子供と猫と家庭菜園 | ハチヨの七転びハチ起き人生

子供と猫と家庭菜園

うちは角部屋で、出窓の下におとなりさんちの庭が見下ろせる。

2歳くらいの女の子と、今年小学生になったおにいちゃんと、おかあさんが、

夕方になると庭に出て畑を作っている。

土を耕して 野菜の苗をいっぱい買ってきて 子供たちはキャッキャと駆けずりまわる。

トラとブチの2匹の猫が、このときだけ庭に出してもらって散歩する。

猫たちは柵を乗り越え近所を探検するが、ちゃんと戻ってくる。

おかあさんにはママ友が数人いて、時々庭先で立ち話をしている。

地震で揺れていても気づかずにアハハオホホと笑ってる。外にいるとあまり感じないようだ。


子供の声と猫の姿、、ぼんやり見つめていると 平和すぎてこわくなる。

あそこに見えてるバイパスの数キロ先は 惨状だ。 幸せの象徴のようなこの家族も 私も 

紙一重でここにいる。


『東部道路』がなければここまで津波は達したと思われる。

建設当時、土のう堤防方式に反対意見があったらしいが、おかげで津波はそこで堰き止められた。



最近になって、津波から生還した人たちの証言が続々と語られ始めた。中には10歳の男子もいた。
全児童の70%が犠牲になったあの小学校の子だ。

避難するため児童が列をなしていた前方から津波が来て、後方にいたその子はあわてて逃げたが、高台にかけ登る途中で土砂に半身埋まり、身動き取れずにいたときたまたま、冷蔵庫にしがみついて漂ってる同級生に遭遇。その子に引きずり出してもらって助かったと。。。。
無表情で淡々と話してくれるその内容が、想像を絶してしまう。


「ニュースZERO」では、津波で流される様子を車内に設置されたビデオカメラで一部始終を録画していた人が出た。

カメラは水没して壊れたが、録画データの復元に成功して、(信じられないほどに画質が良くて)まるで車内に自分がいるみたいにリアルだ。

前方に、窓からはいずり出して車の屋根に上ったおじさんも映っていた。

海側から車が怒涛のように流れてきて、その濁流が自分の車に達した瞬間に、車を飛び出し走って逃げたおじさんも映った。道路の両脇にはビルがあるからたぶんその人は助かったろうと思う。

ビルの上からたくさんの人が見下ろしてるのもチラっと映った。たぶん「逃げろ!」と叫んでいる。

撮影本人も、逃げ出すチャンスを狙って、車が水没する直前に脱出した。

カーラジオから流れる緊急ニュースのアナウンサーの、やけに冷静な声が 逆に恐怖を感じる。

ビデオには、前後から押し寄せる濁流に、あっという間に車が浮き上がり、ぶつかり合い、流されて、漂流物がフロントガラスを突き破り、水没する様子が生々しく映っている。

大型タンクローリーもなす術も無く津波にさらわれていく。


これは海沿いではなく、海岸から数キロ内陸部の仙台市内でのことだ。

こんなことがすぐそこで、いつも通ってるあの道路で。。。


撮影者も「まさかここまでは」と油断して仕事の営業先回りを続けていたのだった。ビデオを回していたのは、たまたま車上荒らしの予防のためだったという。


番組の最初に「衝撃的な場面もありますが、津波からどうやって逃げられるかを検証するために報道することにしました」と言った。

一目瞭然だった。このときどうすべきか。


とにかく車を捨てて近くの高い建物に避難すべし。建物がなければ電柱や木や、なんでもいいから

そばにある高いところへ。迷ってる時間などない。

津波と気づいてから、数秒で飲み込まれる。

車が浮いてしまったら、逃げ道は無い。


避難警報が出たら、車での移動はダメだ。必ず渋滞が起こる。

車を使うな。徒歩で逃げろ。ひとりひとりが自分の勘を信じて ひとりで逃げろ。

指定避難場所を信じるな。3階建てのビルも飲み込まれた。

校庭に集合して点呼などやるな。一斉にてんでバラバラに ひたすらより高い場所へ。


先人の教え「津波てんでんこ


映像で記録に残してくれた人と 報道してくれる人と 証言してくれる人がいる。

これを1000年先まで残すための努力を しなければいけない と思うのだが。