蝶の食樹・食草 サルカケミカン
サルカケミカン、とても変わった名前で、語感が猿掛けをイメージしますが、猿とは関係ない様です。通常の植物とは違って、鋭い棘が下向きについています。これを他の植物に引っ掛けて伸びて行きます。
台湾名は飛龍掌血で、名前からしても素手では触りたくありません。薬草としても利用されていて、効用に止血とありましたが採取する時に出血することは間違いないです。
石灰質の土壌を好むために沖縄本島では沢山見られますが、他の地域では局地的です。奄美大島は文献には載っていますが、未だに発見できません。
シロオビアゲハの食草で、サルカケミカンが生えていればこのアゲハは確実に見られます。日本では他のアゲハ類はあまり利用しませんが、ナミアゲハは産卵に訪れます。海外では利用している蝶は多く、ルリモンアゲハ、ホッポアゲハ、オオルリオビアゲハ、などカラスアゲハ系の蝶に多く利用されている様です。
花は小さく目立ちません。小さな赤い実が5月頃に熟します。
中には半月状の黒い種子がいくつか入っています。
発芽は大変遅く、5月に取撒きしても、発芽は9月になります。沖縄本島産と八重山産では発芽の傾向が異なり、沖縄本島産は9月に一斉に発芽しますが、八重山産はバラツキが多くなります。
何回試しても同じ結果なので、固定されて性質ではないかと思います。
耐寒性は強く、関東平地であれば地植えしても問題無く育ちます。棘が鋭いので蔓薔薇の様に誘引すると良いです。
注)
ミカン科の植物は徳之島以南の物を以北に、移動することができません。柑橘以外でもサルカケミカン、ハマセンダンなども含まれます。苗、葉、枝は不可です。種子や果実は移動できますので、お土産にシークワーサーやタンカンをを買って来ることは可能です。
シルクジャスミン(ゲッキツ)、カレーリーフもミカン科になります。
蝶の食樹・食草 キジョラン(鬼女蘭)
キジョランを初めて知ったのは小学校1年生の時でした。買ってもらった図鑑に、アサギマダラの幼虫と共に載っていました。面白い形の幼虫と対照的な大きく丸い葉が印象的でした。アサギマダラは赤城山や富士山でたくさん見ましたが、キジョランの生育地域ではないので、キジョランを見たのはずっと後の事です。
図鑑はカタガナしか書かれていないので、漢字を想像した事もありませんでしたが、鬼女蘭の字を見た時は衝撃でした。貴女蘭の間違いではないのか、柔らかなイメージが脆くも崩れ去りました。
実はガガイモの仲間では飛び抜けて大きく、薄暗い林内で割れた実から、白い毛が垂れているのを見て驚いたのかもしれませんが、それほどの物でもないと思います。
キジョランの実
分布は関東以南です。比較的局地的ですが、纏まって生えていることが多くあります。風当たりの少ない斜面や沢沿いなどに多く見られます。
常緑なので幼虫越冬のアサギマダラは葉の上で少しずつ葉を食べならが越冬します。寒さが厳しい年には葉が筒状に丸まって乾燥してしまうことがあります。こうなると幼虫も干からびてしまう場合がある様です。
種子は大きくコーンフレークにそっくりです。茶色なのでチョコフレークです。
割れた実(中にチョコフレークが入っています)
成長はかなり遅く、発芽まで半年以上かかります。双葉の期間も長く、1年経ってやっと小さな苗になります。
播種から1年目の植出
蔓が伸びて来るには更に1年以上かかります。根があまり発達していないので、蔓が伸びて、地を這って、茎から沢山の根が出るまでは、栄養の取り込みに時間が掛かると想像しています。
蝶の食樹、食草 アオカズラ
餌として利用される事は少ない様で、試した時は、スミナガシ、アオバセセリ共にかなり興味を持ちますが、齧り付きませんでした。ただし、食べる食べないは個体にもよりますし、植物の状態にも左右されるので、数回程度の試行では判断出来ません。台湾ではアオバセセリはヤンバルアワブキ、ニセアオバセセリはアオカズラを食して棲み分けをしている様です。
花は目立ちませんが、実は熟すと青インクの様な色になります。最近は万年筆が希になってしまってインクのカートリッジを見る機会もめっきり減ってしまいました。
ルリビョウタンの別名があって、盆栽にされる様です。