ある素敵ないつもの朝(CM) | Fragment

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ホミンを色んな仕事させながら恋愛させてます。
食べてるホミンちゃん書いてるのが趣味です。
未成年者のお客様の閲覧はご遠慮ください。

『僕としたことが、』

冷凍庫を開けてびっくり。
買って保存していた食パン一斤が現れた。
連日食パンを買ってしまったのだ。

やってしまった。
シムとあろうものが。

こうなるとただ解凍しただけではやはり風味が残念だ。
どうにかしてやっつけなければ。

冷蔵庫を漁る。
ベーコン、しめじ、玉ねぎ、たまご、チーズ…。
冷凍庫に海老もあった。

僕と食パン一斤との戦いが始まった。




子供たちも夫もまだ寝ている。
僕は食パンの存在にショックを受けてすっかり覚醒してしまった。
エプロンを締める手にも力が入った。
コーヒーを一口飲む。

『よし、』

気合いを入れる。

食パンはカットされているから少し手間がかかるが全てをバターと砂糖を落としたフライパンで焼き色を付けた。
子供たちにはバターを控えていたけれど、ミンホは解禁でテミンは少しずつといったところに落ち着いている今日この頃だ。
焼いた食パンの真ん中を四角く切り取る。
そして穴が空いた食パンを積み重ねる。

それからベーコンと玉ねぎをスライスし、しめじを解し、解凍した海老を用意する。
海老とベーコン、玉ねぎを炒め、しめじを加える。
コンソメで少し味付けをする。
それから、塩コショウ。

小麦粉を入れ、牛乳を少しずつ加える。
ダマにならないように少しずつ。
全ての牛乳が入れ終わると、次はピザ用チーズを加える。
水っぽさが無くなって、とろりとしてきたら火を止める。

いい匂いだ。

ここで一旦キッチンを離れる。
テーブルを整える。
子供たちが使う食器を出す。
夫の分も一応出しておく。
いつ食べるかはわからないけれど。

そして寝室に向かう。
ミンホとテミンの頬にキスをして起こす。
テミンは狼の耳をピクピクとさせながら眠っていた。

『ママァ、』

ミンホが寝惚けて甘えてくる。
ミンホを抱きかかえ、それから半目のテミンを抱きかかえる。
両腕に子供たちを抱いて寝室を出た。

『てむてむ、ちっち、』

『はいはい、』

トイレに行きたいようだ。
ミンホを下ろして先におトイレを済ませる。
トイレから出てくる頃には、ミンホは覚醒していた。
切り替えが素晴らしい。
子供用便座を付けて座らせる。
眠たい目を擦りながら、チョロチョロと済ませる。
(お食事中の皆さんごめんなさい)

『てむち、にむにむ、あぶぶよ、』

にむにむとは、ヒニムのことだ。
園長先生と遊ぶ約束をしているらしい。
ぽっこり幼児体型のお腹を閉まってパジャマ姿のままテミンはお兄ちゃんを追っていった。

やれやれ。

『ミノヤ、テムと一緒にお着替えしてて、』

『はーい!』

クロゼットからそれぞれのスモックと着替えを出して渡す。
ミンホはテミンのお着替えを手伝ってくれるようになったからこちらもだいぶ楽になった。

それから僕はまたキッチンに戻る。
手を洗ってほうれん草とミニトマト、たまごを取り出す。
刻んだほうれん草と半分にカットしたミニトマトわ炒め、牛乳とチーズを加えてスクランブルエッグを作る。

ああでも、チーズも最近使いすぎかも。
いけないね。
ちょっと控えなくちゃ。

『ママー、』

『はいっ、』

なんだどうした。

『テムのくつした、ちがうー』

『え?』

『たーた、たーた、』

するとチグハグな柄の靴下を履かせて貰ったテミンがピコピコとやってくる。
ちなみに「たーた」とは、靴下のことである。
片方は可愛いアヒルさんの顔が描いてある黄色い靴下だ。
もう片方はパンダさんの顔が描いてある白の靴下。
洗濯物をたたむ時に僕が組み込みを間違えたのだろう。
急いでクロゼットに向かいテミンの靴下を探す。
とりあえず黄色を目印に掘る。

『あった、』

見つけた靴下をミンホに渡して履かせて貰う。
シムとあろうものが。
こんなところで凡ミスだ。
シムとあろうものが!

それから席につかせて、朝のテレビの時間に子供たちは入る。
朝の子供番組に夢中になって、結局椅子から降りて歌の部分で兄弟仲良くダンスタイムになる。

ようやく朝食の続きに取り掛かる。

先程くり抜いた食パンの真ん中を更に小さくカットする。
それをスクランブルエッグの皿に添える。

牛乳を温める。
これは朝ごはんで飲む時のものだ。
それから今日のフルーツ。
今日はオレンジ。
皮を剥いてカットする。
ああ、ここまで来るとようやくオレンジの爽やかな匂いを感じられる。


