少し前にフランシス・フクヤマがF.Tに興味深い記事を書いていたので紹介します。

ここ最近のアメリカの歴史で、大統領及び上院、下院すべて同じ党が総取りしたことが2回だけあるとフクヤマは書いています。

1回目は、1896年に共和党のウィリアム・マッキンリーが当選した時で、この時は共和党が大統領、上院、下院を総取りしました。

2回目は1932年にフランクリン・ルーズベルトが当選した時で、この時は民主党が全てを獲得しています。

じつはこの出来事には、経済問題が多大な影響を及ぼしていると私は考えています。

1896年の場合は、当時の覇権国であるイギリスを中心に長い不況、よくLong Depressionと呼ばれるものが発生し、アメリカもその影響を受けてほとんど成長しない時期がしばらく続いていました。

マッキンリー大統領は、輸入品に多大な関税をかけることでこの不況を乗り切ったようです。

1932年にルーズベルト大統領が当選したのも1929年に起こった大恐慌(こちらはGreat Depressionと呼ばれています)に対して共和党のフーバー大統領が扱いを誤り、民主党の総取りを招いたのでした。

当選したルーズベルト大統領は、公共事業などの不況対策を行いますが、結局アメリカがデフレから脱却したのは日本が真珠湾攻撃を行った後のことでした。

ということで、この2回のアメリカの政界再編の原因は経済の不調がもたらしたものでしたが、一番影響を与えたのがアメリカの外交の変化です。

マッキンリー大統領が当選したのは1896年ですが、1898年にハワイを併合し、同じ年にスペインと戦いフィリピンを手に入れるのです。

1932年に当選したルーズベルトも後に始まる第2次世界大戦に参戦しようと考え、手始めにドイツと同盟していた日本を追い込んでいったことは、何回もこのブログで書いてきました。

つまり、1896年も1932年も、それまで「孤立主義」的だったアメリカの外交が180度転換し、より外の世界に対してアグレッシブになったのです。

フクヤマはこの記事で次にどちらかの政党が総取りするような時期はすぐに来ないと予想していますが、今回の不況(これはGreat Recessionと呼ばれています)が長引けば、アメリカで従来のような総取りが行われる可能性があります。

そうなった場合に、アメリカの外交はどうなるでしょうか。

前回の場合はどちらも「孤立主義」的なものから「十字軍」的なものへの変換でしたが、次回は逆の転換を迎えることになるでしょう。アメリカの外交が現在以上にアグレッシブになることは不可能です。

そして、もし近い将来アメリカの外交が「孤立主義」的なものに変化したら、当然日米安全保障条約は無くなるでしょう。