「どついたるねん」 | こだわりの館blog版

「どついたるねん」

ジェネオン エンタテインメント
どついたるねん

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
阪本順治監督作品特集の3回目は1989年のデビュー作「どついたるねん」
失礼を承知で言わしていただければ、
阪本順治のデビュー作にて現在でも最高傑作。

「ミリオンダラー・ベイビー」「シンデレラマン」と“海の向こう”では
今年はボクシングを題材とした作品が多々公開されましたが、
それらよりも「どついたるねん」の方が素晴らしい出来であることを
今回、劇場公開で鑑賞して以来16年ぶりに再見して確信をもした次第。

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
②阪本順治監督作品第3弾
1989年劇場公開
製作:荒戸源次郎
脚本:阪本順治
出演:赤井英和、相楽晴子、麿赤兒、大和武士、大和田正春、笑福亭松之助、美川憲一、原田芳雄、他

「どついたるねん」が現在でも【傑作】として光り輝いているのを
私は、阪本順治がデビュー作で全ての力を出し切ってしまったというネガティブな見方は決してしてません。
この作品は、阪本順治の力はもちろんのこと
「映画はスタッフ・キャストとの共同作業」であることを証明するかのように
阪本順治と、彼を取り巻く才能が奇跡的ともいえるくらいに見事なまでにこの作品に終結して、
そしてありったけのパワーで爆発したからこそ
ここまでの傑作になったと言えるのではないでしょうか。

  イーグル友田(大和田正春)との試合で意識不明の重態となり、
  命は取り留めたものの再起不能となった元チャンピオン、安達英志(赤井英和)。
  しかし彼に残された道はボクシングしかないと、所属のナショナルジムを飛び出して、
  パトロンの北山(美川憲一)の資金で自らのジムを設立した。

  ある日、英志のジムにふらりと中年男・左島牧雄(原田芳雄)が現れる。
  左島は元ウェルター級の日本チャンピオン。
  英志は左島をコーチとして雇うが、
  ジムに集まった練習生たちは英志のあまりの横暴さに嫌気をさし、みな去ってしまう。
  結局、ジムは閉鎖。
  英志は、ナショナルジムに戻り、会長の鴨井(麿赤兒)とその娘・貴子(相楽晴子)、
  そして左島と共に現役ボクサーへカムバックすることに向かっていった。

  そんな時、英志のカムバック戦の相手が決まった。
  それはナショナルジムでの英志の後輩として英志が手塩にかけた、
  今は原田ジムにいる清田(大和武士)だったのだ…。

この作品には3つの奇跡的な出会いが、この作品を傑作へともたらしたと思います。

まず1つは製作の荒戸源次郎
“さすらいの映画製作者”として70年代の終わりに「ツィゴイネルワイゼン」
鈴木清順を復活させた名プロデューサー。
その彼がこれまた80年代の締めくくりに発掘してきた逸材が阪本順治であり、
彼とのコラボレーションがまさに「どついたるねん」だったわけであります。
助監督経験が豊富だったにせよ、阪本順治を監督に抜擢し、
これだけのキャストを集め、そして製作費もしっかりとかけ、
自らの移動映画館「ムービーギャング」で堂々と公開させたのは、
ひとえに荒戸源次郎の力があったからこそでしょう。

そういえばこの作品、今の原宿の「GAP」の隣がちょうど空き地で、
そこで銀色のドーム型劇場を建てて公開してましたっけ。
今じゃ考えられませんけれどね。

荒戸源次郎はその“バクチ性”の強い製作姿勢で90年代はスランプ状態でありましたが、
一昨年「赤目四十八瀧心中未遂」で見事にカムバック。
しかも監督をも兼ねるという飛びきりの勲章までついてのカムバックでしたから、
名プロデューサーは今でも健在といったところでしょう。

そして2つ目は主役の赤井英和
もともと彼が“浪速のロッキー”として活躍していた実体験をモデルとしたストーリーですから
これ以上の【適役】があるでしょうか
とにかく【演技】というものがこの作品の赤井英和には存在していません。
この作品での彼は、実体験の【再現】であり、
当時の自分の【気迫】を表現しているだけであります。
しかし、この【気迫】たるやすざまじいもので、見る者を有無も言わさずに魅了し、
まさに【ノックアウト】してしまうのであります。
この作品の後、人気俳優となった彼のドラマをTVで見ましたが、
正直その【大根ぶり】に目も当てられませんでした。
そりゃそうでしょ、この作品でも彼は【演技】してないんですから!

そして最後はやはり阪本順治のパワフルな演出でしょう。
この作品での阪本順治は、その後得意としていく骨太な“男臭い”演出で
全編を熱く熱く一気呵成に描いておりますが、
注目すべきは“男臭い”なかにも、ほのかに漂う【ユーモア】が実に見事な事
この【ユーモア】さが、その後「ビリケン」「顔」「ぼくんち」に繋がっていくわけですね。
正直これらの【ユーモア】を前面に出した作品群は私はあまり好きではないのですが、
この作品のように“男臭い”緊迫した描写の中にフッと織り込まれる
ユーモラスな場面が実におもしろく、これぞ阪本節だと思いましたね。

という訳で、阪本順治の演出を、製作者がバックアップし、そして主役が迫力満点のリアルさで演じた
この3者の奇跡的な出会いが集結して「どついたるねん」は
製作されてから15年以上経っているにもかかわらず
相変わらず魅力的な作品として光り輝いているのであります。

その他にも迫力満点のボクシングシーンについてや(撮影の秀逸さ)、
相楽晴子、麿赤兒、美川憲一、原田芳雄などの脇役陣の魅力など、
この作品について語りだすと無尽蔵に語り尽くせそうですが、
いい加減この記事も長くなってしまいました。
何かの機会でまたこの作品については、是非話してみたいですね。

■特集【日本映画を語ろう!】の過去の記事、今後の予定は こちら から

人気blogランキング に登録してます☆
ここをクリック していただけるとうれしいです!☆