病床の父が、とうとう天国へ旅立っていった。
若いときから今回倒れる直前まで健康に恵まれた生活をしていたほうだった。
体調不良や病気の経験があまりない人で、寝ている父など、ほとんど記憶にない。
亡くなるまでの数日間、目をあけることなく床に就くことで私たち家族に、お別れを受け入れていく時間をくれたのだと思っている。
まったく前触れもなく、突然失ってしまう場合もあることを思えば、少しだけでも時間をいただけたのは、貴重なことだった。
ただ、父本人は意識を失った状態だったから、正直なところ、見送る側に与えられた時間、という意味が大きかった。
少しずつ別れが近づいてくることは避けられない状況で、父が息をひきとる、その瞬間はそばにいたいと願った。
結局、願いはかなったのだけれど、きわどいところだった。
夫の父は、実父より高齢なのだが、この人が、病院へ行かせてください、という私の手をはなさない。
自分も行くと言い張るので車に乗せて連れていくと、父の顔をみて、気がすんだのか今度は帰りたがる。
義父を送って、とってかえすと父はもう最後の一息を終えるところだった。
姉から、お父さん、あなたを待ってたのと言われ急いで父のそばに行った。
私が義父をうらんだりしないよう本当に待っていてくれたんだと思う。
お父さん、ありがとう。
親孝行らしいことも、できないまま逝かせてしまってごめんなさい。