来の外交を支持している人たちからは拍手を受けています。

 

いずれにせよ中国に圧力をかけないと北の問題は解決しません。

 

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毛沢東システムとは何か

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中国の毛沢東は朝鮮戦争において北朝鮮の存続が危ぶまれた時に他の共産党幹部の反対を押し切って参戦しました。

 

毛のおかげで北朝鮮はどうにか生き延びることができました。

 

またヴェトナムで共産党のホーチミンがフランスからの独立を求めて闘争を展開した時も彼はヴェトナムを支援しています。

 

その結果中国と隣接するヴェトナムや北朝鮮において共産党一党独裁を維持する国家ができ、それが現在も続いているのです。

 

朝鮮半島やヴェトナムが中国にとってどのくらい重要な位置を占めるかは日本の軍事史からも確認できます。

 

石原莞爾が満州事変を起こした時に彼が頼みとしたのは林銑十郎が率いる朝鮮軍の存在でした。林は独断で越境して石原を助けました。

 

また日中戦争で日本軍が短期に解決できなかったのは援蒋ルートと呼ばれた英米が蒋介石を援助する物資を運ぶ経路が存在し、その中でも最大だったのがヴェトナムを通る仏印ルートと呼ばれるものでした。

 

日本がこの仏印ルートを閉鎖しようと南部仏印に進駐したらアメリカから石油を禁輸されてしまいました。

 

このように毛沢東は中国へ侵攻する上で補給上重要な地域に共産党の一党独裁を維持する国を配置することで中国共産党の安全を確かなものにするという「毛沢東システム」を築きあげました。

 

そしてアメリカは朝鮮戦争とヴェトナム戦争においてこのシステムを破壊しようとしましたが、あえなく撃退されています。

 

トランプ大統領が北朝鮮を爆撃したら、私はおそらくアメリカは3回目の失敗を犯しそうな気がします。

 

米中戦争を恐れるアメリカは北の爆撃に介入してくる中国に妥協せざるを得ないからです。

 

この「毛沢東システム」を潰す鍵となるのはベトナムや北朝鮮ではなく、中国の体制なのです。

 

中国で一党独裁が潰れれば、北朝鮮やベトナムの一党独裁が持ちこたえられるとは全く思えません。

 

そのことを見定めないとアジアで何が重要なのかはわからないでしょう。

 

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中国と北朝鮮の複雑な関係を考察するにおいて参考になるのが中国とヴェトナムの関係です。

 

なぜなら朝鮮半島もヴェトナムも中国と国境を接しており、そこには人口規模的には小国とは言えない国家が存在し、似たような地政学的な環境にあるからです。

 

ヴェトナムと中国の関係で日本に流れて来るニュースは中国とヴェトナムが互いに領有権を主張する南沙諸島において中国が拡張主義的な動きを見せるもヴェトナムは勇敢に中国に対抗しているというナラティブで大抵語られています。

 

日本の安倍政権も中国に対抗するヴェトナムという文脈でヴェトナムに艦船を援助することを決めています。

 

しかしながら、日本はヴェトナムを中国に対抗する側面だけで見ていていいのでしょうか?

 

本当にヴェトナムと中国が敵対的な関係だけなら、なぜヴェトナムは中国と同じように今だに共産党の一党独裁を維持しているのでしょうか?

 

つい最近この疑問に答えてくれる記事をJBpressというところで見つけました。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49418

 

この記事を書いた川島博之さんは次のように記しています。

 

「そこがポイントだよ。チョンは米国と仲が良かったグエン・タン・ズン前首相を政権から追い出したかったのさ。ズンはやり手で、この国の経済を発展させた。その手腕は見事だったよ。まあ、汚職も派手にやったから嫌う人も多いけど、1人当たりのGDPが2000ドルを超える水準にまでになったのは、彼のおかげと言っていい」

「経済成長をリードしてきた彼がなぜ失脚したのですか?」

「やり過ぎだよ。ズンは政府の力を強めて共産党の力を弱めた。“政高党低“てやつさ。そこに共産党が脅威を感じた。それにズンは米国と仲よくし過ぎた。この前、オバマ米大統領がベトナムを訪問した時に、庶民がよく行く食堂で”ブンチャ“と言うベトナム料理を食べた。その店ではオバマが注文した料理を”オバマ・セット“なんて言って、売りだしている。大人気だそうだ。」

 

この記事によればベトナムの共産党トップのグエン・フー・チョン書記が米国寄りの政策をとっていたグエン・タン・ズン首相を失脚させたことと、チョン書記はベトナム一般庶民からは中国に寄り添っていると見られていることが確認できます。

 

ヴェトナムが共産党の一党独裁を維持するために決して中国から離れられないという現実は北朝鮮と同じように歴史的に確認できます。

 

私が以前読んだスウェーデン系アメリカ人のFredrik Logevall の『戦争の残り火』はホーチミンがフランスの植民地からの独立を果たす歴史書ですが、フランスとの勝利を決定づけるディエンビエンフーの戦いにおいて中国の毛沢東は軍の参謀をヴェトナムに派遣していました。

 

次に起こったアメリカとの戦いでもあるヴェトナム戦争においても中国はヴェトナムに協力しています。

 

だから一見ヴェトナムと中国は領土的に対抗する形となっても共産党独裁の維持という点から見れば両者は未だに一致しているのです。

 

中国の毛沢東は自国の安全のために中国と国境を接するヴェトナムと北朝鮮という国家に同じような体制で支配させ維持してきました。そしてそれが現在まで続いているのです。

 

しかし、中国で共産党の一党独裁が無くなったら、果たしてヴェトナムや北朝鮮はその独裁を維持できるでしょうか?

 

私は維持できないと思っています。

 

だからアメリカや日本はアジアから共産党の独裁を追放しようと考えるなら目標は中国であり決して北朝鮮を爆撃しても問題は解決しないのです。

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