自分の腕時計を初めて持ったのは、小学4年生だった。

ピアノの教室が変わって、電車で通うようになったからだ。

父が「電車に乗り遅れたらいけない」と言って、我が町に

一つだけあった時計店で赤いベルトの子ども用の時計を

買ってくれたのだった。

 

新しい音楽教室は、電車で五駅だった。その駅まで、

今では20分ほどだけれど、当時は30分もかかったし、

1時間に1本あればいいというくらいだった。

 

買ってもらった腕時計をはめて、得意気に時刻を確認する私に、

父は「女の子は手首の内側に時計がくるようにするんだよ」と、

言った。ふぅん、そんなものか…と、時計の文字盤を手首の

内側にくるりと回したことを覚えている。

 

今でも時計は手首の内側にするけれど、気を付けて見て

みれば、世の女性の多くは、男性と同じに手首の外側で

時間をご覧になっておいでではないの?

たしかに、時計を手首の内側にしているかたも時折お見かけ

するけれど、それは一定以上な年齢のかたがたのようで…。

 

バリバリ昭和のオヤジである父には、女性の腕時計は

手首の内側という思い込みがあったのだね。

バリバリ昭和のコドモであった私もそれに素直に従ったし、

かなりトウがたって長じてからも、手首の内側で時間を

見ることが嫌いじゃないのだ。

ミニの朝のお遊びは、時計を見なくてもいつもだいたい同じ時間だね。