『んはよー、』

んはよーってなんだ、んはよーって。
夫が起きてきたようだ。
寝癖がとんでもない方向についている。

『ぎゃはは!』

ミンホがパパの寝癖を見て笑う。
テミンがパパに抱きついてそのまま踊る。

『ぱぁぱ、ぴーぴぴ、ぴーぴぴ、』

『え?』

ボサボサ頭の夫が聞き返す。

『ぎゃはははは!』

やる前から笑うミンホ。

ぴーぴぴとは、「EASY MIND」の夫の口笛のことだ。
今でもあの音源のままな状態なので、ミンホのツボに入ったらしく子供たちがやってくれとせがむのだった。

僕はその間に夫の食器も用意する。
コーヒーと温めた牛乳もね。

それから食パンタワーの中に入れる具にもう一度火を通す。
ふつふつと音がしてきた時だった。


『ひーひひーひ、ひーひひーひ、』

『ぶふっ、』

思わず吹き出してしまった。
シムとあろうものが。

しかし、相変わらず見事に出来てない。

『ぎゃはははは!!』
『きわぁああああっっ』

子供たちも朝から騒いでいる。

『…俺、なんで朝から口笛吹いて笑われてんの…、』

僕は笑いを堪えてフライパンの中をかき混ぜた。
匂いが立つ。
落ち着け、笑ってはいけない。

ひーひひーひ。

『ばふっ』

思い出してしまった。
なんて可愛い人なんだ。
僕の夫はメガが付くほど可愛い。
ああ、変な時にムズムズしてきてしまう。
思わず内股に力を入れてしまう。

『はっ、』

フライパンの中のソースがブチブチと言っている。
いけない。
料理中にシムとあろうものが。

火を止めて、もう一度ぐるりとかき混ぜる。
そしていよいよ食パンタワーの中にソースを流していく。
チーズのいい香りだ。
少しだけ溢れさせる。

出来た。
テーブルに運ぼうとした時だった。


『ひーひひーひ。』

『ぐくっ』

ここでかよ。
終わってなかったのかよ。

『うわっ、』

食パンタワーの皿を持っていた手がグラついた。

『あぶな、あぶなっ、』

なんとか踏ん張ってひっくり返すのを免れた。
危ない。
危険だ。
もう、シムとあろうものが。
なんてことだ。
なんて日だ。

ムズムズしたり冷や汗かいたり、忙しいんだから。

もうっ。


『うお、なにそれ、』

『ああ~…』
『パンー?』

テーブルに置いた食パンタワーにみんなの視線が集まる。
そして夫が上から覗き、子供たちが椅子の上に立つ。

『ほら、ふたりとも危ないよ、座りなさい。』

座っても見える高さだ。
子供椅子に座らせてようやく朝ごはんぽくなる。
僕は脇汗が落ち着かないかもしれないけど。

『今日は朝から気合い入ってんねー、』

『ううん、違うんです、食パン、すごく余っちゃってて、』

シムのドジっ子め。
ポカッて頭を叩く仕草とかしちゃうレベルだ。

『いいにおーい、』

ミンホが早くも腹ぺこモードだ。
テミンが炒めたミニトマトに手を伸ばす。
そして僕がその手を制す。

『さ、朝ごはんにしましょう、シオニ先生のバスが来ちゃいますよ。』

『いたらきまーす!』
『いえしっ!』

惜しい。
うえし、から、いえし、に進化したらしい。

子供たちに取り分けようとしたら、夫は自分のスプーンをグサリと刺してソースの具を持ち上げた。

『あ、あが、あが、』

『ぎゃははっ!』

温め直したソースが熱々だ。
猫舌の夫が苦戦して、目の横にシワを作っている。
なかなか唇にすらくっつけられない。

まったく、もう。

『ほら、ちゃんと冷まして。』

夫のスプーンに向かってふうっとさせる。

『もっと、もっともっと、』

すると夫は自分で続きをするのではなく、僕に続きをさせたのだった。
子供たちも見てるんですけど。

『はい、よーし、』

何がよーし、だ。
もう。
そして得意気になって口に押し込む。
小さな口からソースがはみ出て唇の端にくっついてしまう。
これは食べ方の問題もあるが、夫の口の大きさにも問題があるようだ。
まったく、可愛いサイズに育ちおって。

『うめぇ、』

夫が笑いながら言う。
寝癖はボサボサのままだけれど。

『うん、うまい、うまいわ、チャンミン、』

夫は再びパンの中にスプーンを突き刺し掘り出す。

『あー、ぼくもぉ、パパずるいー!』
『てむ、てむち!まんまん!』

『はいはいはいはい、』

ナイフとフォークを刺して子供たちの口に入るサイズにして取り分ける。
夫は立ったまま食パンタワーを掘り続けていた。

『まあわかっていたけど、うまいよなぁ、チャンミンが作るんだから。』

食べやすい温度になってきたようで、夫は忙しそうに食べながら言った。
さりげなく嬉しいこと言ってくれますね。
だからユンホって、好き。
んふ。

『ふたりとも、ちゃんとふーふーしてね、』

『ひーひ、ひーひ、』

『ぶふっっ』

『ぎゃはは!』

『あん?』


ふーふーするところを、夫の口笛の真似をしたテミン。
油断していた僕は吹き出してしまった。
ミンホが爆笑する。
夫が口をもごもごさせながらみんなを見る。

もうやだ。
なんでこうなるの。
朝ごはんが進まない。
笑い過ぎて顔の筋肉がとても痛い。

幸せ過ぎて怖いくらい。


うっかりから始まった朝食作りだった。
みんなでだいぶお行儀悪い朝ごはんになってしまったけど、朝から元気なのも悪くないよね。


せっかく見栄えよくできた食パンタワーを写真に収めることを忘れ、破壊されて完食した。
スクランブルエッグも、カットしたトーストもね。



『ひーひひーひ、』

『ぎゃはは!』


テミンが口笛ではなく声にして歌い、ミンホが派手に笑う。
夫がそれを見て口を尖らせ、僕がそのほっぺたにキスをする。
すると子供たちがずるいと言って、結局ふたりにもキスをする。

幼稚園バスがくる場所に向かう途中の歩道でね。


食パンタワー。

今度はちゃんとパングラタンにしてリベンジしよう。

多分また、夫は美味しいっていってくれる気がするから。


ひーひひーひ、ひーひひーひ。


『あはーはーはーはー!』



やたら疲れた朝だけどユンホの笑い声が響く朝も、悪くないですね。











終わり。
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