以前に日米安保と平和憲法の関係について書いたのですが、もう少し詳しく論じていこうと思います。

 ちょうど『産經新聞』の12月16日に佐瀬昌盛・防衛大学名誉教授が「『対等な同盟』論に欠けるもの」というタイトルで書かれているのでそれを使わしてもらいたいと思います。実は以前まで私は佐瀬さんの論理は正しいものと思ってきましたが、どうも重大な欠陥があるようなのです。

 条約上、米国は日本防衛の義務を負うが、日本は米国防衛の義務はありません。そこでこの条約は「片務性」があると指摘される訳ですが、佐瀬さんは日本には対米基地提供の義務があるのだから「非対称双務性」と呼ぶべきだとおっしゃっています。

 つまり、日本はアメリカを守ることはしないが、その代わりに基地を提供しているのだ、というわけです。

 次に佐瀬さんは「日米間の条約構造を現状の『片務性』ないし『非対称双務性』から純然たる『双務性』へと偏向する事は『対等な日米同盟』の主張に適うのか、背くのか」と問いかけます。

 私はこの佐瀬さんの指摘はもっともだと考えています。そして現在の片務性を少しでも無くすために民主党は努力しているのか、を問うています。

 「なすべき自助努力はなすなら、日本の安全の対米依存は下がるし、その分『対等』性に近づく。ところでこの面での首相、外相、民主党の決意表明はゼロである。」

 佐瀬さんは少しでも「自主防衛」に向けて努力をしたらそれだけ「日本はアメリカに守られている」という弱みを払拭できるのだが、民主党はそのような事を全く考えていないと批判しているわけです。

 この議論自体は正しいのですが、完璧に抜けていることがあります。それは日本が少しでも「自主防衛」に向けて努力するのをアメリカは認めるのかどうかという視点です。

 どうもアメリカは日本が「自主防衛」に向かうことに反対のようなのです。元外交官の孫崎享さんは『日米同盟の正体』でマイケル・グリーンの「力のバランス」から次のような文を引用しています。

 「サンフランシスコ講和会議時、ダレスは各国代表に対して、戦略的取引に関するアメリカの見解を説明した。第1に日本は民主主義諸国の共同体に留まる。第2に日本は国連憲章の下で国家自衛権を保持するものの攻撃能力を発展させる事は無い。第3にアメリカは日本国内に基地を保持する。ダレスにとりこの3点は譲れないものだった。」

 そしてこのダレスの考え方は現在にも受け継がれています。2004年に作られた「防衛計画の大綱」でも日本に「(戦略的)打撃力と核抑止力は持たせない」という方針は貫かれていると孫崎さんは指摘しています。

 田母神元空将は「非核であっても日本が攻撃力を持つ事で抑止力は獲得できる」と力説しておられますが、それはアメリカから現在においても否定されている訳です。

 以前から佐瀬さんのような保守派は日本が自国の防衛に努力をしないのは日本のリベラルが悪いのだと思ってきた訳ですが、実際にはアメリカが足を引っ張っていたのです。

 日本の保守派はそのようなアメリカを批判したり、説得できるのでしょうか。
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