「CASSHERN」 | こだわりの館blog版

「CASSHERN」

松竹
CASSHERN

特集【日本映画を語ろう!】
【プレイバック2004】本日は2004年に興行的には大ヒットを記録。
評価は賛否両論真っ二つに分かれた
紀里谷和明「CASSHERN(人造人間キャシャーン)」
私は完全に【否】側です!

2004年劇場公開作品
監督:紀里谷和明
出演:伊勢谷友介、麻生久美子、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、大滝秀治、他

  長年にわたる戦争の末、荒れ果てた世界。
  人類を再生の道へと導くため、遺伝子工学の第一人者・東博士(寺尾聰)は
  人間のあらゆる部位を自在に造り出す“新造細胞理論”を学会で提唱する。
  一方、博士の息子、鉄也(伊勢谷友介)は父へ反抗心から
  兵士として戦争に参加するが戦死してしまう。
  そこで東博士は自らの“新造細胞理論”を実践するために、
  戦死した息子の鉄也を蘇らせる。
  ここに“人造人間キャシャーン”が誕生することになるのだが…。

この作品を当時劇場に見に行ったシナリオライターを目指している友人が、
途中で我慢し切れなくなり退席してしまったと、後日私に文句を言っていた。
どんなつまらない作品でも劇場で見た時には、我慢に我慢を重ね最後まで見る私にとっては
彼の行動は理解できずに「なぜそこまで?」の質問を繰り返すしか術はなかった。
友人曰く「ストーリーがない。シナリオをバカにしている」
私は後日WOWOWで放送された時の録画分を今日この特集のために鑑賞しながら
友人が立腹していたこの文句に、改めて深くうなずいてしまった
それどころか私も何度もこの作品を途中で見る事をやめ、
もうこの記事も書くのを棄権しようかと思ったほどだ。
それほど、この作品はヒドイ。

監督の紀里谷和明【映画】というものとどういう気持ちで対峙したのであろうか。
ここを是非聞いて見たい。
自分のフィールドであるMTVの延長線としか考えていないのではないか。
いや、絶対そう思っているはずだ。
そうでなければこれほど「ストーリーを語る」という事を拒否した作品にはならなかったはずだからだ。

MTVは母体である【アーティストの歌】がまずはストーリーの語り部である。
ミュージッククリップの監督はこの歌にインスピレーションをもらい映像を作り、歌にシンクロさせていく。
だから高い評価を得たMTVは映像もすごいが、まずはアーティストの歌に力があるのである。
しかし映画はまずは監督が「ストーリーの語り部」にならなくてはいけない。
監督がシナリオライターからの脚本をもとに(または自らの脚本をもとに)
まずはストーリーを「いかに語って行くか」を考え、組みたて、そして撮影監督と打ち合わせの上、
それを映像化していくのである。

ところがこの「CASSHERN」で監督の紀里谷和明は前述の
「ストーリーをいかに語って行くかを考え、組みたてる」
この作業を全く行っていない。
もう流れてくるのはイメージ映像ばかり。
台詞も極端に少ないから見ていて誰が誰で、何が何だか、さっぱりわからない。
確か本編中一回も「CASSHERN」の“キ”の字も台詞では出てこなかったのではないだろうか。
寺尾聰や大滝秀治など実力派俳優を出演させておきながら、
ストーリーを語る事をこの作品は拒否しているから【演技】など全く成立していないに等しい。

映像の一つ一つはきれいであるし、そのビジュアル力はすごいとも思う。
紀里谷和明の映像アーティストととしての評価にクレームをつけようという気は毛頭ない。
しかしその映像が束になっても全くそこに「ストーリーが語られてない」ことが
【映画】としては大問題であるのだ。
膨大な美術書が監修者もつかず、製本もされずに、
ただ単にホチキスどめで綴じられているような…そんな感じである。
だから今後も紀里谷和明が【映画】を撮ろうというならば、
同じ事を繰り返すならばやめた方がよい。

「CASSHERN」は【映画】ではない
単純な【映像】でしかないからだ。

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