イギリスのE.H.カーやアメリカのジョージ・ケナンの外交思想はリアリズム(現実主義)と呼ばれていますが、私はこの言葉使いは間違っているのではないかと考えています。

イギリスのカーは『危機の20年』という本に「実際に平和的変革は、正しいことについての共通感覚というユートピアンの考えと、諸力の変革される均衡状態への機械的な調整というリアリストの考えとの間の妥協ないし折衷を通じてはじめて達成され得ることを我々は知るのである」と書いています。

この文章からわかることは、彼は理想主義(ユートピアン)と現実主義(リアリズム)を折衷させなければ、平和的変革は達成できないと主張しているのであって、決して
現実主義(リアリズム)だけを追求せよと言っているわけでは無いのです。

しかし、なぜかこんにちまでカーの考え方(ケナンも同じですが)は「現実主義的」な立場と捉えられています。

実際は、理想主義は現実主義によって抑制されなければいけないと言っているのであって、決して理想主義を否定しているものでは無いのです。

理想主義と現実主義をいかにバランスさせることができるかということが彼らのテーマだったのです。

一応私も便宜上、カーやケナンの考え方をこれからも「リアリズム」と書いてしまうと思いますが、実際は「理想主義と現実主義を均衡させること」と認識してください。