「es [エス]」
- ポニーキャニオン
- es[エス]
【真夏の夜のホラー特集】いよいよ最終週であります。
おかげさまでこの特集で大分HDDの空きも増えましたし、
たまっていたビデオも見ることが出来ました。
さて最終週のお題は「追い詰められた人たち」とでもしておきましょう。
この特集を「9月まで実施」と宣言をして、
あせってホラーを見まくった私も「追い詰められた人」のひとりです。
と、いう訳で今回はドイツ映画「es [エス]」。
これは怖い!
真夏の夜のホラー特集・第15弾
2002年劇場公開作品
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:モーリッツ・ブライブトロイ、クリスチャン・ベルケル、オリヴァー・ストコウスキ、
ヴォータン・ヴィルケ・メーリング、ユストゥス・フォン・ドーナニー、他
スタンフォード大学心理学部ではある実験をするため、被験者となってくれる男性を公募した。
高額の報奨金目当てに集まった20名ほどの被験者は無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、
学内に設けられた模擬刑務所に収容された。
初めはそれぞれの役を演じるだけの簡単なアルバイトと誰もが考えていた。
しかし、実験が進むうち、「看守役」の態度がだんだん攻撃的になってくる。
それに対して、ある「囚人役」が「看守役」に反抗したため、遂に「看守役」の振る舞いはエスカレート。
「囚人役」は卑屈に服従するのみで、まったく抗議できなくなっていく。
しかし事は模擬刑務所内の実験の枠組みを越えて、もはや誰にも制御不能の状態に陥っていく…。
きっかけは本当にささいな事だった。
「囚人役」のひとりが「看守役」に反抗的な態度で“からかった”からだ。
しかしこれが「看守役」個人のプライドにえらく響いたのだ。
納得のいかない「看守役」。
やがて「看守役」は【個人のプライドを守る】ために、
それを【実験の秩序を守る】という論点に切り替えて考えるようになり、
徹底して攻撃的な態度へと変わっていくのであります。
よく仲間内の喧嘩の仲裁に入ったりしますと、収拾がつかない状態になっていますが、
きっかけを聞くと本当に“ささいな事”だった、というケースがありますよね。
それは大抵どちらかが喧嘩の範囲を超え、
触れてしまってはいけない領域を「言って」しまったり、「やって」しまったりしたからなんですね。
この作品の身の毛もよだつ大騒動もまさにこれなんですね。
きっかけは誰でも経験のあるささいな事でも、
人間は極限まで追い詰められると発言や行動は本当、
常人には理解できないものになってしまうものです。
「es [エス]」は緻密な脚本と、緊迫感あふれる演出でジリジリと登場人物たちを追い詰め、
見る者までが【加害者】か【被害者】と同化して見ている事になる
見事なまでの、そして抜群に怖い作品でありました。
監督は今年「ヒトラー ~最期の12日間~」が公開されたオリヴァー・ヒルシュビーゲル。
「ヒトラー~」もまさに【追い詰められた人】の物語ですから、
この監督はよっぽどこの分野がお好きなようです。
※是非見て欲しい作品なので(全ての人にはお勧めできませんが!)、
ご覧になられる方は以下の文はネタバレになるので読まないで下さい。
特に印象的だったのは軍からスパイとして送り込まれた「囚人役」のひとり。
この実験は軍部がスポンサーとしてついており、
彼は軍部へ実験経過を密告するため送り込まれたスパイでありました。
最初はさすがに沈着冷静で「看守役」をからかう「囚人役」に対し
「もっと冷静になれ!」と助言のひとつも言っていたのですが、
だんだんとこの異常な状態に常軌を逸してきて、
ついには模擬刑務所の集団脱走を先導する立場となり、
追いかけてきた「看守役」の一人を殺そうとまでしてしまう。
あれほど沈着冷静だった人間までも追い詰められると、
自らが暴力的な人間に自然と変身してしまうのであります。
なんたる皮肉な結果でありましょう。
しかも「看守役」を殺そうとしているのを「もう実験は終わったんだ」と止めたのが、
何を隠そう彼が「もっと冷静になれ!」と助言していた「囚人役」のひとりなのですから、
これ以上皮肉な結末があるでしょうか!
■2002年の同時期に公開されたこれもかなり怖いです。
セッション9
※当blogでも取上げました、感想はこちら
。
■過去の【真夏の夜のホラー特集】記事はこちら
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